氷ノ山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『氷ノ山』を参照いただくようお願いいたします。

2006. 6.10.  土曜日  曇り  気温ふつう

先週の高坪山でパラの発進基地から 氷ノ山を眺めてみると、東尾根から山頂を経て鉢伏までぐるっと時計回りにある稜線 (ブン回し尾根)がまーるく、まーる見え。よ〜し、あれをMTBしてみるかと心密かに思ってみた。 以心伝心とかこのことか、同行のM氏もまったく同じ思いだったらしく、週末前に 上記コースの誘われてもさほど驚くことなく受けて立つ。

スタートゴールに設定した親水公園に到着してみるとすでに駐車場は満車にちかい状態だった。 山の上は寒くなるだろうと温かいラーメンを用意したが、どうやら暑くなりそうで先が思いやられる。 準備している間にも次々と登山者を積んだ車がやってくる。 大段が平へ向かう林道をMTBで上っていくべく9時50分スタート。

ゆるやかな舗装の林道なのでさほど苦しくは無いが、汗はいやになるほど出てくる。 氷ノ山国際スキー場を過ぎて東尾根登山口に10時15分。振り返ると ハチ高原が全容を見せ始める。20年近く前にこのコースを登ったことのある M氏によるとほとんど階段らしい。
東尾根へはずっと階段東尾根との出合い

いつもはいい加減な発言がほとんどだが、めずらしくM氏の記憶は正しかったようです。 緑あふれる道なのがせめてもの救いです。汗の滴が眼鏡のレンズに付いてしまい その緑もよく見えません。息も絶え絶えに東尾根との出合いに到着。 10時40分。

まず目に付くのは小ぶりながらもきれいな避難小屋。 氷ノ山方向に道があるのは当たり前だが、反対方向には 『まど登山口』なる表示もある。そちら方向は地形図を見ると距離はあるが 傾斜がゆるやかなのでMTBでも遊べそう。そして標識こそ無いが、 ちょっとヤブっている正面にも階段と踏み跡があった。
東尾根の出だしは広い所々乗れたりする

東尾根コースの歩き始めは ブナをはじめとする雑木尾根で道も広い。何回か立ち止まってカメラを構えるが、 この雰囲気を収める技量がないのがくやしい。追い越していくハイカーもいれば、 早くも下山してくる人もいる。やはり人気のコースだけあってハイカーの姿は多い。 私は必ず挨拶をするが、同じように愛想良く返してくれる人もいれば、まったく無視して 知らぬ顔のハイカーもいる。

初めてのコースなのでどこに何があるのか、どのくらい歩けば大段が平からのコースと 合流するのか、まったくわかりません。消えかけた文字の標識がある。「なんの標識やろ。どうだんつつじがなんたら って書いてるなあ」とM氏。言われるまで気が付きませんでしたが、見ると周囲には 標識どおりに紅どうだんが咲いています。休憩がてらにカメラに収める。

『一ノ谷の休憩所』、『一ノ谷の水場』(まじ、飲めるんかな?)、『人面岩』と通過する。 人面岩などはどうみても人面には見えもせず、立派な標識をわざわざ置くほどのものかと思う。 木の根やら岩で歩きにくい斜面をジグザグと高度をかせぐ。 登り口からずーっとMTBを担ぎ続けたので肩が痛い。 お腹も減ってきたし時間的にも頂上での昼食は無理だ。 そろそろ泣きを入れようと思う頃、神大ヒュッテに着いた。ジャスト12時。
神大ヒュッテでお昼にする

昔はなかったと思うがヒュッテの入り口前には屋根付きのテラスが出来ていました。 それに腰掛けてご飯にしたかったが、コンロを使用しないようにと書かれていたので 地面に腰掛けてお湯を沸かす。汗で塩分が身体から抜けきっているので ラーメンの塩分補給は身体がうれしがっているようだ。 ここで食後のコーヒーはやめて頂上で飲もうと提案。

食事中に 周囲の笹藪の中からガサガサと音がするのでM氏はちょっとビビっている。 熊と勘違いしているのか 「ホーッ!!」などと奇声を発したりしている。「スズコ摂りのハイカーに 決まってるやん」と私。

このヒュッテは大段が平からのコース合流点でもある。お手軽に山頂に行くのなら 大段が平から登るのが一番です。目の前には水場に向かう踏み跡もある。 知人はここの水場で熊と遭遇したことがある。 お腹がいっぱいになったので元気も回復しました。 山頂でコーヒーを飲みましょう。12時25分。
千本杉付近の木道を行く古生沼から山頂を見る

登山道にリュックが置いたままになっていて持ち主の姿がない。そんなリュックが あちこちに・・・。道の横手のチシマ笹のヤブからガサガサと音が聞こえます。 やはりスズコ摂りですが、けっこうな人数で驚きました。 「そうまでして、あんなもん食いたいか?」自称グルメのM氏がのたまう。

『千本杉』に『古千本杉』と合計2千本の杉を左手に見ながら木道を行く。 この木道を設置しているのは正解ではないかと思う。これがあるお陰でむやみに道幅も広がっていないし、 当然ながら地面はハイカーの踏み圧で傷んではいません。

池のない『みたらし池』、進入禁止の『古生沼』を 通過すると正面におなじみの頂上避難小屋が姿を現す。途中に出会ったおじさんが 「頂上は中学生の団体で座る所もあらへんで〜」と聞いていたとおり、ここからでも 騒々しい声が風にながれて聞こえてくる。「山頂でコーヒーは中止や。素通りするで」とM氏。
山頂から下山コースを眺める

尼工ヒュッテが無くなって広くなった氷ノ山の山頂が、紫色のジャージを着た一団 (ざっと200人)で埋め尽くされていました。M氏が言うとおりこれでは落ち着いてコーヒーが出来ません。 すり抜けるようにして鉢伏への下山口まで来て、そこから鉢伏方面の写真を撮り、 そして下山。山頂にいた時間はわずか3分なり。13時ジャスト。

ここからの道がめちゃくちゃに悪い。階段なども設置されているが、周囲の土がすべて無くなっていて 丸太のバリケードにしか見えません。そんな所を歩けるはずもなく、階段の横手に幅広く道は 広がってしまっています。グリップの悪い普通のスニーカーで登ってきた中学生には 辛い登りだったと想像する。ここも階段ではなくさっきのような木道のようにすれば良いのにね。

「あんたらのように自転車担いだ兄ちゃんが下から上がって来よるで」とすれ違いざまに おじさんが言う。はて、どんな連中だろうか?興味津々で下っていくと、汗びっしょりで あえぐように登ってくる若い三人組がいた。向こうも少なからず驚いたようだ。 聞くと、行きつけの自転車屋さんのメンバーだった。立ち話だがついつい長引く。 彼らは我々とまったく逆のコース取りだが、はたしてどうなるか。とりあえず健闘を祈る!!

仙谷コースとの分岐を過ぎた頃、風に乗って甲高い声が聞こえてくる。 山頂を振り返ってみると例の中学生達がわさわさと 降りてくるのが見えた。これはやばい。追いつかれるとコーヒーが 飲めません。それにしても、だいぶん下って来たにもかかわらずあまり乗れる雰囲気がない。 M氏などは歩いているにもかかわらず、足を滑らせて自らのMTBで痛打して血だらけになっている。
到底乗れません氷ノ山越避難小屋

ブナに囲まれた良い道もあるが乗れる距離は短い。そうこうしていると 氷ノ山越避難小屋に着いた。13時50分。中学生達との距離にアドバンテージが少しあるので ここでコーヒーにしましょう。

山頂では無線もするヒマが無かったが、ここでDQK、IRC局(京都府五条山移動)と繋がる。 小屋の中でお湯を沸かし、おはぎをおやつにコーヒーをすする。ちょうど 飲み終える頃子供達の声が聞こえ始めた。あわてて表に出てMTBを担ぐ。 M氏がMTBを担いで走り出し、私も行こうとすると・・・・。

小屋の前のベンチに座っていた中年夫婦にいきなり呼び止められる。
そして「氷ノ山ってMTBは禁止なんよ!!」とにらむように言われる。
思わず立ち止まって「それはどういう事?納得できるように説明してください」と聞き返す私。
「登山道の入口にスノーモビルとバイクの進入禁止とあるでしょ」と奥さん。
「バイクってエンジンの付いたオートバイの事でしょ。これは自転車ですよ」と私。
「でも、前○先生が禁止やと言うてました」と突如訳のわからんこと言い始める。
「はあ?前○先生っていったい誰ですのん?」
「学校の先生で生物の担当です」

この夫婦、どこの学校の先生かはわかりませんが、その人物から洗脳されて 訳のわからんことを言っているようです。 普通の市民が口に出すのとは違って、やはり先生と名が付くと どうしても影響力はあります。どうやら その前○先生なる人物は自分たちと違うスタイルの山登りをする人がいる事が がまんならないらしく、根拠も理由もなく排除しようとする 差別思想の持ち主らしい。

あんたらの言うことはおかしいと、 やんわり叱ってあげる。すると「わかりました。もうこれぐらいでいいでしょ」と、旦那。 「何言うてんねん。そっちからケンカ売ってきたんやろ」と言いたかったが、 M氏はとっくに居なくなっているし、周囲は追いついてきた中学生で身動きも 取れないぐらいの状態です。さらにじっくりと叱ってやりたかったが、そうもしておれません。 吉本流に「今日はこれくらいにしといたる」と心で言いながら先を急ぐ。

赤倉山はピークを通過するのではなく、東の斜面をトラバースするルートでした。 中学生にもみくちゃにされながらも担いでいるMTBを彼らにぶつけないように気を遣う。 前を行っていた引率の先生が「はあい、道を空けて!!」と生徒に言ってくれる。 やっと通れるだけの道が空いたのでMTBを担いだまま駆け抜ける。 「あんなことようせんわ」と醒めたように男子生徒が言う。「大人になったらみんなこうなるんや」と 心の中で言う私。

トラロープのある岩混じりの急下りと急登りが連続する。疲れたわけではないが、 体調が恐ろしく悪くなる。きっとあの馬鹿夫婦の悪しきパワーに毒されたのだろう。 早くM氏に追いつきたいその一心で走り続ける。大平頭の避難小屋でM氏は 待っていてくれた。「何やってんねん。見知らん人とえらい仲良うに長話してからに・・・」 人の災難の知らずに相変わらず脳天気なM氏である。

事情を説明し、体調の悪いことも言う。この避難小屋からは超快適に乗れるのに それさえも楽しめないほど具合が悪かった。苦しいながらも「とりあえずホードー杉が見たい」と言い、 その分岐に到着する。この分岐箇所の道ばたには三角点があって「えっ?!こんな所に!!」と、驚く。 15時ジャスト。
こんな良いブナ林があるなんて

ホードー杉という名前の巨杉は分岐から500mほど奥に入ったところにあるらしい。 それを見る目的で入り込んだ林だったが、その500mを行くまでの道中の凄いこと!! 道は広く刈り払われ、周囲はブナが生い茂っており、頭上から注がれる緑の 光線がみるみる体調を癒してくれる。 「いや〜!!こりゃ、すごいなあ」「期待してなかっただけにもうけた感じやねえ」 少し前までは笹の生い茂る判りにくい道だったらしいが、大勢の人に見てもらおうと ハチ高原の関係者が刈り込んだそうだ。
ホードエー杉

いや〜、でかい!!案内板によると樹齢は500年で樹勢も旺盛とある。 地上から2mの所から4分岐し、そのでかさを誇示しています。 幹の中央にある焼け焦げ跡は落雷か木地師のたき火跡らしい。 現在、もしそういうことをしたらえらい非難されること請け合いです。 ちなみにホードーとはこの地方の方言である「ホードエー」(でかい)に由来している。 さしずめ名古屋なら「ドエリャー杉」あるいは「ドエリャーでかいでいかんわ杉」になっていただろう。

癒しのブナ林から気分爽快に変身して稜線の登山道に戻る。中学生達は通過した直後だったらしく、 数人の後ろ姿が見えた。今すぐ下っていくと追いついてしまうので、ここで 10分ほど待ちましょう。すると後ろから最後尾を歩く引率の先生と、 その先生達を先導するハチ高原関係者?の若い男性が降りてきた。 もし、氷ノ山がMTB禁止なら真っ先に注意してくるであろう人だが、 「MTBでこのルートは楽しめましたか?」と笑顔で聞いてくる。
さあ、ハチ高原に出てきました

ハチ高原に出ました。小代越から下るのかと思っていたがそうではないらしい。 小代越から下るとそのまますぐに林道になってしまい、 舗装路で親水公園まで帰るはめになってしまうので面白くない。 その手前にある『大久保』という標識から右に下っていくとM氏は言う (上の写真、黒の矢印)。 先生達に別れを言い草原をダウンヒルする。
草原を下るよだれの出そうなシングル

そのコースは開放的な草原のダウンヒルから始まる。ナルコユリの咲く小径を過ぎると 今度は林の中のシングルトラックと変化する。思っても見なかった変化のある美味しいコースに頬もゆるむ。 最後にこういうお楽しみが待っているとは知りませんでした。 M氏も時にはええコースを紹介してくれますね。

いったいどこまでこのルートが続くのか。山道から飛び出ると山中に切り開かれた 小さな畑地だった。そこから谷川沿いに道を下ると大久保の民宿街の ど真ん中に出る。振り返ると『氷ノ山・ホードー杉登山口』と書かれた看板があった。 16時20分。

そこから舗装路を15分ほど走れば親水公園です。 「いや〜、久しぶりにこんな時間まで遊んだなあ」とM氏も満足げ。 私も初めてブン回しを体験できて満足でしたが、MTB的にはきびしいルートでした。

氷ノ山は国定公園です。国定公園はそれのある県が管理をしています。そこで 兵庫県庁の自然環境課に聞いてみました。すると、「氷ノ山の登山口にある『・・・バイク進入禁止・・・』のバイクは あくまでもエンジンの付いたオートバイを意味します。したがってマウンテンバイクは その範疇にありませんので、禁止ではありません」と、こともなくおっしゃる。
「やはり!!」(やまあそ)
「だからといって、山中でレースのようなことをしてもらっては困りますけどね」
「ははは・・・。まさかね」(やまあそ)
「それよりも深刻なのは、大勢のハイカーが道を外して歩くとか、むやみに山野草を摂ったりすることです」

ということで、やはり前○先生の言葉は自分の妄想が口から出ただけのもの。 しかし、現在はMTB禁止でなくても近い将来はどうなるかわかりません。 くれぐれもマナーを守って、私が会ったような馬鹿ハイカーや 危険思想の持ち主である前○先生などの標的にならないように いなければなりません。

今回の氷ノ山の地図は こちら(約150k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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