牛臥山〜海上山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『智頭』、『郷原』を参照していただくようお願いいたします。

2010. 8.29.  日曜日  晴れ  気温暑い

夏の低山は敬遠されがちだが、 登る途中は暑くても登り切れば涼しいものだ。町でウダウダしていてはその爽快感は味わえない。 このところ少々ネタ切れの感もあるが、今週も鳥取智頭へ出かけてみる。智頭の市街地の真北にある牛臥山から 海上山を縦走してみる。スタートゴールをどこにしようかと考えたが、上板井原が周回にうってつけだ。 しかもここには食事のできるお店があるらしい。山頂で食べずにここで食べるのもよさそうだ。

鳥取道の『智頭』で下車して智頭の旧市街地へ入るとすぐに『伝統的建造物群保存地区 板井原集落』の看板が目に付く。 それに従って舗装路を上る。板井原集落は山上の谷間にある古くからの集落で平家の落人伝説も残るという。 細い舗装路なので対向車の無いことを祈りつつ進んでいくと目の前にトンネルが現れた。

左側に旧峠道がある隧道を抜けると駐車場がある

1966年(昭和41年)に開通したという板井原隧道だ。ということは、それまでは 峠道を利用しないと智頭の町には出られなかったということだ。まさに時間の止まった集落と 言えそうな感じだ。その隧道を抜けると三叉路になる。右に行けば上板井原の集落で、左に行けば 一車線の舗装路で用瀬町まで行くことができるのだが、地図を見るとすごい距離だ。 その途中には板井原という集落もあるのだが、ここは昭和50年に集団離村をしている。 それよりさらに山奥にあるのがこの上板井原だ。

その三叉路には駐車場がある。村を散策に来た観光客のためのものらしい。横手にはきれいなトイレ(水洗)もある。 とりあえず私一台だけだがこんな所に観光客は来るのだろうか? 準備を済ませて9時スタート。まずは隧道の真上にある『古峠』へ登って、そこから牛臥山を目指す。

峠道はしっかりと残っている古峠に着いた

峠の入り口には『牛臥山・海上山ルート登山口(Aコース)』の看板が設置されているので間違うことはない。 最初こそ道悪だが、登るにつれて道は良くなる。汗がドッと出てくるが時々吹き抜ける風が心地よい。 つづら折れの峠道を上り詰めると小さな切り通しの、いかにも昔ながらの峠を彷彿させる古峠に着。 9時15分。
智頭町側には石仏もあった道路改修記念碑

峠の集落側には何もなかったが、智頭町側には三体の地蔵菩薩の石仏。そして自然石に彫られた『道路改修記念碑』 なるものがあった。『明治廿三年十月成功』とある。記念碑に『成功』という文言はなんだか変な感じがするが、 逆に成功という文字に人々の思いが込められているようにも思う。少なくとも隧道ができるまではここを荷車などが 行き来して村の生活を支えてきたのは間違いない。裏手には寄付をしてくれた人たちの名前が彫られている。 ちなみに寄付金を合計してみると45円だった。
植林の尾根から始まる笹もちょっとある雑木の尾根になる

ここから稜線を南に登っていく。最初に激登りがあるが、それが終わると緩やかな尾根になる。 614のピークを過ぎた頃、ふと左手の谷側を見下ろすと、林道が見えた。 そういえば隧道の板井原側に林道の入り口があったなあ。

牛臥公園への分岐を過ぎると雑木の尾根になる。この辺はMTBでも楽しく乗れる感じだ。 やがて笹原のプチ展望地となる。東を見ると扇ノ山が見えた。今日はIRC・DQKさん夫婦が登っているので 無線もつながりそうだ。真北にはこの稜線の続きである洗足山、その向こうに尖っているピークは 三角山のようだが、地形図で確認するとさらにその向こうでここからは見えない。 西には籠山のゆるやかなピークも見えた。 その先にある三叉路を右に向かって、まずは牛臥山の頂上を踏んでおこう。

牛臥山に到着

10時05分着。三角点は無し、標高728m。 そもそもこの山の山名は大正12年7月に因美線が智頭駅まで開通した年に駅舎の前方に広がる 山並みが「巨大な種牛に似たるが如し」と、当時の貴族院議員の石谷伝四郎氏により命名された と看板に書かれていた。峠の石碑に似たような名前があったなあと帰宅後に調べてみると、 石碑は石谷傳九朗(拾円の寄付していた)なる人物で伝四郎氏の実父であった。

頂上に三角点は無いがは石でできた記念碑があって『宇し婦世山』という当て字で 文字が彫られていた。昭和7年の因美線全線開通を記念して当時の町内で最高齢(91歳)だった女性の書だそうだ。 二つの出来事の発端が鉄道だというのも時代を感じる。

ここから智頭の町が手に取るように見える。ちょうど電車が走っているようで走行音まで 聞こえている。視線を横にずらすと中腹にある『牛臥公園』も見えた。そこまでは町から車で上れるのだが、駐車場には 1台もいないようだ。休憩東屋の小さな風車がくるくると回っている。

智頭の町が真下に見える籠山がきれいだ

小憩後、次なるピークの海上山を目指す。10時20分。先ほどの分岐を過ぎた鞍部で 尾根を横切る作業道と出会う。左の谷から登ってきているのは、先ほど尾根から見えた林道の延長なのだろう。 ということはこの作業道でも登ってこれるということだ。右に下っていく作業道の行き先は不明だ。
作業道が目の前を横切っている左の谷に下っている

鞍部から登り返した付近は暗い植林の中だったが、やがて雑木の尾根となる。 小さなアップダウンもあるのだがほとんど気にならない程度のものだ。
気持ちよい尾根だこれを登ると海上山
海上山に到着

三等三角点のある海上山には10時50分。笹がきれいに刈り払われており案外広いピークだった。 雑木に覆われているので展望は無い。三角点横にある 看板には標高が786.4mとなっているが最新の測量では785.3mらしい。 お昼ご飯は下山後に集落のお店で食べるつもりだったが、さすがにおなかが減ってきたので 小さないなり寿司を一つ口に入れる。無線のスイッチを入れると予想通り扇ノ山の二人と つながる。赤谷山のOAP、津黒山のMXFさんとはつながらず。11時15分下山開始。
右に下れば郷原大展望ポイントに来た

このまま峠へ下山かと思ったら、南方向が開けた茅の尾根道で気分も晴れ晴れ。 ここは郷原への下山道分岐もあった。そのままのテンションで上り詰めたピークが これまた大展望だった。標識には『海上山最高地点800m』とある。 地形図で確認するとここから一気に峠まで激下りとなっている。 せっかくの展望地なのでリュックを下ろしてカメラを取り出す。
鳴滝山を見る日本海と風車

パノラマ写真も撮ってみたがさほど良くなかった。とりあえず那岐山から沖ノ山、東仙は隠れているが 鳴滝山、綾木峠、ずーっと向こうに扇ノ山。 北方向を見ると風力発電の風車越しに鳥取の市街地と日本海。 いや〜っ、ここで食事したら最高やったなあ・・。と、思いつつ峠まで一気に下る。
峠に着

11時50分、激下りで(登りに使うとさぞかししんどいコースだと思う)名前のわからない峠に着。ここから正面を行くと大きく周回できる『Bコース』、このまま 左へ下ると『Aコース』。とりあえず早く集落へ降りたいのでAコースで下山なのだが、右を見ると林道であった。 そしてここには石仏があった。
石仏を見る地蔵菩薩

形の良い自然石に彫り込まれた地蔵菩薩であった。右側面には『西野村中』左側面には『文化八未(1811)八月』とあった。 西野への昔からの峠道は植林の中に消えているようだが、上板井原への峠道は中国電力の巡視路として残っている。
巡視路を下る林道に出た

林道に出た。下るにつれて道幅も広くなってくる。途中から石垣の耕作地跡が現れる。 どうやら桑畑の跡のようだ。やがて家屋が見えてきた。汗まみれなのでここでシャツだけ着替える。 大きな屋敷があったが、予想通り二階部分はかいこのためのフロアーの造りになっていた。 各家からは川縁に降りられるようになっていて、そこで洗い物などをするのだろう。
二階部分は蚕室だ川縁も家の一部

集落は川の左岸にあって幅2mに満たない6尺道と言われる道に貫かれている。当然自動車は通行できないが、 右岸には道路がある。林道からそこを歩いていると、分校跡の空き地に 多くの車が止めてあったので目的の店はその辺だとわかった。 日曜日だけ営業している、水車で精米してかまどでご飯を炊いているお店なのだ。
火間土(かまど)というお店「ごめんなさいね」とおじいさん

お客はさほどいないと予想していたのだがほぼ満員だった。のれんをくぐって声を出すと、 おじいさんが出てきて「ごはんがもう無いんです」とすまなそうに言う。 その足元には空?のおかまがあった。実際は腹ぺこだが「いいですよ」と言って店を出る。
野土香(のどか)という喫茶店

実はもう一軒お店があると調べていた。6尺道を逆に行くと小ぎれいな古民家があった。 入り口にリースが飾り付けられていてのれんをくぐる。 すると上がりがまちには靴がいっぱいでここも満員のようだ。奥の厨房にとても声をかける気になれず引き返す。 まあ、今日は山登りがメインだから次回早めに来るとしようか・・・。 と、自分に言い聞かせつつ涙をのむ。
集落のメインストリート木道のところもある

6尺道を歩いて駐車場へ向かう。途中には廃屋になった民家もあるが、現在住んでいる人はいくらほど いるのだろうか。2軒のお店があるだけで日曜日は案外人の出入りもあるようだ。 季節が良ければ200年前の古民家を眺めながら散策をするのだろう。 この6尺道もそのために一部木道にも整備されていた。 おなかを減らしつつ駐車場には13時着。 残りのいなりを2個たいらげる。

今回の牛臥山〜海上山の地図は こちら(約140k) でごらんください。


それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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