法道谷渓谷〜法道寺山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『但馬新井』をご覧いただくようお願いいたします。
2000.11. 4.  土曜日  晴れ  気温あったか
前回行者岳(ふるさと兵庫の50山)に登ってからもう2年以上になる。その時のルートは 鷲原寺からちょっと奥にある山門をくぐり抜けて岩屋観音を経由するという一般的なもの ではなく、直進で不動滝へ行き、踏み跡があったのを幸いに朝来町と生野町の境界尾根に 強引に登り、そこから行者岳へ向かった。その尾根にあったのが『県立自然公園 遊歩道』と いう古びた標識。 銀山湖方面と書かれた方向には法道谷渓谷(法道寺渓谷)がある。今回はそれを逆方向 (法道谷渓谷)から辿ってみようと思った。MTBでの山行きとなったがこれは大失敗。 必ず歩きで楽しんで欲しい。

銀山湖、生野ダムの管理事務所横にある駐車場に車を停める。9時25分スタート。ゆっくりと クランクを回す。銀山湖は今年の夏枯れからすっかり水位を回復していて釣り船も多く出ている。 ただ残念なことにこの時季になっても紅葉は盛りになっていない。すぐに法道谷渓谷の分岐になる。 ダートだが車の轍もあるくらいなのでMTBではなんら問題なし。やがて人とMTBだけが許される ほどの道幅になる。右手に小さな滝があり、その流れがそのまま道いっぱいに流れ出し、左手の 渓流に注がれる。そこをMTBで走り抜ける。最初からなにかわくわくするような出だしである。

渓流の川底はそのほとんどがフラットな岩盤のようだ。そのためか傾斜はないのに水の流れは 滑るように速い。それに反して遊歩道はガレとフラットが交互になっていて押したり乗ったり とあまりよくない。9時55分、右手に大きな滝が現れる。何mの落差があるのだろうか? この渓谷に関してはなんの情報もなかったので、思わぬ滝の出現はなんか得した気分になる。 滝から落ちた水は進行方向を横切るように流れ、そこには桁はあるのだが橋が落ちてしまっていて 流れを横断しなければ先に進めないようになっている。地形図上でちょうど実線から破線に変わる ポイントだ。川底は先ほどと同じく一枚岩で飛び石はない。 わずか数mなのでMTBで一漕ぎすれば靴も濡れずに向こう岸にわたれるようだ。ツルッとタイヤ が滑ればMTBもろとも岩盤にたたきつけられるのが予想されるが気合もろともエイッと渡りきる。
渓谷を行く 滝
渓谷を行く石仏手前の滝

向こう岸には小さな石の祠に収められた石仏があった。『安永三年(1774年) 午十月吉日』と銘がある。 思ったのだが、この法道谷渓谷を登り詰めて境界尾根を越えたところにある鷲原寺は 法道仙人の開基と聞く。そして行者岳。これから向かう法道寺山。 いずれも法道仙人に関連があるようでとても興味深い。石仏からふと目を正面に見据えると先ほどと同じように橋が落ちて流れを 渡らないと先に進めないようになっている。なにか人の進入を拒んでいるようにさえ思える。 しかしこのたびは飛び石があったので楽に越えられた。

やれやれと思うのもつかの間。こんどは道がない。数m先には橋?あるいは遊歩道の補強に使われて いたのか、鉄骨がむきだしのまま流れの中にある。鉄骨の向こうには踏み跡すら確認できなかった。 普通のハイカーならここであきらめるところだが、ちょっと引き返したところに尾根に駆け登るように 踏み跡がある。後ろでガサガサと音がするので振り返るとハイカーが一人やって来た。どうやってここまで やって来れたのか?と思ったが、足元は渓流釣り用の長靴だったので納得。でもさすがにこの流れでは長靴 でも無理っぽい。「これはどうやっても先には行けませんよ。この尾根に取り付いて迂回できるか 先に行ってみます」と私。

踏み跡をちょっと登り渓谷に視線をやると、先ほどの人が彷徨いているのが見えた。踏み跡は だんだんとその渓谷から離れ、一本東にある渓谷に入っていくようである。高度を上げていくと 右手で瀑音がする。これまた大きな滝である。そのすぐ横を登っていたようだ。登り切ると滝口に出る。 一飛びで渡れそうな対岸に踏み跡が続いている。滝が落ちるその場所で流れを渡るのはいかにも 怖いので、ちょっと奥で飛び石を利用する。MTBシューズの裏には金具があるので濡れた岩は 大の苦手なのだ。いやな予感は良く当たる。岩に足をのっけたとたんツルッと滑り、もんどり打つとは この事を言うのか!と思えるぐらい気持ちよく水面に叩きつけられる。岩で頭を打つがヘルメットで 助かる。しかし滝に向かって流されている!水量わずか20cm程、流されたと行っても1mも 無いであろうが、たった一人だったのでかなりパニくる。

対岸に駆け上がり、しばらく動悸が収まらなかったが気を取り直して先に進む。 穏やかな流れに沿って雑木の中をびしょ濡れになった下半身を引きずるように歩く。 左手首は捻挫したのか痛みがひどい。前方にさらに大きな滝が現れる。10時30分。 正直言って滝を楽しむ余裕は無くなっている。どうやってこの滝を越えるか?右手の ザレた斜面をよじ登る。ズクズクの靴で登り切り、斜面にある巾20cm程の踏み跡を 踏み外さないよう進むと行き止まり。MTBをデポして30分ほど周囲を探索する。 行き止まりと思っていたが正面の岩の絡む流れの先には道が復活するかも知れない。 いやだったが引き返すのはもっといやなのでバシャバシャと足首まで水に浸かりながら 進む。
石仏 滝
石仏足元が悪くてうまく写せなかった

思った通り踏み跡はその先にあった。滝は左で轟音を立てて落ちている。何段にも 連続して落ちるそれはトータルすると50mくらいにはなるのではないか。最上部は 大岩が二つ覆い被さるように重なり、それがさも水門のようになって水が噴き出してくる。 滝の上に這い上がるとテラスになっていて(Ca.550m)、今までの登りが嘘のようなフラットな 谷が続く。木柱が一本、『大昭和製紙(株)所有林』とある。右に左に渡渉しながら 踏み跡を辿る。

地形図で確認するとこの緩やかな流れはやがて北から東へと向きを変えて775.7mの三角点 ピーク(もっつい山)へと続いている。行けるところまで行って尾根に取り付けばいいや、と思っていたら Ca.600m左斜面伐採跡地点から踏み跡も消失。MTBを肩にかけ、その斜面を這い上がる。 苦になるほどのヤブでもなくなんとか769mピークの尾根先端に到着。12時15分。 真正面に千が峰、マタニ山と加美アルプスのあいだからは篠が峰がちょこんと頭を出している。 三国が岳、青倉山、岩屋山、粟鹿山も良く見える。 ここで12時40分まで昼食タイム。下草もあまりなくテント場にも最適。
展望
769mピークの尾根先端から眺める

ここから生野町と朝来町の境界尾根であるが、思った通り快適な道が東西に延びている。 どちらに行くにしても時間と体力が続く限りどこまでも行けるであろう。私は西方向へ 向かう。生野町側は緩やかだが朝来町側はきつい傾斜の斜面だ。道は広く左右とも雑木。 テープ、標識はこれまで一切なかった。やがて右手木立のあいだから電波反射板のある行者岳 が見え始めると三叉路に着く。13時20分。足元には朽ちた標識が(行者岳へ)とある。 このまま前進すれば岩屋観音、行者岳の分岐となりメジャーコースへ復帰できる。 左はさらに境界尾根の続きである。

境界尾根を進む。植生は右スギ植林急斜面、左雑木ゆるやか斜面となる。疲労のためか 769mピークで進路を間違える。尾根が広く広がっているため方向を取り間違えたようだ。 前方には目標の法道寺山がそびえている。 時間だけが過ぎていくが、いざとなれば岩屋観音へのメジャーコースへのエスケープも 頭をよぎる。なんとか正規ルートへ復帰して14時15分見覚えのある鞍部に着く。 そこには以前同様に『県立自然公園 遊歩道』の看板があった。(古びてはいるが 行政の手による立派なものである)

当初の予定では法道谷渓谷からこの看板へ辿り着く予定であった。それがルート消失から 大回りしてこの時間になってしまったのだ。この看板を信じてここから法道谷に下ったとしても 道は無くなるはずなので尾根を前進するしかない。ピーク手前、おそろしいほど険しい傾斜を右肩にMTB、 痛んだ左手で木を掴んで這い上がる。14時40分山頂着、点名『上生野』。標高806.5m、二等三角点。 測量用の大きな櫓が組まれていてその真下に雨風を避けるように三角点はある。 このピーク着で15時をリミットに考えていたので下山もなんとかなりそうだ。
頂上 銀山湖
法道寺山の頂上にある櫓鹿除けネットから銀山湖を見る

境界尾根を300mほど行くと南方向へ下る尾根がある。その先端には高圧送電線鉄塔があるので 確実に下山ができる。地形図にはそれより西側の谷に点線ルートがあるがどうもあやしいのでパス。 15時下山尾根分岐。意を決して下っていく。とちゅうですごい赤松林になる。 危うい誘惑(何のことか想像してください)に駆られるが振り切って前進を続ける。鹿避け ネットにぶつかる。そこからは銀山湖がきれいだ。 目標の鉄塔も間近。ようやくの思いで鉄塔に来れた。15時40分。鉄塔が落とす影も長く なっている。高電圧のためのブーンという振動音が不気味だがそれがなければ最高の展望台。 小畑山、桧和田山、高畑山のシルエットがうつくしい。

巡視路を利用して西の谷に下る。プラ階段があるものの土に覆い隠されてトレースするのが 思ったより困難だった。16時05分谷に降り立つ。すぐに林道となり銀山湖周回道路に飛び出す。 舗装路に出て安心したのかピーンと両足が攣ってしまい転倒しそうになる。 やっとの思いで駐車場に。どろどろの靴を脱いで頭から水をかぶる。沢歩きの好きな人なら なんのことはないルートだったが、その経験もなくおまけにMTBを担いでいたので最悪の 山行きでした。でも滝は最高です。ぜひ長靴はいて行ってみてください。
ルートマップ


それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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