七種薬師

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『寺前』、『前之庄』を参照いただくようお願いいたします。

2000. 5. 3.  水曜日  曇り  気温ふつう
七種山塊は本峰、槍、薬師という代表的な三つのピークからできている。七種山本峰の山腹には 七種の滝があり『ふるさと兵庫の50山』 にも制定されている。槍は本峰の東にあり、その名の通り小振りながら槍のように鋭いピークを 突き立てている。薬師は反対に本峰の西から南に延びる稜線上にあるどっしりとしたピークである。 通常この本峰から槍に向かって時計回りの縦走が一般的であるようで、この薬師に訪れる人は少ない。

MTB登山の大柿さんから詳細なレポートを頂いていたので追走という形でこの山を登ることにした。 午前8時、七種山に向かう途中にある青少年野外センターの駐車場はまだ一台もいない。ここに止め ようかとも思ったが利用客でない負い目からその先の小滝林道との分岐に止めた。8時15分スタート。 舗装路をゆっくりと登り、山門を過ぎ両側に寺跡の石組みが現れ始めるとすぐに鳥居のある終点となる。

本来なら正面の道で神社から七種山を目指すが、今回は七種本峰をパスするため左手の遊歩道を登っていく。 ゆるやかで子供でも安心して歩ける道だ。途中にある滝見台からは伸びすぎた植林越しに七種の滝が わずかに見える。残念ながら水量はチョロチョロ程度。その後、この道沿いにある『かくれ滝』と呼ばれる 小さな滝の方がよっぽど水量が多かった。滝口に8時55分着、ここもパスして谷に沿って歩いていく。 横を流れる流れの水量がずいぶんと少ない。奥にある池も大きさが小さくなっていてその先は涸れていた。 踏み跡に従ってずんずんと進んでいける。やがて傾斜は急さを増して程なく稜線に出る。9時20分。

ここにも大柿プレートがあり、右に登ると七種本峰、左が目的の七種薬師。最初は下っているが意外なほど 道が良い。思わず乗車してみるがなんの問題もなし。やがて登りはじめて、大柿さんの命名するところの 『逆三の字ピーク』に入っていく。ゆるゆるとした道のうえ逆三の字に稜線がカーブを描いているので かなりわかりづらい所だ。赤布の助けを得て最終ピークに10時着、下りで乗れるところ若干あり。

ここからもいくつかのピークを越えるがさほど急ではない、というより難路を予想していたのに 拍子抜けするほどしっかりした道なので気持ち的に余裕があるのかもしれない。登りはともかく 下りはだいたい乗車可能だ。大きなピークで3つ目がCa.555mの分岐地点。10時55分着。 ここは地形図上でもはっきりとした十字路分岐。真西にもテーピングがある。前之庄から登ってきて いるのだろうか?だとしたらこれが本来の薬師への道かもしれない(理由は後述)。 南に伸びる尾根は地形図で見ると断崖マークがある。正規ルートは東だが最初は南下して先端 の分岐を左にとる。赤布に従えば問題ない。
明神山 向かいの尾根の断崖
明神山がきれい1枚の写真には収まりきらない
すごい断崖

ここを登り切れば薬師の頂上だが途中から前述の南尾根を見るとすごいぞ!断崖絶壁が何百mも 続いていて圧巻。奈良県の大台もかくあらんと思えるほど。写真に収まりきらないのが残念だ。 目を凝らしてみると柱状節理も確認できたが岩の組成とかは知識不足でわからない。 (『兵庫の山々 山頂の岩石』の橋元さんによると流紋岩溶岩か流紋岩質溶結凝灰岩だそうです。) 止まっては振り返りを繰り返しながら上り詰めて頂上へ。小さな岩の祠を回り込んで一段高いところが 二等三角点(だと思う。数字のところが欠けている)。標高616.2m、11時20分。

ちょっと早いが昼食に取りかかる。ここも期待していなかったのにすごい展望だ。東方面が良い。 正面に七種槍、左に七種本峰、その奥に笠形山、千が峰等々。本峰の下には七種神社と七種の滝も 見えたのには驚いた。流れる水がほとんどなく濡れた岩肌しか確認できなかったが残念。 ここでオカリナを吹くが神社まで届いているだろうか?
東を見る
頂上からは東が開けている

さて、多田繁次氏が命名したと聞くこの七種槍と七種薬師の両ピーク。七種槍はその姿から槍ヶ岳を 連想するのはよくわかる。七種薬師も同様に薬師岳の姿から名前をとったのかと思っていた。が、それは 思い違いで、実は山頂にある祠には薬師如来が祀ってあったのだ。大柿さんからの写真でそれがわかったのだが どうしても自分の目で確認したかった。現物を目の前にし目を皿のようにしてそのお姿を眺める。 両手で持っている薬壺がその証拠。さらに頭上に梵字が一文字ある。それは『バイ』と確認できた。 この梵字はその一文字で薬師如来を表す。
薬師如来 梵字
薬師如来像頭上にある梵字"バイ"

さらに考証を続けると薬師如来は東方浄土にいらっしゃるという。ということは、 この七種薬師を東方浄土と見立てて眺めるには、この山の西側の集落、あるいは寺が祀っているはず。 石仏の左にはかすかに『前之庄村』と判読できる。前之庄はこの山の西側、夢前川の流域にある町だ。 はたして満足できる結果に思わず頬もゆるむ。今日の最大の成果だった。小銭を置いて縦走の安全を お願いする。12時再スタート。

ここからもいくつかのピークを経ることになるが気持ち的には下山しているという楽さがある。 下りも気持ちよく下れる。次の大きなピーク(Ca.490m)手前左手に分岐がある。大柿さんが書いた プレートだが、ここから薄暗い杉植林内を下っていくと野外センター北の林道に降り立つことが できるので、いざというときに便利なエスケープルートだ。ピーク(Ca.490m)付近はルートが わかりづらいが赤布を見逃さぬように。超でかいヌタ場がある。付近の木にはイノシシのこすり跡が ある。

436.0mピークから先、すごい岩尾根が現れる。幅はあるのだが気持ち的には綱渡りの感じがする。 MTBを担いでのバランスがなんとも危うい。背の低い松の木に身体が触れると埃なのか花粉なのか もうもうと煙が立ち上る。花粉症でなくてよかった!岩尾根だけあって展望はバツグンだ。ほぼ360度で あるだけに自分がビルの屋上先端に立っているような錯覚に陥る。高所恐怖症の方にはおすすめできない。 四等三角点397.3mピークに13時52分着。ここからはシダ地獄が始まる。足元にからみついて なんともかとも・・・。どこまで続くのかと憂鬱な気分になる。

板坂集落の谷がよく見える。峠はもう間近だ。去年苦労して下山した大倉山も真っ正面。『九』と 書かれた石標を目印に左に折れる。5分ほど一気に下って板坂峠着。14時25分。両側が切り立っている 峠は細い道が東西に続いている。板坂側には石仏が数体祀られている。杉の大木が倒れていてちょっと ずれていれば石仏直撃だ。一体だけ天保八年と読みとれる。これは自分の直感だが薬師の頂上と この石仏群とは関係はなさそう。ルート的に考えても前之庄の人が参りに行くにもこの道は考えにくい。 発見はできなかったが直接薬師に登る道が過去にあったか、前述のCa.555mの分岐道が妥当のように 思う。
岩尾根 峠の地蔵
岩尾根で休憩板坂峠のお地蔵様

細い峠道はため池から舗装に変わり板坂の集落を抜ける。七種川に沿ってデポ地まで走る。 15時着。大柿さんのレポートに助けられ無事縦走が果たせた。前之庄にある寺、古老を 訪ねると七種薬師の由来に関して知ることができるかもしれません。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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