はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1 『上郡』を参照していただくようお願いいたします。 2010. 4.10. 土曜日 晴れ 気温あったか
先週に引き続いてM氏とMTBでの山行きを計画する。
場所はこれまた先週の山と近い上郡の西端にある無名の山です。
県境のすぐそばに安室ダムがあって、その東側には標高300mほどの山塊があり、
その稜線には高圧送電線がある。その巡視路で遊ぼうという魂胆です。
スタート地点は行頭(ゆくとう)にある船坂小学校の分校前がよさそうだ。 この分校は平成9年以降休校のままだという。その本校である船坂小学校の横を通過して 行頭へ向かったのだが、その船坂小学校も今年で廃校と後で知った。 まったくそういうふうには見えない立派な学校だったが、少子化の波はこういう 過疎の町ではより顕著なのだろうか。残念な気持ちになる。
分校前に駐車して9時25分にスタート。まずは分校を見学。平屋建てでどう見ても
10名までの生徒しか対応できないようなかわいい規模の校舎だ。
その正面には『須賀神社』という小さなお社がある。拝殿には場所柄か赤穂浪士の絵馬が
掲げられていた。
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行頭分校 | 須賀神社 |
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須賀神社の祭神は素盞嗚命(スサノオノミコト)だが、 本来は姫路の広峰神社や京都の八坂神社などと同じく牛頭天王を祀るものだったはず。 それが明治になって天王は天皇と同じ音なのはダメということで除外あるいは祭神を 素盞嗚命に改めさせられたといういきさつを持つ。 その名残を示すかのように分校の校庭脇には『寄贈 牛神様敷地14歩・・・』という石碑がある。 この牛神様という言葉からも牛頭天王がイメージできる。
ここで驚きの発見!地形図では分校の真上を高圧線が走っているはずなのにそれがない!!
つまり送電線鉄塔が撤去されているに他ならないのだ。「なんちゅうこっちゃ、国土地理院」とM氏と
ぼやく。
よくよく考えると7年前の生駒山では鉄塔は残っていたが送電線は撤去されていて、その生駒山へと
続くのが今回の送電線巡視路なのだった。ああ、無情。
まあ、なんとかなるやろとお気楽な二人は走り始める。 ダムへの登りはゆるやかで脚力の無い私には助かった。その途中、ヘアピンターン付近は公園のように なっていてまさに満開でピンク一色だった。しかも誰もいない。なんとも贅沢な場所だろうか。 M氏は来週もう一度来てみようかと言う。たぶん散っていると思うが、満開時にここを独り占めできたらなんとも贅沢だなあ。 |
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満々の水をたたえた安室ダム |
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安室ダムに到着。堰堤の向こうの道路(右岸)も通行が可能のようだが、ツツジのきれいな 左岸をそのまま走る。ダムの周辺は花もあるし、公園、キャンプ場などもある。しかも道路はフラットなので サイクリングにはうってつけだ。三叉路を右にとれば皆坂の集落が見える。 |
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ここを登っていくのだ〜(黒矢印) | 耕作地分岐『C』からは未舗装となる |
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地形図にある点線のルートは簡易舗装で一車線の道だった。その先にはいったい何が あるのだろう。とりあえず261.6mの三角点に行きたかった。左にある最初の小さな谷を よじ登ればすぐだが「こんな所行かれへんで〜」というM氏の進言で先に進む。 すぐに三叉路があって右下は耕作地。この道はそのためにあったみたいで、そこからは未舗装となる。
さらに三叉路があった(この辺はちょっと複雑かも・・・)。正面はダブルトラックだがすぐに行き止まり。
目的のコースは左下だが、三角点へ寄り道するためにMTBをその場に置いて北向けの尾根に乗る。
古い道が残っているのだが使われなくなって久しいのかヤブがきつい。
ヤブの道をパスして三角点方向へ行こうと迂回を試みる。そのヤブの向こうに
とんでもないものを発見!!
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ヤブの道の途中に石の鳥居 | 点名『皆坂』 |
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ヤブの中に突如見えたものは立派な石の鳥居だった。「Mさん、あれ、あれ!!」と声をかけて そこへ行ってみる。鳥居の額には『須賀神社』とあった。「うひゃ〜、行頭の牛神さんと同じやん」 自分たちがやってきた方向に神社はあるべきだがそれはなかった。里に下ろしたか、あるいは 廃神社になってしまったか・・・。 『明治40年5月吉日』とあるのでそんなに古くは無い鳥居だった。
コンパスで方向を確認して三角点を目指す。ヤブから突然出てきたのはテレビの共同受信施設。
そしてそこにはめちゃめちゃ良い道があった。それを行くと行き止まりの広場があって、
四等三角点と石仏があった。標高261.6m。10時40分。
石仏は地蔵菩薩の立像だった。つまりここは愛宕山ということだ。以前、同じ上郡の倉尾にも 地蔵菩薩を祀った愛宕山があった。本来愛宕の本地仏としては勝軍地蔵を祀るのが本筋だが、 なかなか勝軍地蔵を見ることはなく、普通の地蔵がほとんどのようだ。 頭の上には地蔵菩薩を表す『カ』という種字。『文政六未(1823)年 六月廿四日』とあった。 スタートからここまでずいぶんと時間がかかったが、それに見合うだけのお宝に出会うことができた。
MTBのデポ地に戻り、 左の耕作地跡へ行くのだが、これまたヤブだった。田圃はすっかり湿地化しているので うかつに足を踏み入れるわけにはいかない。ヤブであっても畦を外しては歩けない。 湿地になった田圃には大きな木が一本。いったい何十年経っているのだろう。 そもそもこんな所に田圃だなんて、明治以前の隠し田だろうか? 半袖の腕を傷だらけにしながらなんとか八保へ抜ける峠へ着いた。11時10分。 こちらはヤブだったが、向こう側は良い道が残っている。
峠から稜線を行くのかと思ったら北斜面に道があった。きっとこれが巡視路だったのだろう。 少し行くと稜線と合流する。最初のピークまでは押しがほとんどだが、そこから は気持ちよく乗れそうだ。 |
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鉄塔跡に着 | 鉄塔の足の跡 |
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すぐに広く明るい所に出た。まばらに生えた草地には四角いコンクリートの基礎が 4つあった。ここが鉄塔跡の一つだった。周囲の木々のために展望はそれほど良くないが、 下界を見るとちょうとタイミング良く山陽本線の貨物列車の通行が見えた。この付近は安室川に沿って 北向けにあった線路が急カーブで南に方向を変える絶好の撮影ポイントなのだ。 ここで11時半だったのでご飯にしたかったがM氏は次の鉄塔跡まで我慢しろと言う。 |
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谷はミスコースだよ〜Mさん | 稜線に復帰して展望のザレ場 |
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330ピーク手前で左右に分岐があった。右に折れるのが正解くさい。 ちょっとイバラがあって、それを避けながら走っていると谷に降りてしまった。 どう考えても巡視路は稜線上にあるはずなのだが、M氏は谷からも簡単に稜線に復帰できると言い張る。 しぶしぶついて行くと 予想通り谷は細く滝になり行き止まる。「あはは、あかんかったな」とM氏。 ちょっと引き返して右の稜線へMTB担いで激登り・・・。 一気にスタミナを喪失だぁ。 |
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絶好の食事場所だあ |
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展望のザレ場があったがその右奥が鉄塔跡のはず。「おお、こっちのほうがええぞ」ということで ダムが見える鉄塔跡で食事をする。12時05分。 食後のコーヒーもいただいて12時50分再スタート。 |
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ごきげんに乗れる | 作業道が来ているぞ |
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気持ちよく下っていく。と、いきなり赤土の作業道が現れる。地形図を見ると すぐ下に大きな池(高山山田池)があるので そこから伸びてきた道のようだ。斜面を削って道らしくは 見えているが、整地はまだまだで、巨大なイノシシが掘り返したような感じだ。 雨の後だとヌタヌタで歩けたもんではないだろう。 |
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巡視路は倒木だらけとなる | またもや作業道に出た |
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広く快適な稜線から離れて右方向に巻くように巡視路は続く。 倒木が現れて乗れなくなる。それらを跨ぎながらノロノロと進んでいくと、 再度作業道に出る。どうやらこの近辺は先ほどの作業道が網の目のように 張り巡らされているようだ。ここからちょっと歩いて鉄塔跡も確認完了。 たぶん巡視路はこの付近から続いているはずだが、作業道ができたために わからなくなっている。しかたなく この作業道で稜線にも復帰。
稜線へ戻るとそこからは星ヶ峰のある別荘地が見えた。いったい何戸あるのか。 おどろくほどの数だ。ゴルフ場もあるみたいだ。 これまで違い、稜線はヤブがひどくてMTBを通過させることすら困難になる。 デポしたまま点名『古畑』へ向かう。 |
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点名『古畑』 | 最後の鉄塔跡 |
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この辺はだらーっとした地形だし、おまけにヤブなので 方向感覚が狂いやすい。ここだと思ったさらに一つ先のピークに 三角点はあった。三等三角点、標高290.3m。13時40分。 周囲を見渡すがMTBで下れそうな道は無い。地形図を見て一番近い鉄塔跡へ行こうと 相談する。
さらにヤブをつききってその鉄塔跡に到着。ここでも周囲を探索して巡視路を発見。
先ほどまでのヤブで欲求不満がたまっていたが、この巡視路でしばしシングルトラックを
楽しめた。谷に降り立つ。正面には次の鉄塔跡への巡視路もあったのだが、この谷を
そのまま下ろうということになる。
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最後のシングルトラックで谷へ | ありゃ〜!! |
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いきなり断崖になってしまって降りることができない。ずるずるの斜面をMTB片手に なんとか滑り降りることができた。こういうとき、一人より二人のほうが心強い。 奇声をあげながら道路に出ると、そこは朝に通過しだれ桜の公園で、老夫婦がぽかんとした 顔で我々を見ている。「谷から変な声が聞こえたので何が降りてくるんかと思った」とおじいさん。 M氏ははずかしいから早く帰ろうと言う。確かに怪しい二人組であった。駐車ポイントには14時30分。
今回の皆坂愛宕山〜点名『古畑』の地図は
こちら(約120k)
でごらんください。 |