中音水渓谷

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『西河内』、『音水湖』を参照していただくようお願いいたします。

2010. 7.24.  土曜日  晴れ  気温むし暑い
去年の6月にTQFさんと 1106〜波佐利山 に登った折り、下山路の赤西渓谷で森林鉄道跡を見ることができた。 最近購入した『廃道をゆく 2』によると表題の中音水渓谷(赤西渓谷の山越えで東側にある)にも林鉄跡が残っているという。 急に思い立って行きたくなったので単独で歩くことにする。

R29から音水(おんずい)の集落へ入る。そのまま直進を続ければ明神滝から音水渓谷が続き、 最終はハサリ山登山口がある。その途中に『音水農産物直売施設』なる建物がある。 ここが今回の中音水渓谷の入り口になる。建物の横手に駐車をして周辺を探索してみる。

スタート地点

音水鉄山跡の看板があった。『この地域において宝永年間(1704)から明治32年(1899)までの 間に鉄山の経営がなされていました。当時は約60戸の世帯があり鉄山で働いて生活をしていました。 金山神社(カナイゴサン)は慶応4年に当地鉄山守護神として祀る (滝山・廣地・鍵掛・久保原山の各鉄山を十年から三十年毎に移動し最後に音水に祀り現在に至る)』

滝山・廣地・鍵掛のたたら跡は見たことがありますが、久保原はどこかわかりません。 この4カ所を200年の間に平均20年毎の移動として、各2〜3回ほどローテーションをしていた 計算になります。砂鉄が無くなるというよりも、たたらの燃料になる木炭の枯渇によるローテーションじゃあ ないでしょうか。

この敷地の隅にはきれいなトイレがあってそこから小橋を渡れば波賀のサイクリングロードとなります。 このサイクリングロード自体も林鉄跡を利用したもの。 そして中音水渓谷の入り口はトイレの上にある林道を利用する。ここには真新しい『中音水川源流』なる 標識があった。9時15分スタート。『いんくら橋』を渡って林道に入るとすぐに祠があった。今日の安全をお願いする。

山神社?自転車で来ればよかった

車で林道を行けるところまで行けばずいぶんと楽なのだが、林道を入り口付近の路面を眺めてみて 、その荒れ具合から歩くことにした。でも悪く見えたのは最初だけで、その先は車でもOKだ。 というよりも、ここも林鉄が走っていた跡なので、傾斜も緩やか、つまりMTBでも楽に走れるのだ。 MTBだと帰路は下り基調だからさらに楽ちんだ。こりゃ、ちょっと失敗だったなあと思いつつ 足を進める。
日ノ原集落を見る(矢印には林鉄跡の隧道がある)唐突に林道は終点となる

最初のコーナー付近には高圧鉄塔への巡視路入り口があった。 転回場所やら路面状態からすると自動車はこの辺までかもしれない。 高圧線は日ノ原山から続くものであり、 その日ノ原集落もR29越しに見えた。この集落の上にも林鉄跡があり、矢印の部分には 隧道跡もある。

暑い林道歩きは距離が短くてもうんざりする。熱中症にならないように木陰を選んで歩く。 やがて唐突に林道は終点となる。ここにも源流碑の標識がある。10時ジャスト。 終点からも踏み跡がある。地形図にある崖マークの所は瓦礫で埋まった砂防ダムの上を通過する。 するとその先からあきらかに林鉄跡と思われる道が現れる。

いかにもって感じの道だ『あ』の橋。これは怖い
『い』。枕木の残った鉄橋丸石の石垣がみごと

ここから急にタイムスリップしたというか、異次元に放り込まれたような錯覚に陥る道となる。 ドキドキしながら進むと2本のH鋼がむき出しの、なんともダイレクトに簡素な橋が現れる。 2本のH鋼はちょうど線路の幅なのだろう。下を覗くとめちゃ高度がある。落ちれば間違いなく ただではすまない。ここで自分が高所恐怖症だというのを思い出す。なんとか通過するが、 この先、同じような橋が出てきたらもう渡らないぞと心に決める。
枕木の釘だどんな建物があったのかな

2本の渓流が合わさる付近は河原も広くていかにもなにかがあったような感じがした。 みると河原より一段高く石垣があって、ドラム缶の釜が残されていた。 人が活動していた証拠だ。いよいよ核心部に入ってきたようだ。
ここにも源流碑の標識線路も残っていた

川は二手に別れている。中音水川の源流碑は右手の流れの奥にあるようだ。 三つ目の小さな橋『う』を渡るとそこには線路も残っていた。ここも平坦地がありなにかの施設があったようだ。 地形図の点線をたどって左側の流れを渡る。地形図の点線はそこから上方に向かってUターンするようになっているが 実際は違っていた。
この辺は涼しい四つ目はパス

四つ目の橋『お』が現れる。これを渡るとどこへ行くのか?『お』を渡ったのは良いけれど。その先が行き止まりでだったとすると またこれを渡らなければならない。しかも下を見てしまったので足がすくんで動けない。 単独なので無理は禁物と言い聞かせて引き返す。『ハ』のルートで上に行ってみる。 すると地形図通りにそこにも林鉄跡があった。 つまり四つ目の橋『お』からぐるっと回り込んでここに出るようだ。
車輪もあったこの高さについビビってしまう

左に行くと『か』と『き』、右に行くとさらに高度差のある『く』橋が現れてにっちもさっちもいかなくなった。 ふと空を見るといやに暗くなっている。そういえば今日は昼過ぎから雷雨のおそれもあると言っていた。 ここで無理して上流へ行って水かさが増して帰れないなんてしゃれにもならない。 で、あっさりと帰ることに。
ワイヤーで支えられた栃

鉄路の上に覆い被さるように栃の木があった。よくまあ、倒れて来ないものだとじっくり見ると、 二本のワイヤーで引っ張られていた。親切なんだか、どうなんだが・・・。 源流碑を見に行こうかとも思ったが空模様は悪くなるような感じがしてあきらめる。
ここで食事ちめたくて気持ちいい

しかし、せっかく来たのだから食事だけでもして帰りたい。 きれいな小滝を見ながら温かいものを作る。透明で冷たい水を見ていると ちょっと水浴びも良いかなと思い始める。どうせ誰も来ないし。

林道終点に戻ってきた。林道だから周辺は広く見える。で、空を見上げると黒い所もあったが全体的には晴れである。 ありゃ〜、判断ミスったか。どうも間の抜けた山行きになってしまった。そこで地形図を見ると すぐ近くに三角点のピークがある。これを登ってお茶を濁そう。

Cから登る点名『音水』

林道はほぼ全域に渡って高いのり面があるのだが、Cだけは写真のような感じで獣の歩いた跡もある。 そこから斜面をよじ登り、植林の中をジグザグに登っていくと鞍部までの途中の斜面に炭焼き窯跡も残っていた。 こんな所も生活の場所だったのかと驚く。点名『音水』の山頂には13時05分、標高727.4m、四等三角点。 周囲は藪で展望は無し。
良い感じの所もある鉄塔に出た

山頂からどうするか。先ほどの鞍部に戻って、そこから北東へ下るとダイレクトに音水の集落へ戻れる。 しかし、南東の尾根を下ればどうかなと思い、下ってみることに。 注意しなければいけないのは、まちがいなく鉄塔に行かないと林道ののり面が高くて 降りることができないことだ。13時40分『上野横行線38』の高圧鉄塔に着。 昭和33年にできたという古い鉄塔だ。

駐車ポイントには14時。暑くて頭から湯気が出そうだ。全部着替えて顔を洗ってさっぱりする。 車を発進させて29号線に出て気が付いた。 あ!金山神社に寄るのを忘れてしまった!

今回の中音水渓谷の地図は こちら(約120k) でごらんください。


それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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