白口峠周辺

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『生野』、『但馬新井』を参照していただくようお願いいたします。

2009. 7.18.  土曜日  曇り  気温蒸し暑い
生野にある山でまだ登っていないピークはいくつかあるが、その一つに青草山がある。 銀山湖に注ぎ込む支流に青草川というのがあるので、その周辺だということはわかるのだが どのピークがそうなのかはいろんな資料を見ても不明だ。ひょっとしたら周辺の山域を指していて 特定のピークではないのかも知れない。

実際に歩いてみればなにか得るものがあるかもしれないし、その周辺には地元の人しか 知らないようなお宝がたくさんあるという。それらも見つけてみたい。 スタート・ゴールは神埼郡の作畑集落とする。白口峠へ向かう舗装路の途中に 『作畑減圧槽』という水道の施設があって道脇にスペースがある。そこに駐車。10時半スタート。

ここは古くは『御口屋』と呼ばれた史跡で、峠向こうにある白口が銀山として栄えていた頃は 番所が設けられていたという。 ここからちょっと下った地点より左の耕作地跡を登っていく。地元の字で言うと 東吹上と北ノ吹上のあいだの谷を登ることになる。吹上という字も当然鉱山に由来したものだ。

県道から離れて耕作地跡を行く棚田跡の石垣がすごい

地形図には点線のルートがあるが、これは作畑から青草へ抜ける峠道があったということだ。 青草を抜ければ今はダムに沈んだ上生野(こうじくの)の集落へ続くことになる。 白口へ抜ける峠同様に作畑にとっては重要な街道のように思うのだがはたしてどうだろう。 獣避けの扉の向こうは薄暗い植林帯になるが古い棚田跡の石垣が幾重にも連なるようにある。

山仕事に今でも使われているのか、峠道はしっかりと現存しており、ずいぶんと歩きよかった。 しかしこの周辺は山ヒルの生息地ということもあって、今回は長靴で歩くことにする。 長靴の表面にはたっぷりと虫除けスプレーを振っているのである程度は安心である。 ただし足元がぐらついて歩きにくい。

生野と神崎の境界尾根に乗る

谷の途中から地形図にある点線ルートとは離れていくが、道はそれなりに明確に続いている。 11時08分、町界の尾根に到着。稜線上には左右に明確な道がある。 さらにここから生野側にちょっとのぞき込んでみるとわずかながらも踏み跡が残っていた。 青草に抜ける峠だと言ってもいいかもしれない。

予定ではここから白口峠に向かうのだが、天気も持ちそうなので稜線の東にある三角点ピーク、 点名『黒尾』まで言ってみよう。ピーク『B』は南斜面にきれいな巻き道があったので それを利用して東進する。ほんとはピークに立って地形図にある点線ルートが 続いているのか確認したかったのだが、それは帰路に見てみよう。

ピーク『B』は巻き道でパス点名『黒尾』

点名『黒尾』には11時35分着。標高805.6m、三等三角点。 大柿さんの古いプレートだけがぶら下がっていた。年号が消えていていつのものかはわからず。 さて、稜線に出てからここまで展望はなかったが、お昼ごはんはどうしようか。 座れるような場所もないし、仕方なく立ち食いで済ませる。周辺を少し探索してみると、 な、なんと、すぐ下の斜面には稜線を横切るように林道が出来ていた。

引き返して白口峠を目指す。往路でパスしたピーク『B』から青草方向には地形図どおりに踏み跡があった。 もしこれが続くなら『A』から青草へ下っている踏み跡といずれは谷付近で合流するのかもしれない。 さらにここからは小畑山、高畑山、笠形山のピークを見ることが出来た。

ここまでも道は明確だったし、これから峠までは下り基調だし・・・と、気がゆるんだのか ミスコースをしてしまう。途中で気が付いて引き返すが我ながらつまらないミスだった。

『D』手前。良い道だ

この稜線から青草へ下る道がもう一つある。それが『D』の分岐だ。 その方向をのぞき込んでみるがこれまた問題ない道だった。 いずれ青草の谷にも行ってみたいのでそこからこれらの道を登り返してみるのも おもしろそうだ。
MTBならジェットコースターだ点名『作畑』を右折

点名『作畑』には13時ジャスト。標高682.1m、四等三角点。 ここから左よりに下っていけば白口峠となるが、実はここから右よりに進んでいくと その途中に石仏の祀られている石の祠があるという。正確な場所がわからないので 注意深く進むが候補地は2箇所ある。まずは白口から青草に抜ける峠付近 (3月に 訪れていて『馬の背』と呼ばれているようだ)。期待していたが上から眺めると倒木が多くて無さそうで引き返す。 もう一箇所の何の関係もなさそうな鞍部にそれはあった。
『のぞきのお大師』着。来てわかったがここも古道の途中だった

地形図だけで判断すると何の関連もなさそうな地点だが、実際に降り立っていると そこは見事なほど考え抜かれた街道だった。ここは『のぞきのお大師様』と呼ばれている。 石を積み上げた祠で、天井部分には波トタンで覆われていた。それを正面に見て 左右には明確な古道がある。地形図で確認すると左は馬の背へ、右は白口峠へ向かっている。 作畑から来た場合、白口集落まで下らなくてもこの道で青草へ抜けられるという寸法だ。

覗いてみると真っ暗の中、大師像が祀られている。なにか忘れ物があると気になっていたのだが、 リュックにライトを入れるのを忘れていた。 仕方なくカメラのフラッシュで撮影だけをする。後で写真を見ると台座に文字があるようだったが 確認できずだった。あ〜無念。

中をのぞいてみる白口峠に着く

この鞍部周辺にはいろんな地方の杉とか檜が植えられた試験植樹(昭和46年6月植え付け)の林になっている。 この向こうの大きな谷は白口の銀坑道のあった谷だ。 それにしてもこんな所に祠があるなんて!!驚き以外のなにものでもない。 興奮さめやらぬままこの古道で白口峠へむかう。どんぴしゃりで峠に降り立つ。13時33分。

これで終わりではない。この峠は鞍部を大きく掘り下げた新しい峠だが、この 南にはほんとの白口峠が残っているのだ。昔、この稜線を歩いたこともあるのだが 気にもとめなかった。のり面を登り返して5分もたたないうちにその小さな鞍部に着く。 生野側に10mほど下ってみるとそこにもお宝はあった。

旧白口峠の祠跡と残された石垣。鞍部から黒矢印で来る

現白口峠には『吹上のお大師さん』との別名もある真新しいお堂があるが、その昔は ここに祀られていたらしい。真っ平らな敷地のその正面にあたる部分には石垣も 残っていた。つまり銀はここを通って大阪などへ行っていた可能性があるわけだ。 (大部分は『銀の馬車道』と呼ばれる市川沿いを行ったのかもしれないが・・・)
現白口峠とお堂中にあるお大師

現白口峠に戻る。13時50分。お大師さんのお堂の前に水場があるのでそこで顔を洗う。 とりあえず山ヒルはまったく出なかったので献血はせずに済んだ。 ただ、長靴だったので足は痛い。こざっぱりしてからお大師さんを見てみる。 基台には彫り文字もなかったので年代はわからない。
舗装路途中にある道標それを読み解く

舗装路を下っていくと石の道標がある。ここも過去何回も通過しているのに今まで気が付かなかった。 ぐるりを眺めてみるが年号などは無かった。表面に彫られている文字は 欠けもなく解読は簡単だと思ったのだが・・・。 『左 いくの』は問題なし。だが右がわからない。 最初は『右 阿いさ里』で『岩座神(いさりがみ)』かと思ったのだが・・・。

後日太子町のIさんからメールで解答をもらいました。
・・・首記の道標文字を島田様は「右 阿いさ里」と解読されていますが、 「里」とされている文字は「王」の変体かなで「わ」の音になり、 「右 阿いさ王(あいさわ)」が正解です。

1/25,000地形図を調べても該当地名が載っていないので、町の図書館 へ行って地名辞典を調べたら、明治22年の町村合併前に生野6ヶ村の 一つとして「相沢(あいざわ)」村があったが、合併により生野町が発足し て一つの字になったとの記載がありました。

また、同辞典によれば「相沢」は市川支流の大谷川の沢をいい、金香瀬 鉱山が最盛の頃には(享保のころ)鉱山労働者27家族、140人が住んで いたとの記載がありました。・・・

どうもありがとうございました。頭すっきりした気分です。(^_^;) ただ、大谷川の沢というと、現在の観光坑道の奥になるわけですから、この道標が 本来あるべき場所の特定に興味津々というところでしょうか。

これも祠跡だったはずれのお大師

そこから100mも下らないところで炭焼窯跡のようなものを見つける。よーくみると それは炭焼きではなく石組みの祠だった。それも先ほど見た『のぞきのお大師』の祠と まったく同じ作りだったので驚く。残念なことに中を見ると石仏はなかった。 どこかに移動されたのだろうか?

(元は大日如来が祀られていたそうだが、明治の合祀令により作畑の観音堂に現在はあるそうだ)

駐車ポイントには14時20分。顔を洗って服を着替えて帰路につく。 道路沿いのちょうど作畑のはずれにも大師堂がある。『境目のお大師』と呼ばれていて 中には当然だが大師像が祀られていた。今回見た三体ともがまったく違う大師だったということも またおもしろい。基台の正面には『施主 作畑邑』、横手には『天保二卯年(1831)』とあった。

結局青草山の所在地はわからなかったが、これだけの小さなエリアにたくさんの 見どころがあって楽しませてもらった。 これらの情報は生野のS氏、また作畑の 山と川のあいだで からいただいたものです。お礼申し上げます。

今回の白口峠周辺の地図は こちら(約120k) でごらんください。


それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


ホームにもどる