狩谷山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『岩屋堂』を参照いただくようお願いいたします。

2005. 6.18.  土曜日  曇り時々晴れ  気温ふつう
最近MTBで気持ちよく山道を走っていません。そらそうです。山道はあくまでも自然の アップダウンに沿ってあります。人工的に作られた道ではありませんからMTBには辛いところが あって当たり前。選ぶ山を間違えればほとんど乗れないこともしばしば・・・。 そこで今回は梅雨前線を避けるために北方面、さらに暑さを避けるために オーバー1000mの標高、もちろん等高線は出来るだけ平坦で決まり!!

そんな虫の良いルートがあるのか?。だいぶん前に峰越峠〜若杉原生林のコースを紹介しましたが、今回はその続きとも言える稜線を選択。 鳥取県の吉川と智頭を結ぶオオダワという峠から若杉原生林に向かって尾根にある中国自然歩道をたどります。 もちろん前回以上の乗車率はお約束しましょう。29号線で鳥取に入り、吉川の集落奥からそのまま沖ノ山林道 に乗っかります。

この林道はいつの間にか舗装されていました。昔はたいへんな未舗装だったのですが税金は有効に 使われているようです。途中に左手の分岐を見るとスワッ!!『江浪峠』と標識があるではありませんか。 この分岐を登っていけばあの江波峠へ行けるのか??あの峠の状態を知っている人なら踏み込むのを 躊躇はず(^_^;)。我々はさらに林道を進みます。

絶好のデポ地があります。それは『美作越・芦津越分岐』という所です。詳しく言うと美作越とは 吉川と西粟倉を結ぶ若杉峠へ向かう道、芦津越とは吉川と智頭町を結ぶ無名峠へ向かう道。 その合流点が林道の途中にあります。立派な道標やら地図、それと数台停められるスペースが 周囲にあるのでそれを利用します。準備を済ませて10時20分スタート。

さ〜て、まずはオオダワまで林道ヒルクライムです。どうやらこの沖ノ山林道は全線舗装が 出来ているようだ。これは楽ちん。「こら、ロードコースやなあ」とM氏。空気が澄んでいれば 登るにつれて氷ノ山が美しいシルエットで見えますが、今日はうっすらとモヤの奥。
オオダワに向けて林道を行くオオダワ直前から東山を見る

行けども行けども林道は続いているように錯覚するから嫌いです。その林道もオオダワに近づいて来ると 植林から自然林に植生も変わってきます。最後のコーナーを回り込むと先行していたM氏が 草原の向こうに見える東山(とうせん)を眺めていました。「今日はMTBやめて、東山に登ろうか!!」 いきなりM氏が言い出すほどここから見える東山はすばらしい。 山頂付近は草原のようでいかにも簡単に登れそうです。11時ジャスト。

このオオダワには不思議な施設があります。それはオートキャンプ場。 看板が無ければ単なる広場。もちろん電気は無し、水場無し、トイレ無し、利用者無し、夜になれば熊出没。 石畳の誘導路も妙にガタガタと段差が大きくて普通車では底を擦ってしまいそう。 よほどアドベンチャーな人だけが利用するのでしょうか?鳥取県恐るべし!!

ここからちょっと登るとオオダワ。正面を下って行けば三滝渓谷を経て智頭町。このオオダワから 三滝渓谷周辺は10年以上前は何度もMTBで遊びに来たところです。 北には東山と、その山腹を巻く林道がある。目的は南に階段のある中国自然歩道です。 M氏は東山に行きたそうにしているが、あの草原のように見えるのは背丈以上の チシマザサです。そう説得をしていると智頭町側から一人のMTBライダーが・・・。

見ると普通の格好をしたおじさんですがヘルメット無し、リュック無し、半袖半パン、足元はなんとサンダルです。 我々の前を通り過ぎるとそのまま東山の林道を走ってきました。唖然と見送るやまあそとM氏・・・。 「あんな格好してるけどひょっとしたらヤブ山のエキスパートかもしれん・・・」 M氏をなだめて登頂をあきらめさせた東山に彼はサンダルで登ろうというのか? 鳥取県人恐るべし!!
自然歩道の入口はにぎやかベンチもある尾根道

おやつを食べてダニ除けに長ズボンをはいていよいよ自然歩道に入ります。11時30分。 いきなりの階段登りです。振り返ると東山がさらに美しい。 階段を登り切ると尾根は平坦になりブナを縫うように道が付けられています。 これだけでもここまで来た甲斐があると言うもの。
涙ちょちょ切れの激走こんな難所もある??

さ〜て、ここからは小さなアップダウンが続いていく。ということは下りに関しては なんら問題なく乗車が出来るということです。 ブナは最初のピーク付近だけでこの付近はチシマザサの間に道があるといった感じ。 もし東山に登ったら道もなく周囲はこの笹だらけってことか? やっぱり雪のシーズンかなあ・・・。

下りは勿論ですが、ゆるやかな登りなら落ち葉がグリップを助けてくれるのでこれも乗れます。 MTB的には面白いのですが、ハイキングとしてはどうでしょう?? 展望はまったくないし道も変化がありません。ということはこの自然歩道はMTBのためだけの 道かもしれませんぞ。 熊が出そうなので二人とも奇声をあげながら走り続けます。 熊除けの鈴を持っていますが、進行するスピードが速いので鈴よりも 大声の方が熊が気が付くだろう。
刈谷山山頂にはベンチあり気持ちよく下っていきます

三角点ピークが途中になったはず。そう思って地形図を見るが変化の少ない尾根なので 現在地の確定が難しい。進んだ距離感からしてまもなくでしょう。先頭のM氏から 「三角点あったで〜」と声がする。そこはピークと言うより尾根上の こぶのような所でした。三等三角点、標高1158.9m。12時20分。

周囲は植林、三角点は杉の落ち葉に埋もれて十字のある上面だけが見えています。 ここには地図とベンチ、さらに『狩谷山』という標識もあります。 展望は皆無ですがベンチもあるし虫もさほどうるさくないのでここで昼食にします。 止まっていると案外涼しいので食後のホットコーヒーもおいしく頂けました。 12時50分再スタート。

ここまで下りは全乗りでしたが、この狩谷山直後の階段下りだけはいただけません。 急下りを押して下っていくとなんだか膝に違和感が・・・。 古傷の膝が痛み始めたようです。登りはぜんぜん問題ないのでこのまま前進を続ける。 地形図ではグニグニと曲がっていますが、要所要所に道標があるので迷うことはない。
芦津越の鞍部に着ここを登れば三町尾根点

13時05分、大きな標識のある鞍部に到着。ここが『吉川・芦津越』と呼ばれる峠です。 確かに吉川から芦津に抜けるならこの鞍部が最適なのが地形図からもわかります。 吉川側の道は明確ですが、芦津側は道らしきものが見えません。ちょっと歩いて行くと それらしい踏み跡がありました。これをたどって大川の流れる谷に下りると そこは森林鉄道の通っていた道になるはず。こんどまた探検してみたい所でもある。

吉川・芦津越に戻って看板を読んでみる。『八頭郡智頭町と若桜町の間には、標高1338mの東山を 最高峰として1100mを越える山々が連なった高原状の沖ノ山・東山山地が広がり、智頭の 芦津と若桜の吉川との交流はかなり難儀であったと思われます。
その中になってこの峠は、標高1067mであるが取り付けの道路が緩勾配で歩きやすく、以前から 芦津・吉川越えの往来路として利用されており、また、 今では尾根コースの要所となっています。』 な〜るほど(^_^;)。

ここから吉川側に下ると車をデポした地点にドンピシャに降りられます。エスケープルートとして 考えていましたが、時計を見るとあまりに早すぎるのでこのまま若杉峠まで行ってみましょう。 標識を見ると2.6kmとあり程よい距離です。その前に三町尾根点(智頭町、若桜町、西粟倉村の境界ピーク) を越えなければなりません。これが結構の難所。

空身の歩きならなんてことありませんが、MTBで標高差130mほどの登り返しは正直しんどいです。 さらに途中にある4つほどのピークはすべて登りは階段で下りも階段が多くて快適には乗れません。 ヘロヘロになりながら三町尾根点が目の前に近づくと周囲にはブナが現れ最後の階段を登って ようやく到着。13時55分。沖ノ山方向にはチシマザサが密集しているがわずかに踏み跡がある。 M氏が少し入り込むが「こんなとこよう行かんわ」と引き返してくる。
原生林遊歩道を行く

ここからの下りはちょっと去年の台風の影響か?荒れていて倒木も多くて乗れませんが、 ある地点から面白いように乗れます。若杉原生林の遊歩道コースと合流すると また階段が多くなり乗れたり乗れなかったり・・・・。 救いは植林が無くなってブナが多くなるということか。
東屋からの展望

東屋には14時20分着。途中で老夫婦のハイカーに出会ったきりこの東屋にも人っ子一人いない。 貸し切り状態の東屋で最後の休憩をする。展望は近い山が見えるのみ。 東屋の下にある谷を覗き込んでM氏「この谷に道なんかあるんかぁ?」と不安げ。
若杉峠から吉川へ下る小橋を渡り・・・

地蔵菩薩の石仏のある若杉峠から吉川方面は従来ヤブって入口もなかったのですが、 春に来たときに切り開かれていたのを確認済みだったのでこれは期待大なのです。 たぶん行政の手によって再整備されたのでしょう。しかし『これより 鳥取県人家遠し』と不安になるような赤いバッテンの道路標識?があります。

やはり不安通り道は乗れるようなものではありませんでした。一度整備したものの すぐに崩れたりヤブってきたりで現在は通行するハイカーもほとんどいないのでしょう。 傷む膝をかばいながら荒れた道をMTB押して下っていきます。

乗車という観点から見ると『吉川・芦津越』から下った方がよかったかもしれません。 でも、長い距離の森林浴を楽しみたいなら東屋まで来てここを下るほかありません。 林道が近づいてくる頃になってちょこっと乗れてゴール。15時10分。 MTBを車に入れて川で顔を洗って服を着替えます。

帰りに寄ろうと決めていたのが吉川にある『不動院岩屋堂』です。それは 道路からもはっきりと見える位置にあります。三徳山の投げ入れ堂は国宝であることから 有名ですが、ここの岩屋堂も負けていません。私は敬意を込めて『プチ投げ入れ堂』と呼んでいます。
道路から岩谷堂を見る近くまで行けたらええのにね

間口は7m、高さは13m、奥行き10mの岩窟にそれこそ投げ入れられたようにお堂が ありました。建立年代は明らかでないそうだが、様式からして室町の初期らしい。 もちろんその頃のままではなく安永の頃に2回、さらに昭和にも解体修理がされているという。

元は妙見山神光寺という大伽藍であったそうだが、秀吉の鳥取攻めの際に焼かれてしまったらしい。 考えると、秀吉は2万の兵を戸倉峠、大通峠、江浪峠などで分散して鳥取に攻め入ったと 考えられる。ならばその合流点はこの岩屋堂になるわけだ。それなら焼かれちゃうよねえ・・・。

本尊の不動明王はお堂の内部にあるのでしょうか?弘法大師が33歳の時に彫刻したという それをぜひ見てみたかったが、厳重に施錠された柵でお堂に近づくこともできません。 見学会なんかあったら是非登ってみたいなあ・・・。
帰りかけると軽トラックが私たちの横で止まって助手席の窓が開きます。 中からおばちゃんが「あんたら岩屋堂見てたんやろ?これあげるわ」とパンフをくれるではありませんか。 B5一枚の簡単なものでしたが、おばちゃんの行為が妙にうれしく良い心持ちで帰路に付けました。

今回の狩谷山の地図はこちら(約170k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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