暁峰

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『三日月』を参照していただくようお願いいたします。

2005.12.17.  土曜日  晴れ時々雪  気温寒い
赤十字山からの帰り、テクノポリス(正式名は播磨科学公園都市)へ向かって車を走らせていると 右上になにやら建造物の一部が一瞬だけ見えた。それは山腹に沿ってぐるっと 回り込んでいるようで、とてつもなく巨大な感じがした。「あれがかの有名なスプリング8ちゅうやつとちゃうか? ごっついなあ・・・」聞いたことはあるが目にしたのは初めてである。

スプリング8とは巨大なシンクロトロンであり、シンクロトロンとは円形の粒子加速器のことであり、 粒子をどう加速するかというと(たぶん)強力な磁気でやっていて、加速してどうするかというと、 加速された荷電粒子は高エネルギーの光を発生する。それがどうなるかというと、物質にあてて その解析に使うというものらしい・・・・あぁ、疲れた。ようするに、なんのことやら訳わかめという ことである。

下の道路から見上げると建物の一部しか見えないが、近隣の山の上から見るとどうだろうか? 全周は無理としても半分ぐらいは見える所もあるのではないだろうか?そこで地形図を見てみると 西の山塊に送電線が南北に走っている。その鉄塔、あるいは稜線上から見えるのではないか? 山塊の最北部は富満高原の万勝院があり、その裏山は三角点のある暁峰というピークもある。 たぶん植林かヤブのピークだろうと思うが、その山塊の南端から登り始めて暁峰をゴールにするのがよさそうだ。

登り口は上郡町金出地(かなじ)の須時という所。字からも古い手堀鉱山跡でもありそうな所です。 細い舗装の畦道なので目一杯 山側に車を停める。鉄塔のほぼ真下付近だが巡視路のマークが見あたりません。 ふと見ると車の正面にいつもの赤いプレート部分が落っこちた支柱だけありました。 やはりここが登り口のようです。
鉄塔の真下が登り口わかりにくい巡視路です

9時40分スタート。獣除けの金網のドアを開けて登ります。5分ほどで最初の鉄塔 『テクノポリス線 10(たぶん)』に着。ここからもジグザグの急登りが連続する。 ズルズルと滑るほどの急な所もあるし、これが巡視路かと思うほどの薄い踏み跡である。 途中でわかりにくくなり左にある枝尾根に乗りたくなるが、送電線の方向が正解だろうと思い 谷を巻くように進んでみる。

次の鉄塔の真下に来たので斜面をよじ登ることにする。このあたりにあるはずの 巡視路はいったいどこにいったのだろう?と、その時、左上方向から獣の足音が 聞こえてくる。鹿にしてはなにやら雰囲気が違う重量級のそれでした。見るとそれは なんと猪でした。このままでは私の居る数m前方のところを横切ることになる。 牙で突かれるのはいやなのでなんとか逃れたい。近くに木はありますが 登れそうなものではありません。

そうこうするうちにお互いの目と目が合いました。その目は「遊んであげたいけど、ちょっと 急ぎの用事があるねん」とでも言っているようでそのまままっすぐに走り去っていきました。 げんきんなもので 「あ〜っ!!こんなことならカメラ構えてたらよかった」と思っていると、今度は荒い息づかい と共に黒い猟犬がこちらに向かってくる。一難去ってまた一難とはこのことか!!

たとえ人間に訓練された猟犬とはいえ、猪を追いかけているのですから相当に興奮状態にあるはずです。 「猪に追いつけないならここにいる素ボケた人間にでも囓りついてみるか!!」なんて考えない とも限りません。とりあえず人間であることをアピールするために熊除けのスズを振り鳴らすのでした。 これまたお互いの目と目が合いましたが「遊んでいるヒマないねん」とでも言いたげに猪の後を追っていくのでした。 ホッと胸をなで下ろすが、あ〜っ!また写真撮れなかった!!

『テクノポリス線 9』には10時10分着。鉄塔は枝尾根の鞍部に位置し、期待していた展望はなかった。 ここから主稜線に乗っかって次なる鉄塔へ向かってみます。先ほどの猪と猟犬とは逆方向なので ちょっと安心です。
主稜線に乗りました。やれやれきゃ〜!撃たないで

歩くにはなんら問題のない快適な稜線です。これなら暁峰まで楽勝かも。 次なる鉄塔『テクノポリス線 8(たぶん)』は312mのピークのちょい東にある。 地形図を見る限り切り開かれていればスプリング8は見えそうだ。だが、好事魔多し!! いきなり雪が降り始めてきた。登山口では真っ青な青空が広がっており、先ほどの鉄塔では 雲が広がっていたので徐々に悪くなるのかと案じてはいたのですが・・・。

312mピークを巻くように道はあった。鉄塔の手前であまりに雪がひどくなってきたので ジャケットを着ることにする。まさか雨とか雪は予想していなかったので雨具の用意はしていません。 とりあえず鉄塔へと視線をそちらに向けると・・・・。 オレンジをジャケットはあきらかにハンターのそれです。それが目の前に。向こうもこちらには 気が付いてなかったみたい。いきなり声を掛けると撃たれたりして・・・。(^_^;)

先ほどの猪と猟犬の話をすると、「その猪どれぐらいの大きさやった?」と目を輝かす。でも 猟犬はどうやら違うハンターのものらしい。てことは、複数のハンターがこの山域にいるってこと。 今日は猪の厄日かもしれませんが、下手するとやまあその命日になるやもしれません。 「今日は夕方から雪になるって聞いてたのに、こりゃあかんなあ」とハンター氏。 「もうちょい、奥へ行ってみるか」と立ち去る。
『テクノポリス線 8』鉄塔
雪の降りがひどくなってきたので下山する
戸谷の集落が見えてきました

私は展望を求めてとりあえず鉄塔8へ行ってみる。鉄塔の場所は 木々に囲まれて展望皆無であったし、なによりも雪の降り方がひどくなって目の前すら見えにくい。 このままの降り方だと足元も真っ白になるのはすぐだろう。主稜線に戻っても さっきのハンターと再度の鉢合わせが待ってるだけだし、ままよ、ここから下山すっか。

「まっすぐ降りたら戸谷の集落へ降りられるで」というハンター氏の言葉を信じて下っていきます。 なるほど巡視路とも見紛うようなええ道があります。このまま集落まで楽勝かと思いきや 先端から道はありません。落ち葉の上に雪があるのでとんでもなく滑ります。 二度ほど尻餅をつきつつ、木の枝を掴みながらなんとか降り立ちました。11時。

トボトボと車の所まで帰ってきました。皮肉なことにあれほどひどく降っていた雪はすっかりと 晴れ上がって青空になっています。このまま家に帰ってしまえばレポートにはなりません。 う〜ん、最終ポイントである暁峰だけでも登ってみるかぁ?!

一番早いコースは梅谷からまっすぐ北に上る道路です。梅谷の集落を過ぎると傾斜は急に、 しかもさきほどの雪も多く残っており、コーナーでは凍結状態。 四駆のスタッドレスでないととてもじゃないが上れそうにありませんぞ。
地図のC地点に車を停める万勝院の牡丹園です

富満の集落のちょうどど真ん中付近に三叉路があってそこが駐車によさそう。11時35分。 でかい地蔵菩薩の石仏もあって寒いのに見入ってしまう。 正面に見える神社の向こうにある小高い所が暁峰のようです。

鳥居を抜けると小さな拝殿と本殿がありましたが、何という神社かわからずじまい。 その横手を抜けて行くといきなり広く明るい所に出ました。最初はどこなのか わかりませんでしたが、どうやら万勝院の牡丹園遊歩道のようです。 段々畑のような耕作地があり、季節になるとそこは牡丹であふれかえるのでしょう。
目の前が暁峰想像と違った頂上でした

目の前のピークが暁峰です。さて、ヤブ漕ぎかと思いきや『順路』と書かれた指さしの標識が あるではありませんか!ええ?まさか?と思いながらもその順路を歩いていくと 広い赤土広場に出ました。そこにはブロックに板を置いただけの簡易ベンチも数基あります。 左はさらに小高くなっていて三角点がありました。三等三角点、標高365.0m、11時50分。

こんな公園のような山とはついぞ思いもしませんでした。たぶん整備された頃は 周囲の立木も低かったのでテクノポリスも眼下に望めたのでしょうし、それを 売りにした頂上への遊歩道だったのでしょうが、今は青空が見えるだけで周囲の展望はまったくありません。 仕方なくベンチに座って昼食にします。まあ、ヤブの中よりははるかに気持ちいいですけど。
立木の間からスプリング8を見る

それでもなんとか見えないものかと木の間を覗き込んでいると、おっ!! 何とか見えるではありませんか。左に見える標高341mの三原栗山(ここにも 三角点がある)をぐるっと取り巻くような建造物がそうです。 あの中を粒子がぐるぐると回っているのでしょうかね? 全周は1400mもあるらしく一周走るだけでヘロヘロになりそうです。

縦走も出来なかったし、スプリング8も気持ちよく見えたとは言えませんが 、猪、猟犬、ハンターとも出会えたし、希有な体験ができたので良しとしましょう。 車に戻って下り始めた時、一台の軽トラックとすれ違いました。 その荷台にはなんと!!あの猪ちゃんが哀れな姿で横たわっているのが見えました。 朝方はあんなに元気に山を走っていたのに・・・・。 まさに『朝に紅顔夕べに白骨』・・・。ちょっとちゃうかな?

今回の暁峰の地図は こちら(約200k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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