はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1 『千種』を参照していただくようお願いいたします。 2017. 6.18. 日曜日 晴れ 気温 ふつう
峠のことを地方によっては乢(たわ)と呼ぶことがある。峠という文字じたい日本で造られた文字で なんだか安っぽく感じるが、乢というのは由来はわからないものの文字の姿も響きも良い。 その乢だが、前から行ってみたかったのが 千種町鷹巣にある一ヶ乢。どんな峠だろうか?峠には石仏があるのか?今も歩けるのか? どうせ行くならMTBがよさげだし、 せっかくだから女乢(おなだわ)から尾根沿いに行ってみるかぁ・・・。 と、計画がまとまると即実行。
波賀町からトリガタワを越えて千種町に入る。まずはトリガタワで乢を一つクリアーという段取りだ。
昔はここを通過しないと千種には行けなかったのだが、現在はトンネルが出来たので
ここを通過する車はほとんどない。
|
![]() |
![]() |
ほとんど通過する車は無い | この石板を鳴らしてみよう |
---|
来る車があるとするとそれは荒尾山か、大甲山へ登るハイカーぐらいなものだ。 と、そこには一台の車が止まっていた。聞くとやはり登山者で仲間を待っているということだった。
奇妙な石造物あって鳥居のようなものに石板がぶら下がっている。
昔は木槌があってそれで鳴らしたような記憶があるが手で叩いてもいい音がする。
その台座にトリガタワの名前の由来が書かれている。内容はようするに峠を挟んで仏像の取り合いとなるのだが、
似たような逸話は藤無山にも氷ノ山にもある。興味のある人は訪れて読んでみて〜。
|
![]() |
![]() |
鷹巣をスタートゴールにする | 女乢(おなだわ)に到着 |
---|
トリガタワを過ぎて内海集落から左折。女乢からぐんぐん下って鷹巣へ。 千種東小学校の下にある道路脇に駐車。9時15分スタート。MTBに乗り換えて 先ほどぐんぐん下った道路を登り返す。ところが忘れ物を思い出して途中から2度も車に帰る。 なにをやってるんだか・・・。
女乢に到着する手前からずーっと左手上を見ながら走る。というのは地形図に石碑のマークが
あるからだ。なんの石碑なのか見てみたい。と!その石碑は左には無くて右手にあった。
|
![]() |
![]() |
林道完成記念の石碑 | 甘露の水 |
---|
それは林道完成記念の石碑だった。いろいろと書かれているがようするに昭和27年に完成したことを 記念するもののようだ。ということはそれ以前は山道だったということだろうか? 元は左手の斜面にあったのだろうが拡幅工事かなにかでこちらに移動されたと思う。 そしてその先左手はゴルフ場の入口だが『甘露の水』と書かれた湧き水がある。 『ひょうごの名水54選』の一つらしい。 ここが昔、女の盗賊(山賊?)が出没したという女乢(おなだわ)です。鷹巣の人から聞いた話ではそれは方便で、 冬に男がいなくなり不用心のためにそういうことを言って不審者が現れないようにするためだったとか・・・。
ここからは私の勝手な解釈ですが、冬に男たちがいなくなるというのはたたらが関係しています。
山で砂鉄を摂るのは冬場と決まっていました。というのも水で砂鉄と土砂を流すために土砂が田畑を荒らしてしまう
のでその作業は耕作の終わった冬場と決まっているのです。
たたらの作業は特殊な技と経験が必要ですが砂鉄を摂るのはだれでもできるので村人の冬場の仕事としてできることでした。
それで冬場に村から男がいなくなるわけです。
男のいなくなった村で残された女性たちが知恵を働かせてこういう話を作ったのかな?
以上は私の想像ですがあんがい的を得ているかも?
|
![]() |
![]() |
石仏もありました | ゴルフ場入口周辺の様子 |
---|
ゴルフ場入口付近をうろついてると石仏がありました。いつのものかは彫り文字はなかったが 胸の位置に宝珠を両手で持った地蔵菩薩立像で『土井 世話人 弥十良』という文字はなんとか読めた。 目的の林道入口はこの反対側にある。 |
![]() |
![]() |
けっこう走れる林道 | 白矢印を選択したが・・・ |
---|
入ってしばらくは良いがしばらくすると枝道だらけになる。基本、町界の稜線を行けば 問題無いが林道の方が走れるのでうまく選択してルートを外れないようにする。これも まあ能力と言えそうだ。 そろそろ稜線に入りたくなったので白矢印から稜線に向かい『B』から稜線に 入ってみたがまったく乗れなかった。押して登って押して下るとさきほどの 林道の延長『C』に出た。さきほどの分岐で黄色矢印を選択すればダイレクトに『C』に 行けたのだった。
『C』林道を走って772ピークを大きく回り込む。その途中にもいくつも分岐、枝道が
あるので注意。やがて『D』で林道は終点。
|
![]() |
![]() |
ようやく望んでいた山らしくなってきた | この流れに沿って下ってみたかった |
---|
終点から雑木の山となって一気に空気感が違ってくるのがわかる。ヒノキ、杉の山も大事だが やはり自然の森が人間にはありがたい。 |
![]() |
![]() |
MTBが絵になる風景 | ここで製鉄(たたら)が行われていた |
---|
森の中に小さな流れがあったのでそれを下ってみたかったが、稜線の奥にある鉄塔で 食事する予定だったのでそちらへ進む。ふと足元を見るとたたら製鉄の際に発生するカナクソ(鉱滓)が 落ちていた。こんなところで野だたらが行われていたのか。 |
![]() |
![]() |
山崎智頭線27鉄塔 | 食事をしてオカリナもする |
---|
到着した鉄塔はあまり展望がよくなかった。食事をしてオカリナをしてけっこうゆっくりとしていたが 虫がうるさくなってきたので最後の目的地である『一ヶ乢』へ向かう。
飛び出た『一ヶ乢』は林道の峠だった。道のど真ん中に大きな松の木があって (この松の木はグーグルアースでも確認できる)左右に道が割れている。 その割れたほうにある『火の用心』マークが鷹巣へ下る峠道のようだったが、まちがってその林道を 気持ちよく走ってしまった(別途地図参照)。 |
![]() |
![]() |
峠から小茅野方向を見る | 鷹巣側は倒木だらけ |
---|
峠に戻ってから落ち着いて周囲を眺めてみる。小茅野方面は谷が広くて耕作地もあり明るい。 鷹巣側の入口はわかったがそこは倒木だらけでまさに昔ながらの細い道だった。もう一つ発見したのが 水路跡。水路自体がほぼ埋まっているので一見そこは道に見える。なにかの本で千種でたたらに従事していた人が 使われなくなった水路(たたらに使う)は、もう道と見違えるだろうと言っていたのを思い出す。 |
![]() |
![]() |
石仏がありました | 後半の安全をお祈り |
---|
倒木を避けながら下る最初のコーナーで石仏を発見。一ヶ乢は小茅野の子供たちが 千種の学校へ通うための通学路でした。この石仏はそれらを長年にわたり見守っていた というわけです。光背部分には『享和二戌(1802)十月日』とありました。 |
![]() |
![]() |
杉の葉っぱの下はガレている | 下界が見えた |
---|
石仏からは少し乗れる。葉っぱの下がガレていたりするので油断はできない。 もうちょっと整備されていればほぼ全部乗れるのだが・・・・。
県道には12時50分に降り立つ。ここから駐車ポイント(千種東小学校)までも歩くとなるとけっこうある。 中学校は千種の中心地だからさらに遠い。冬場などはさらに大変だと思う。体力と忍耐力の 養われる通学路だが、そもそも小茅野は山崎町なのでちょっとした越境通学ということか。
今回の千種の乢めぐりの地図は
こちら(約230k)
でごらんください。 |