相坂隧道

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『姫路北部』を参照していただくようお願いいたします。

2009. 8.13.  木曜日  晴れ  気温蒸し暑い
新聞の記事で、姫路にある『相坂隧道』は廃隧道になることを知った。篠山市の鐘ヶ坂隧道は 現在公園化されているもののイベント時しか通行できないようになっている。 相坂は公園化されるのか、このまま朽ちるままになるのか、今のところ知るよしもないが 入り口を塞がれてしまえば後の祭りとなる。現役である今の内に訪れてみよう。

初めて通行したのはもう10年以上も前のことで「狭かったなあ」というぐらいの 記憶しか残っていません。とりあえずその記憶を頼りに車を走らせる。 姫路から国道312を北上して、JR播但線の香呂駅付近から西に向かう。 狭い集落内を通り抜けて谷間の一本道を行くと分岐となる。

こんな谷の奥に乗馬クラブがあった。そこが分岐で、 右に曲がると八葉寺 へのきつい登り道。正面を行くと相坂隧道だ。完全一車線なので正面から車が来るとたいへんなことになりそう。 とりあえず正面衝突をすることもなく隧道手前までやってきた。隧道の東西の入り口前には交互通行ができるように スペースがある。そこに駐車する。

白い矢印が旧峠への道

隧道を見る前にちょっと後戻りする。旧峠への道を見つけるためだ。 WEBを検索しても隧道の写真はいやというほどあるのだが、旧峠についての記述とか写真は皆無だった (検索漏れかもしれないが・・・)。入り口はすぐにわかったが季節柄えらいヤブになっていて、 ここを登ると腰から下がびしょぬれになること間違いなしなのでテンションは下がる。 自転車的に見てもまったく支障のない傾斜と道幅である。
相坂隧道の東入口。白矢印で尾根へ登る。矢印の先、稜線は見えてます

隧道の前には隧道の説明版がある。それには『昔、相坂から谷山や須加院への道はトンネル南の 鞍部を超す険しい山道でした。大正八年。香呂村長の岩田清治氏の肝いりで工事を開始し同十年に完成しました。 ・・・中略・・・工事費は約二万円香呂村の事業としては画期的なものでした。高さ2.9m、横幅2.45m、 長さは約70mあります。』

よく『看板に偽り有り』などと言われるがここもその一例のようだ。というのも、前述の鐘ヶ坂隧道などの旧峠道は まさしく険しい難路で、日本初と言われる煉瓦製隧道の必要性は感じられるのだが、ここなどは隧道の真上にもう尾根が見えているではないか! 歩くだけで考えれば高額の工事費をかけてまで隧道を造る必要があったのかと思えるそんな地形だ。

隧道の大きさを人物と比べる登る途中に写してみる

東の入り口上部には『相坂隧道』という立派な扁額が掛かっている。何枚も写真を写したのだが すべてボケていたのでここに貼ることはできない。そうこうやっている間にも何台もの車が通過していく。 まさしく生活道であり、現在の車社会にあっては必要な隧道と言えそうだ。 入り口の左右は岩盤が露出しており、最近設置されたと思われる落石防護ネットがある。

隧道を通過して向こう側に行く前に旧峠に登ってみたい。しかし、さきほどの旧峠道は どう考えても行きたくない。そこで、説明板の所からネットに沿うように真上に見える稜線めがけて 登ることにする。斜面には下草もないしどう見ても5分とかからないはず。 カメラと三脚、タオルだけ持って登ってみる。

白矢印で稜線着

登ってみて驚いた。そこには立派な道があったのだ(青線)。左方向はこれから向かう 峠に行っているように見える。 さらに、写真の黄線の稜線のカーブでもわかるようにここも小さな鞍部となっている。 この青線の道の存在から見て、この南にある正規の峠とここの二つの峠があったのかと 想像したりする(その後、青線道は遊歩道だとわかる)。 この道も気になるが、とりあえず稜線を南下して峠に行ってみよう。
赤煉瓦の土台に五輪塔と石仏千手観音かな顔の表面アップ

稜線を10mほど南下すると想像もしなかったものと出会う。 それは10基ほどの五輪塔と1基の石仏だった。この先の峠にあると思っていたものが こんな中途半端な所にあるとは!ちょうど隧道の真上ぐらいか・・・。

よく見ると煉瓦を積み上げた土台の上にそれらはある。煉瓦? ひょっとしたら隧道に使われた煉瓦だろうか?しかも石仏だとばかり 思っていた菩薩像はどうもコンクリート?で出来たもののように見える。 表面は採石ダスト?のような細かい石の粒で覆われている。まるで家屋の外壁のような 表面をしているのだった。五輪塔は古い物だったが、隧道の完成後に安全を願って ここに設置されたと想像したいなあ。

峠に降り立つ(黄色矢印で)

峠に降り立つ。相坂方向も谷山方向も下草がびっしりと生え混んでおり、 やはりさきほどのルートで登ったのは正解だった。周囲を見たが石仏などは無く (五輪塔などはここからさきほどの所に移転されたのかも?)、 登った所で見た青線の道もここに合流していた。

ただし、予想外のものを発見する。それは自然歩道の標識だった。 『暮坂峠3.4km』『八葉寺0.6km』とある。てことは、あの青線道は八葉寺へ向かっているのか!

遊歩道を歩いてみる途中でUターン

ここまで何気なく来たように思われるが、蒸し暑くて汗びっしょりの状態だった。 Tシャツはもちろんパンツもびっしょり濡れている。全身に虫除けスプレーをしているのと タオルを持っていたのは正解だった。ただ、この遊歩道を見つけたからには 少しでも歩いてみたい。そう思って少し歩いてみるがこの季節にもかかわらず 下草もなく快適だ。地図を持ってこなかったでわからなかったが八葉寺への参道手前で 引き返してしまったのが残念だ。
対向車が来ないことを願う壁とぎりぎり

車に戻ってクーラーを全開にしてとりあえず汗が引くのを待つ。 そしていよいよ隧道へ。 入ってビビッた。まさに隧道の幅と車幅がぎりぎりだったのです。 油断をするとミラーを擦りそうなのであわててミラーを倒す。 ふ〜っ、なんとか通過できました。 内部も全面が煉瓦だと思っていたのだが、天井部だけ煉瓦のままで側面は補強のためかコンクリートだった。
隧道の西入口付近。白矢印は峠からの道

西側入り口の扁額には香呂村長の岩田清治氏をはじめとする議員たちの名前が彫られている。 これも後で写真を見たらボケボケだったので数名の名前しかわからなかった。 犬を連れて散歩に来ていた男性が汗まみれの私を怪しげに見ていた。 廃道になるのでにわかに人気が出たのを知っていないのかもね。

こちらにある峠からの道も確認。当時としては不必要だったと思われる (これはあくまでも勝手な私感です)隧道だが、その後のモータリゼーションを 予感した村長の英断はまさしく正解だったのかも。しかもこうやって 隧道好きのマニアが集まるようになったのですから・・・。

今回の相坂隧道<の地図は こちら(約40k) でごらんください。


それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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