オバタケダン

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『口坂本』を参照していただくようお願いいたします。

2007. 7.22.  日曜日  雨  気温蒸し暑い
国土地理院の地形図にはまったく記載されていないのだが、名田庄の坂尻から美山の棚野川へ降りる 棚野坂という峠があるという。WEBで調べてみるとなかなかおもしろそうだ。 この峠道をMTBで下りに使ったら乗れるだろうか?よし、まずは歩いて峠道の様子をみてみよう。 せっかくだから729.0mの三角点ピーク(オバタケダン)も踏んでみて、下山はその東にある 鉄塔巡視路を下るという計画をたててみました。

オバタケダンまでのルートはたぬきさんが一度歩いているが、それより東方向(八ヶ峰)へも チャレンジしてみたいと言う。私の今回の計画はその途中の鉄塔までですが、 ご一緒しましょうとお誘いする。

氷上でたぬきさんと合流して舞鶴若狭自動車道、大飯高浜ICで下車。そこから県道16号で 峠を越えて名田庄となる。国道162号との出合いに派出所があり、真向かいは公民館で 車が止められる(勝手に止めてはいけません)。派出所前なら車上荒らしにあうこともないでしょう。 8時半スタート。

周囲の山々はガスに覆われておりいつ雨が降り出してもおかしくない天気だ。 国道を東に歩き始めるとさっそく雨が降り始めた。駅舎のように立派な「坂本」のバス停で リュックカバーを付けているとパトカーが通り過ぎる。先ほどの派出所のものだが、まるで 我々を捜しているかのようだ。国道に戻って歩きながら「僕らは不審者やからなあ、ハハハ・・」と冗談を言っていると パトカーが戻ってきて目の前で止まる。どうやら冗談では無くなってきた。
派出所前に駐車一度は乗りたいなあ

「棚野坂に行くんですか?オバタケダン?」とおまわりさん。あら、よう知ってはるわ。 「実はその近くで行方不明のハイカーがまだ見つかってないので〜」ということで 念のために住所氏名を教えて欲しいという。どちらかが指名手配の犯人に似ているという ことではなかったようで一安心。

最初に見えた橋を渡る。民家脇に石仏を祀ったお堂があって峠の入口としてはふさわしい。 その奥に崩れかてはいるが、なまこ壁の立派な土蔵がある。それを横目に見ながら行く。 さっそく分岐があってたぬきさんは右だというが実はいきなりのミスコース。 すぐに気が付くが引き返すのがめんどくさいのでそのまま登り続ける。
我が家より立派な土蔵間違いルートだがそのまま登る

うっすらと踏み跡がある枝尾根を登る。気温は低いが湿度100%のために汗が噴き出す。 ポツリポツリと雨粒も落ちてきた。 左下の谷を見ると正規の峠道らしいものが見える。その峠道はどんどんと標高を上げてきて こちらと同じぐらいになってきた。それを見計らってそちらへ乗り移る。
間違いルートから
正規の峠道に復帰
グリーンは崩落地帯からの道
白は439m経由の迂回路

周囲は雑木帯でガスがあることもあって幻想的だ。峠道はU字に掘れていて 道幅もありいかにも古道を思わせる。驚いたのは周囲にそのU字の道が幾筋も あって、どれを歩こうか迷うぐらいだった。 たぬきさんが言うには崩れたり、U字に掘れすぎたりして歩きにくく なったら新しい道を横手に造り直したためだという。

何百年も歩き続けるとそうなると思う。こういう古道は今は利用されていなくてもぜひ残して欲しいと願う。 ところがその先で大崩落帯が出現する。道が無くなっているどころか、周囲の斜面が崩れ落ちて 赤土の山肌が露出してます。本来ならそこを横切る峠道が存在していたはず。 今は巻き道が造られていてマーキングに従って439mピークを過ぎると本道と合流する (上の写真)。9時40分。

この合流点には『←坂尻 棚野坂→』と立派な標識がある。 棚野坂からの下りに使うとその標識に従って崩落帯へ下ってしまいそうだが、迂回ルートへ白い標識が ぶら下がっているので見逃さないように。
良い感じだねブナとイワカガミ

この辺りから標高差もなく楽ちんな尾根歩きとなる。ガスは相変わらずだが 周囲には若いブナが現れ始め、足元はイワカガミでいっぱいだ。 春にやって来たら頭上の新緑、地面は白とピンクで彩られるのでしょう。
六地蔵のある分岐

この辺りにもメインの峠道以外にバイパスとも言える道があって、本道とくっついたり離れたり している。「もうすぐやと思うよ」とたぬきさん。実はこの先に六地蔵の石仏があるのです。 檜の大木があり、その向こうに道に沿って行儀良く六体の地蔵が並んでいました。 10時40分。 1体は後ろ向けに倒れていたので抱き起こして立て直します。 基台部分に文字が彫られていますが苔などでうまく読めません。

近くに看板がぶら下がっていた。『棚野坂は鶴ヶ岡の大及(おおぎゅう)と口坂本の坂尻を 結ぶ高浜街道の要衝で往来盛んな鯖街道の峠であった。しかし、堀越峠の整備が進んだ ことや、昭和28年の13号台風による水害のあと、通る人もなく廃道と化し、ついに 自然に還った。六地蔵をここに残して。  京都 小畑登』(原文のまま)

実際の棚野坂はまだ先で、 ここはそこへの分岐です。向かって右に行けば棚野坂、左に行けばオバタケダンだ。 その左方向は西畑越えの道でもある。またもや看板が・・・。 『およそ百年ほど前まで名田庄村・口坂本と美山・知見の西畑をつなぐ道が ここ棚原坂から南に分岐し、人の行き来があった。 この古道も荒廃してしまい、オバタケダンまでのほとんどが国境稜線上の踏み跡を タブこぎしなければならない。西畑集落まではぼちぼち歩いて約4時間』(原文のまま)

書かれているほどヤブではないのは多くのハイカーが訪れているからだろうか。 分岐から左方向を選んでオバタケダンを目指す。すぐに国境稜線に着き、 そのまま東へ向かう。
国境稜線上にあるブナオバタケダン頂上
白矢印で登って下る
緑矢印は西畑越えのルート

稜線上の道はすこぶる快適だった。足元の笹はすべて枯れていてわずかな 茎だけが残っている状態だった。傘を差しながらでも充分歩けます。 ほとんど平坦で10mほどのアップダウンがいくつかある。 やがて急登りになるとそこは地形図にもあるV字に折れた所。 ちょっと登ると伐採されたオバタケダンの頂上だった。11時20分、標高729.0m、三等三角点。

それまでガスの中を歩いていたのに急に開けた頂上に出てきた。 三角点の周囲は座るには充分のスペースもある。しかも雨も止んでおり 落ち着いて食事が出来そうだ。時々ガスが晴れて向いの尾根が見えたりもする。 方向さえあえば頭巾山も見えるはずだ。あいにく無線はさっぱりでかろうじて レピーターで四国移動のMXFさんと繋がる。

八ヶ峰方向へ向かうにはもういちど山頂からちょっと下ったV字分岐へ戻る必要がある。 山頂から東方向に延びている稜線は西畑越えのルートだ。これを利用すると知井坂からの 周回が楽にできそうです。我々はV字分岐からさらに東へ向かう。12時10分。
さらに良い雰囲気さらに、さらに良い雰囲気
たぬきさんが二人?ガスの中の幻影か!!

六地蔵からオバタケダンまでの道はよく踏まれていたが、それより東は ちょい薄くなる。それに笹の茂っている所もあったりして、スパッツでは 防ぎきれない水滴攻撃を受けることとなる。 雨具のパンツを履けばよかったのだが、もう手遅れだ。 ズボンはズクズクに濡れてくる。

「今さら履いても無駄やからこのまま行こう!」と気持ち悪い状態で歩く。 いくつかある小さなピークを 不用意に巻いて楽をしようとすると変な枝尾根に入りそうになる。 素直にピークへ登るほうがよさそうだ。 おまわりさんに聞いた 行方不明のハイカーはこの辺で迷ったのかなあ・・・。 慎重に地形図とコンパスで現在位置を確認しながら歩く。「この先に鉄塔があるはず」 ヤブを突き抜けると送電線鉄塔がありました。13時ジャスト。
鉄塔着謎の池

『第二大飯幹線51』と銘板がある(大飯の原発から51本目の鉄塔ということね)。 ここから北方向に向かってこの送電線の巡視路を 利用して下山になる。「このままのペースなら八ヶ峰までも行けたかもね」それはまた次回の 楽しみに残しておき、素直に下っていきましょう。巡視路は わずかな傾斜にもプラ階段(不用意に踏むとよく滑る)が設置されており少々うっとおしい。

肉眼でも真っ暗な樹林帯の中にキラキラとひかる場所がある。目を凝らすとそれは 池だった。近くで見てみると池の中はおたまじゃくしであふれかえっている。 近くにある木の枝にはモリアオガエルの卵塊がぶらさがっていた。

この巡視路もMTBで乗れるかと期待していたのだがプラ階段が邪魔をしそうで、 60〜70%といったところだろうか。しかし468mからは急な下りとなって 道もジグザグに付けられています。はるか下方から水の流れる音がする。
ジグザグの急下り林道に出た

工事の車両と休憩舎らしいものが見えるとすぐに一の谷の林道だ。14時35分。 ほんとうならこの先にもある巡視路で尾根を一つ超えゴールしたいところだったが、 雨も降っていることだし、100mほどの登り返しがしんどくてこのまま林道で帰路に着く。

林道出口には15時05分。そのまま国道を歩いて駐車ポイントには15時半前。 ちょうどよい頃合いです。派出所には別のおまわりさんがいましたが、 朝方の事情を説明して、無事に下山したことを報告。 生憎の雨でしたが傘で歩ける良いコースでした。

今回のオバタケダンの地図は こちら(約150k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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