一畑薬師

所在地:兵庫県川西市笹部

私の母がまだ小学校1年生の頃(昭和13年)目を患い、ノートの横線すら見えないほどに なったといいます。村から一番近い眼科ではただ目を洗うだけの治療なので回復はしません。 このままでは失明の危険もあるということで米子にある病院に 入院して手術することになりました。父親は満州に出稼ぎ、母親は畑仕事に育児があるため、 彼女は単身で入院しました。

当時のことですから、裕福ではありませんし手術代もたいへんだったでしょう。 何よりも手術そのものが一種のばくちのような危うい代物だったと想像します。 幸いにも手術は成功したようで、現在も視力は良くないものの元気です。
島根県平田町にある一畑(いちばた)薬師は目の仏様としてあがめられており県内でも有名な霊場です。 母も村の大人につれられてここでお百度のお参りしたそうです。長い長い1300段の石段は、 目が悪く子供だった母には辛かったのではないでしょうか。

さて、写真の石仏は兵庫県川西市笹部の善源寺と大昌寺のあいだにある墓地の近く、 ポツンと一体だけ安置されていました。ツーリング途中だったので落ち着いて見ることが出来ませんでしたが 尼崎と彫られている文字が見えました。この地になぜ一畑の薬師が祀られて 尼崎の人はどういう人なのか、あるいは母のように目を患った人の願いが込められているの かもしれません。

表紙にもどる