はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1 『西河内』を参照していただくようお願いいたします。 2012. 5.13. 日曜日 晴れ 気温 あったか
今回のルート選択は そもそも2009年にTQFさんと赤西渓谷へ行ったときに見た案内板がきっかけとなっている。 それには赤西渓谷にある鉄山墓地跡(キャンプ場のすぐそば)から八丈川(はっちょがわ)の谷に向かって尾根越えの 道が書かれているのだ。
これはどうみても正真正銘たたら人の道である。尾根越えということは峠もあるはずなので、まずはそこまで行ってみて、 あとは尾根をたどって竹呂山に登ってみよう。 波賀町のリンゴ園から続く林道を進む。原不動滝の奥の院入り口からは未舗装となる。 やがて鉄山墓地が現れる。そうです、赤西渓谷と同じく、ここにも墓地があります。 二カ所とも、普通の農業を主体とした集落では考えられない場所で、たたらと言われれば納得できる。 ここで一旦下車。TQFさんとしばし墓石を観察する。 全部で50基以上はあるだろう。すべて見るのは不可能なので、文字のしっかりしたものだけ 見てみると天保から嘉永年間の20年間ぐらいが多かった。
宍粟に多くある鉄山はそれぞれが単独経営ではなく、同じ人たちが十年から三十年の周期で
(燃料の木炭の関係で?)移動をしていたらしい。ここはカンカケ(鍵掛)のエリアで、
滝山(大甲山)、廣地(広路川)、久保原山などを移動していたという。
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TQFさんが真言を唱える | 林道三叉路のスペースに駐車 |
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小さなコンクリートの橋を渡る。欄干にはズバリ『てつざんきょう』とある。昭和34年のものだ。 やがて林道の三叉路に到着。左へ行けばカンカケ越えで、正面をさらに進むと終点から竹呂山へ 簡単に登れる。この三叉路には数台止められるスペースがあるのでそこに駐車して9時45分スタート。 |
川を渡る | 道らしいところを見つける |
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八丈川(下流には原不動滝がある)の水量は少ないので簡単に渡れた。川向こうの斜面は植林帯。 適当な所を登っていくと道らしいところもあるのでそれを辿る。 |
砂鉄の採掘跡 | 道?あるいは・・・ |
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道らしいものはあるが、これが峠道とは思えない。一段登ったところは 異様な平坦地で波のようにうねっている感じがする。砂鉄採掘場によくある 地形だ。道だと思っていたのはカンナ流しの溝かも・・・。
現在地を地形図で確認すると819ピークへ向かっているので方向を修正。
ここにも溝なのか道なのかわからないものがあって、それを利用して前進。
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峠に着きました | 赤西側から鞍部を見る |
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前もって地形図でこの辺があやしいと思っていたところがまさに峠だった。10時20分。 大きな切り通しで尾根が分断されている。スタート地点をもうちょっと北に振っていれば ダイレクトにここに至る正規の峠道を発見できたかもしれない。
石仏などは無かったが、峠を挟んで両側とも砂鉄を摂った跡地のようだ。
生活路として集落同士を結ぶ峠だと明確に残っていることが多いが、
この峠はたたら場同士を結ぶルートとして存在していた。
したがって役目が終わると使われなくなり、人々からも忘れられたのだろう。
なんの意識もなくここに訪れたら峠とは認識できない人もいると思う。
私としては今日の山行きはここで終了してもよかった。さらに言うと赤西渓谷に降りる峠道も 確認したかった。まあ、それは次の楽しみということで、ここからは竹呂山を目指す。 しばらくほぼ平坦な尾根なので楽なのだが、そこにも溝がある。 はて?これはなんなんだろう?地形図を見て気が付いたがやはりこれはカンナ流しの水路のようだ。
水路はほぼ水平か少し登り傾斜で尾根と平行にある。その行き先を想像すると、
どうやら山腹を巻きながら最終は八丈川に繋がっているように
みえる。川の水がここを流れていたとして、このままの流れを利用しているのか、あるいはこの水路の下流にちょっとした池を作って
(実際、宍粟の空山で見たことがある)その標高差を利用して砂鉄を選鉱していたのかも。
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展望の伐採地に来た | 東方向を見る |
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尾根の左下にある水路と別れるように、一気に斜面を登って834ピークを越える。 するとそこは展望のある伐採地だった。TQFさんが言うにはここは伐採した木材を 積み出す基地跡だそうだ。ここから索道で赤西の谷に降ろしたのだろう。 昭和の30年代だと赤西谷にあった林鉄に積み込まれたことだろう。
ここでTQFさんからわらび餅をいただいて小腹を満たす。
心地よい風が吹く中、食べながら周辺の展望を楽しむ。赤西川の向こうには大きくきれいな
ピーク1106がある。谷を越えて遠くには三久安から東山、さらには暁晴山も見える。
今日は空気が澄んでいるようだ。
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ヘアーロッド?が積み上げてある | やがて雑木林となる |
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緩やかな登りが終わりに近づき、やがて980ピークへの急登りが始まる。 その手前に鹿避けネット(金属製)がクルクルと巻かれた状態で置かれてあった。 ずいぶんと古いもので未使用品だ。そこから待望の雑木林となる。
980ピークを過ぎると再度激登りが待ちかまえている。ヒーヒー言いながらクリアすると 竹呂縦走尾根に乗っかる。緑がまぶしいぐらいで、ほんとに良い季節になった(暑いけど・・・)。
山頂には12時ジャストに到着。昔、初めて来たときは三角点の周囲しかスペースが無いぐらい 笹がすごかったのが嘘のように広々としている。竹呂は展望の無い山頂なのであまり来る人も無い。 今日も我々だけで独占のようだ。食事も終えて無線も空振りで下山に掛かる。12時35分。 |
熊は確実にいる | 熊のようにタフな人もいる |
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下山路はおなじみのカンカケ峠への尾根を下る。ここも広葉樹満載の癒しの尾根だ。 特に972ピーク周辺はすばらしい。広葉樹はみごとだが、残念なことに花が無い。 そこでカンカケ峠まで行かずに途中から谷を下ってみようということに。
下りはじめは良い感じだったが、谷になるととたんに荒れ始めた。初めてのコースだと思いこんでいたが 2007年に雷雨の中を隣の支尾根で下山したことがあった。荒れた植林の谷には花は無かった。 代わりに場違いなほどでかい炭焼き窯跡などが点在していた。考えると、それはタタラ製鉄に使う木炭を 造る窯だったのかも。林道には13時45分。 |
荒れた谷だった | ここも林鉄があった? |
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降りた所は表土が流されている荒れた林道だった。 その後は車でも通行できるような路面の所もある。平均してゆるやかで、雨水を逃がす溝の所には 線路が使われていたりする。ひょっとしてここにも林鉄があったのかも。
普通の登山ならそのまま林道をおしゃべりしながら下るのだが、今日は左に流れる八丈川を見ながら下る。 正規の峠道の取り付きがどこか見つかればと思いつつ・・・。 すると林道より一段下がった、川に面する平地に不思議な構造物を発見。それは石垣で出来た2条の水路だった。 八丈川の水を左から取り入れて右に流す構造になっている。カンナ流しで得た砂鉄はそのままでは多くの砂を含んでいるので 数度に渡って流れにさらし、砂を取り除くことがされたという。ここはその行程をする場所だったのかも・・・。 下に降りてきっちりと見ればよかった・・・。 駐車ポイントには14時10分。たたらの跡地とブナの尾根を楽しめるコースでした。
今回の竹呂山の地図は
こちら(約150k)
でごらんください。 |