深山トンネル

所在地:神崎郡大河内町
大河内町の水くみ場のすぐ近くです。 深山トンネルの入り口、出口にそれぞれあります。見通しの悪いところなので 駐車の際は気を付けましょう。

まずはトンネルの入り口付近にある石仏です。トンネルのどっちが入り口で出口か? 異論のあるところでしょうが、標高の低い方としましょう。 石を組み合わせて石室が作られている。 右が不動明王、左は形は違いますが水くみ場にもあった弘法大師。 銘はありませんが表面もきれいなので案外近代のものかもしれません。

どちらも赤い前掛けをしているので首から下を見ることが出来ない。めくって覗いてみたが ごくごく普通な不動と大師であった。車でトンネルを抜けてもう一ヶ所の石仏に行ってみる。

こちらも薄っぺらい石板をコの字に組み合わせてコンクリートで隙間を塗り固めている。 この石室自体は新しいものである。ここもお大師と一対をなしている。それはありふれた 舟形後背に浮き彫りの仏であったが、見慣れた地蔵とかではなかった。

赤い前掛けを取り去ってみると・・・・。馬にまたがり、左足を垂らしている。 宝冠のようなものも被っているので、最初は天部のたぐいかと思った。しかし、 六臂(六本の腕)の右手に持っている糸巻き、天秤、糸の束などから (左手の持物はなにでしょう?)これは『馬鳴(めみょう)菩薩』と判った。

馬鳴菩薩は東北で養蚕神として知られている『おしらさま』伝説から発展して出来た 仏と思われる。『おしらさま』とはこういう話である。

昔あるところに貧しき百姓あり。彼には美しい娘があった。また一匹の馬を飼っていた。 ところが娘はこの馬を愛してしまい、とうとう夫婦のちぎりまで結んでしまった。 父はこれを知るや馬を桑の木に吊り下げて殺してしまった。 娘はそれを悲しみ馬の首にすがって泣いたが、父はその首をはねてしまった。 とたんに娘はその首に乗って天へ上がってしまったという。

ある夜、父の夢枕にたった娘が『春になったら飼葉桶のなかに馬の顔をした虫が いるからその虫に桑の葉っぱを食べさせて大きくして繭を作らせなさい。  その繭で糸を作って下さい』と告げました。それがおしらさまのはじまりと いうことです。

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