西段が峰〜笠杉山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『神子畑』を参照していただくようお願いいたします。

2006. 6.24.  土曜日  晴れ  気温 暑いがさわやか
レポートにはしませんでしたが、1週間前にOAPさんと段が峰に登っていました。 それは無線のアンテナのテストをするという目的だったので、簡単に登れる千町峠からの お手軽登山です。ところが山頂に着いた途端に小雨が降り始め、テストも半ばで 早々の下山となってしまう。最初の予定では笠杉まで行き、そこから宍粟森林王国の 施設へ降りようという計画でした。小雨の中、まずは段が峰から西段が峰へ行き、そこから山上庭園を通過。 その時『くじら岩』という標識を発見する。

この岩があることは知っていましたが、まだ見たことはありません。「ついでですから 探してみましょうか」OAPさんと標識の方向へ少し下ってみますと、大岩はあるものの くじらと呼べそうなものは無し。この斜面どこでも下って行けそうで気になりましたが、 稜線に戻って大タワへ向かう。するとまたもや気になる分岐が二箇所もあった。 どうにも我慢出来なくなりOAPさんにここを下りましょうと提案する。

最初、道は良かったが途中から倒木帯となる。それをクリアーすると地図にない林道の終点に出た。 そこは見たこともない大規模な岩塊流があって『いちのみや登山会』による手書きの標識もある。 さらに、林道から右の方向に木製階段、つまり遊歩道が見える。途中までその遊歩道を歩いてみたが 森林王国から方向が逸れるので引き返して、急下りでヒルのいる枝尾根を下る。OAPさんの登山靴に1匹 這っていただけで被害は無く駐車ポイントにはドンピシャだった。

前置きが長くなってしまった。林道から見つけた遊歩道を途中で引き返してしまったが、家で地形図を見直してみると 森林王国の敷地からスタートしていると確信する。次回登るなら目的のその1はその遊歩道を見つけること。 目的その2はくじら岩を探すこと・・・。そうだ、岩と言うと 「兵庫の山々 山頂の岩石」  の橋元さんです、メールでくじら岩の事を訊ねると、『地球科学』という専門誌に掲載された自らの論文を送ってくれました。 内容を読んでさらに見たくなる。これはもう行かねばなりません。

いつも通り過ぎそうになってしまう 百千家満(おちやま)からの分岐を右に折れ、千町へ向かってグネグネと植林の中の舗装路を上っていく。 上り詰めた所には隠れ里のようにひっそりとたたずむ草木と千町の集落があるのだが、 なにやら見かけぬものが出来ている。砂利が敷き詰められた道の奥には二階建ての建物があり、 『雲海に建つ草置城』と幟がある。
草木の入口(登り峠)にある草置城現在の城主様はこのお方

実際に戦国時代には此の地に草置城があったらしい。それは復元されたこの建物のさらに奥、 標高601.6mの三角点ピークが実際の城跡らしい。そこへ向かって255段の階段が付けられているが 時間がないので、次回の楽しみに残しておいてまずはお城探索をしてみます。

1階は板の間で中央にいろりがあって茶釜が架かっている。2階への階段を上ると 窓から外が見下ろせてお殿様の気分が味わえるという趣向だ。 今年の4月に出来たばかりなので木の香りが気持ちよい。 入口横手に五輪塔と書かれた看板があったので見てみると、丸石の土台の上に それらしい残骸があった。いつの時代のものか判るような文字等はなかった。 ただ、それは五輪塔ではなく宝篋印塔でしたけど・・・。

草木の集落から下千町、上千町を過ぎ、最奥から未舗装の林道(奥田谷線)へ入る。 普通車でも走れないことはないが、なんの標識も無いし、初めて来る人には 不安になること請け合いの林道である。唯一、尼崎山の会の白い木柱が登山道へ 向かっていることの証明になる。

宍粟森林王国と名付けられた敷地に入る。ぐるっと大きく反時計回りに回り込むと左手にこの施設で唯一の建物 (宿泊施設?)がある。 その手前の木陰スペースに車を駐車する。建物はここから見ると木造の野外ステージのようにも見える。 周囲には誰もいないようで利用者も無いために雨戸?を閉め切っている。10時スタート。
南にある遊歩道を奥へ!!雑木の尾根を登る

駐車ポイントからさらに林道を登ると一般によく知られた大タワへの登り口が右手にある。 もちろん目的その1があるので、そちらへは行かずに南に見えている遊歩道に入る。 先週来たときにいつのまにこんなものが出来たのかと驚いたが、来るたびに何か新しいものが出来ているようだ。 施設全体はまだ完全に出来上がっていないのだろう。

ダムとも呼べそうな堰堤のある小さな池の周りを一周するように遊歩道がある。 路面はコンクリート、手の込んだ木製の柵(宍粟で摂れた間伐材かな?)。 写真のように赤い矢印方向へ歩いていく。最奥でUターンするようになっているが、 柵の隙間から雑木の林方向に踏み跡があった。ふふふ・・・、やまあその勘が的中やね。

踏み跡は左にある枝尾根を登るように取り付けられている。直線的に登ると急登りなので、、 ジグザグと傾斜が緩くなるよう道が付けられています。さらに木製の階段も現れた。先週に見かけたものと まったく同じ物だ。もう100%間違いない。これを登れば岩塊流の林道に出るはず。 階段には『IP27』とマジックで書かれていたり、白いタグで『IP○○』とあったりする。 この数字はどうやら階段の段数を現しているようだ。
良い感じが続きます

汗は噴き出るが林を抜ける風が心地よい。樹間から施設が見え隠れする。 これだけ整備されていながら存在を知られず、案内もされていないはもったいない話だ。 地図を見なくても道をたどっていけば間違いなく970m標高点まで案内してもらえます。 道中は雑木ばかりで周囲の見通しは利くため、970m標高点手前で南と南西に延びている 枝尾根の確認もできる。そのどちらも歩いてみたくなるような尾根だった。

970m標高点には10時40分。道はしっかりしており植林の仕事道を利用しているようだ。 先週はこの辺りまで来ていたのに、なにを思ったかUターンしてしまっています。 左に鹿避けネットが出始めたら右方向を要注意。林道に降りる分岐が判りにくいです。
林道に飛び出す(矢印の方向に進む)車止めの奥、林道を埋め尽くす岩塊流

林道には10時55分。矢印の方向に進むと車止めがあり、そこから右に法面を登れば くじら岩を経て山上庭園への登山道となります。その前に車止めの奥を見てみてください。 それは林道を分断するように大岩の集まりが右から左へ流れ落ちるように存在しています。 林道と交差する部分だけ重機で平坦にされていて、一見石畳のようにも見えますが、 その左右は自然のままの姿を保っています。
岩塊流の付近だけ冷気が漂ってます岩の上に樹木が・・・

ここから杉の植林です。さっそく中へ入ってみましょう。 左手が先ほどの岩塊流で大岩がゴロゴロしています。 そのすべての岩には緑の苔に覆われていて、さらにその苔の上には 樹木がしっかりと根を下ろし、岩を巻き込むように地面へと続いています。 周囲は杉植林ですが、当然岩塊流の一帯だけは雑木の林となっています。 いったいどれほどの年月がこれらの植生を創り上げたのか・・・。

さて、この岩塊流ですが山腹斜面一帯に岩がゴロゴロとしているのではなく、 帯のように、あるいは川のように、まるで誰かが集めたように存在しています。 橋元さんの資料によると岩塊流の幅は15〜20m、全長は600mにもなる。 そもそも、どのようにしてこれらの岩塊が出来上がったのか? 段が峰の周辺は広く平らな山頂部を有しているが、それらは周氷河地形と言われる ものらしい。岩塊流も同様に周氷河の作用でできたという。 むずかしいでしょ?ははは・・・(^_^;)
くじら岩で〜す

その岩塊流に沿って登っていきます。入口から100mを越えたころでしょうか、 大きな岩が目に飛び込んできます。一目でくじら岩とわかる。ご丁寧に『奇岩 くじら石』という 手書きの看板もぶら下がっています。 大きさは7x1.7x1.5m(橋元さんの資料より)。横方向に節理があり、それがちょうどくじらの お腹の模様のように見える。すると右端の切れ込みが口かな?

さあーて、遊歩道も歩いたし、くじら岩も発見したし、今日のレポートは無事終了しました。
一旦平坦になって、もう一登り稜線(山上庭園)に出ました

これから後はおまけですので読み飛ばしてください。とりあえず、山飯を食べたいので 上へ登っていきます。右の植林帯が歩き良さそうですが、あえて岩塊流に沿って登っていきます。 岩塊流に近づくと下を流れる水の影響で冷気を感じる。それが苔を枯らすことなく、さらには岩の上の 木々を育成させる元になっているのでしょう。

いろんな形の大岩は見るだけでもおもしろいし、近づいて根の張り具合とかをカメラに収めたりする。 でも岩の上には登らないようにしよう。苔を踏んで傷めてしまうと現在の植生の微妙なバランスが 崩れてしまうおそれがあります。 右にいったり、左にいったりしながら最後の急斜面を登って稜線に出ました。11時30分。
奥段が峰から西段が峰を見る

山上庭園から奥段が峰(別途地図参照)のピークに着く。ここは背の低い笹だけで 視線を遮るものがない。すぐ正面に西段が峰(別途地図参照)も、 さらには段が峰本峰も見える好展望のピークで、好きな所ですがあいにくのモヤで遠望は楽しめない。 ここでお昼にしようかと思ったが、ついでですから西段が峰へも行ってみましょう。

いったん鞍部に降りて登り返すと左手に踏み跡がある三叉路分岐に出会う。その左方向が 段が峰本峰への道である。それをたどると段が峰三角点へ続いていますが、初めて歩いた時と違って 判りやすいルートになっています。本峰へ行ってみようかとも思ったがハイカーが多いはずなのでパス。
西段が峰にあった残骸ネット

西段が峰には12時ジャスト。ピーク直前で入れ違いに単独男性とすれ違う。山頂には風力発電のための 調査施設(風向、風力調査のポール?が2本)と倒れかけた鹿避けネットの残骸がある。 知らない人も多いと思うが、このネットの残骸は今居るピークの名前に由来するものです。

私は勝手にここを西段が峰と言っていますが、それは段が峰本峰に対して西に位置するという 単純な理由です。それと現在達磨が峰と呼ばれているピークも昔は東段が峰、あるいは段が峰 (OAPさん談)とも言われていました。ところが最近ここを杉山と名付けた人がいます。 それはこの山を愛して止まなかった杉山という人の名前を山名にして、 さらにその杉山さんにちなんで山頂に杉の苗木を植えたというものです。

その際、鹿の食害から苗木を守るために鹿避けネットで周囲を囲ったのですが、 その後のフォローが無かったのか(いわゆる造りっぱなしでほったらかし)、写真にあるように苗木は無く、あるのはネットの 残骸のみというのが現在です。このピークを愛した?杉山さんご本人も 「ゴミになるようならネットなんか設置せんといてよ」って言ってたかも。

後日、ぽくぽくさんから頂いた情報によると、昔は上杉と呼ばれていたらしいです。
大タワへ下る大タワにて

Uターンして奥段が峰まで戻る。無線で三木市のMXFさんと繋がるが視線は一点に集中する。 それは大型の鳥がフトウガから西段が峰にかけて優雅にフライトしていたからです。 双眼鏡で確認するも鳥に関する知識がないのであまり意味はありません。あれがこの山域で話題のイヌワシなら 見られたことはラッキーですが、ただのトンビかも・・・。

大タワへ下る。途中で右に寄ったり、左に歩いたりで寄り道が激しい。おかげで 興味ある踏み跡も発見する。大タワには13時40分着。 この峠は単に地形を現す『大タワ』という名前を付けられているが、 東に下った田路の人は『千町峠』と呼んでいます。悠友山荘のあるところも『千町峠』ですが、 こちらの方が古いので元祖『千町峠』です。千町の人達はどう呼んでいるのか、これはぜひ千町の人に聞いてみたい。 残念なことにその田路への道も現在は廃道状態です。

おっと!石仏を忘れてはいけません。トタンの祠は台風かなにかで吹っ飛んでしまって石仏が 丸裸の状態で立っています。訪れるハイカーが多いのでお賽銭もたくさんあります。 宝珠を持った地蔵菩薩で右には『天保十四(1843)卯七月吉日』左には『志主田路助ヶ谷要助 (田路にある助ヶ谷に住む要助さん)』天保の文字の箇所、縦方向にヒビがあるので 転けると割れてしまう恐れ有り!!

登り返した902mの標高点右手に林道が見える。これは田路から千町へ越える計画で 建設された林道だが、これもまた廃道状態になっています。昔、 田路から歩いたことがありますが、その時でも危険な箇所があったぐらいですから 現在は踏み込まないほうが懸命でしょう。

西段が峰への稜線は広くて平らで草原状態だったのに、大タワから笠杉への 稜線は両側が切れ落ちています。近い山域なのに極端に違う地形に不思議な感じがします。 ここをMTBで下ったこともありますがよくまあ転落しなかったもんです。
笠杉山頂

笠杉山には14時05分着。初めて登ったときは雑木に覆われて展望など望むべくもない 山頂だったのに、来るたびに周囲は切り開かれて露出度が大きくなっています。 しかし、今日は展望は期待できませんけど・・・。 西段が峰でも食後にオカリナしましたけど、ここでも吹いてみます。 どこに反響するのか、ここで吹いてみると思わぬ良い響きでした。

もちろんだがここでも無線のスイッチは入れています。 大江山のだっちゃんの声がチョイ聞こえ、市島町の横峰山の母たぬきさんとも繋がる。 けっこうここでゆっくりしていよいよ下山。

大タワ経由で下るのではなく、山頂から中央分水嶺をちょっと西に移動した所から 下っていく。三角点からちょっと戻った所が分岐になっているので西に向かう。 すぐに二股になっている。右を行けばすなわち中央分水嶺になり、笠杉トンネルの 真上を通過する。ここは左を選択して下っていく。
森林王国へ降りました

その先にも小さな分岐がいくつかあるが、いずれも地形図をコンパスがあれば 難なくクリアーできる。谷に降り立つがちょい先が林道の終点となっている。 この林道は森林王国の敷地から続いているので、そのまま下れば宿泊棟の裏手から 出てこれる。15時35分。
全国でも最大級と思われる岩塊流と、その上に群落する広葉樹たち。 自然のもたらす不思議を感じさせてくれるそれらは将来 県の天然記念物にもなるかもしれません。

参考文献
『中国山地東部、段ヶ峰に見られる岩塊流』橋元正彦著
『小さな観察“岩上に発達した広葉樹林”』 橋本光政著

今回の西段が峰〜笠杉山の地図は こちら(約110k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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