はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1 『千種』、『安積』を参照していただくようお願いいたします。 2009. 4.19. 日曜日 晴れ 気温暑い
先週、床尾山でニアミスした大柿さんに久しぶりに電話をする。
会話の中で「宍粟50山の深山(ふかやま)をトリガタワまで縦走したい・・・」という大柿さんの
希望を聞く。「じゃあ、秋にでもご一緒しましょう・・・」と別れたが、自分で考えるうちに早急に歩きたくなってしまい、
いろいろとコースを考えたあげく、19日に登りましょうと約束を取り付ける。。
大国牧場から深山までを往復したことがあるが、 同じコースでトリガタワまでは距離もあるし、最大の難所?である トリガタワ手前は砂鉄採集場所で迷って時間をロスしてしまいそうだ。 ここは岩上神社からのショートコースであっさりと深山へ登りたい。ところがここからだといよいよ周回が 難しくなる。OAPさんに相談するとおもしろいコースを教えてもらった。 千種町岩野辺から山崎町今宿を結ぶ県道429(現在では岩野辺山崎線という 名称となっている)で岩上神社まで戻ろうというものだった。実は現在の地形図ではこの県道は消えてしまっているが OAPさん自身25年前にはここを歩いている。古い記憶をたどって謎の県道を歩くなんておもしろそうだ。 ルートはこれで決定したのでOAPさん、TQFさん、大柿さんとそのお連れのBさんの5人で チャレンジすることに。
山崎から3台の車で岩上神社へ向かうが『宍粟市さつきマラソン』当日で、マラソンのスタート地点を通過するのに手間取る。
岩上神社(夫婦杉などの巨杉群とか磐座など見どころ多いが、時間の関係で泣く泣くパス)を過ぎて
未舗装の林道となる。古い地形図には記載のある県道429の分岐だが、車中から確認する限りでは
とても歩けるような感じではなかったがはたしてどうだろう。その先にあるスペースに3台止める。9時10分。
林道を進む。深山だけ登るのならもっと奥の林道終点付近までは車で行ける。 「以前より路面がきれいになってる」とOAPさん。最初は南に向かって歩くが 851のピークを中心として半円を描くように林道はやがて北に方向を変える。 林道の終点は広場になっているが車は入れないようにロープが張られている。
終点とは言うものの林業作業道が左方向に続いている。後ほどわかるのだが、この作業道は蔦路峠まで続いているようだ。
ここからはいよいよ山道となるが、うるさいほどあるとてもありがたーいマーキングが迷うことなく山頂へ我々を導いてくれる。
深山と916の間にある鞍部からゆるやかに上り詰めると三等三角点のある深山(ふかやま) 907.7mだ。10時15分。一昨年に来たときよりも三角点周辺は整地されている感があるが ここでの展望は望めないのでこの先にある展望地へ移動する。
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季節が違うと見え方も違うね |
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展望地で小憩をする。ここからは宍粟の名だたるピークが欲しいままだ。 立ち位置を変えると一山、阿舎利も望める好展望地だが、惜しむらくは 大甲山の山腹にある林道(何の利用価値がある?)が割腹の刀傷のようにように真一文字に ある。登山が好きだという?県政のトップが馬鹿だからこういう林道が増えるのだろう。10時40分再スタート。
鞍部への急下りが待ちかまえている。難所かと思いきや風倒木でほとんど立木がなく、尾根を覆っているシダ植物は すべて枯れているので、足にまとわりつくヤブも皆無なので支障なく歩けます。 駆け下りるようにして鞍部に着。石仏等は無かったが『蔦路峠』というプレートが掛かっていた。 ここは波賀町斉木と山崎町蔦沢を結ぶ峠だが峠自身には名前は無く、斉木から見て、蔦沢への道ということで 古くは『蔦路(つたみち)』と呼ばれていたそうだ(TQFさんのお父さん談)。 したがってこのプレートの峠名は誰かの勝手な創作か、あるいは、斉木にはツタジという字があることから 斉木ではこの呼び名があるのかもしれない。
峠の南側には登山口の広場から来ていると思われる作業道があり、それはこれから登る斜面にジグザグと
登って終点となっている。一昨年には無かった作業道で一帯の樹木は伐採されて地肌が露出している
(上のパノラマ写真参照)。
ここから一気に100mほどの登り返しがあるので、その作業道を行くと楽だと思ったが
太陽に照りがきついので結局は植林の中を登っていく。
不思議な道がある。古い道のようで、浅くUの字に掘られていて所によっては幅も相当広い。 地図の『E』地点には広い平坦地があり、道を挟んだ反対側には水の湧いている箇所も見えた。 「ひょっとして木地師か誰かが活動していたんちゃうやろか?」そんな想像もおかしくない 不思議な場所だ。 千種町、波賀町、山崎町の3町境界に立つ。11時25分。ここから北に進路を変える。 ついさっき100mほど登ったと思ったらこんどは100mほど下って728の鞍部へ降りなくてはならない。 なんとも理不尽な感じだ。お腹も減ってきたし〜。 深山の登りでは遅れていたBさんがいつのまにか前の方を歩いている。やはり私が一番スタミナが無いようだ。 728の鞍部は植林が立ち混んでいるがそうとうに広い鞍部だ。しかも砂鉄を採取したと思われる 特徴的な地形である。ここで食事は適当でないし、トリガタワまでは遠い。 途中にある点名『流田』へ寄ってみよう。
先ほどまでの暗い植林がウソのように明るい雑木尾根だった。大柿さんも感嘆の声を上げている。 四等三角点、標高731mの点名『流田』には11時55分。三角点よりちょっと離れたところで 食事をする。周囲は赤松の林で南には深山、東には東山が見えている。 |
不思議な地形が続く | 『I』地点の峠 |
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12時25分再スタート。暗い植林帯まで戻るのではなく、その途中から町界尾根がある。
地形図とコンパスだけではちょっとむずかしい分岐だ。なんとかその境界を探り当てて進んでいく。
その先には予想していた通りの砂鉄露天掘り地帯に遭遇する。尾根がすぱっと切り取られたように
なっていたり、妙になだらかな扇状地のような所もある。こういうのを小奴可地形というらしい。
どこを歩けば良いのかまったくわからない箇所もあれば、しっかりした道の所もある。 数メートル先には何があるのかわからない、ワクワクするような所だ。 『I』地点にある峠に着くとそのワクワクするような驚きのものがあった。 |
そこには謎の水路が | 今も砂鉄が・・・ |
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先ほどと同じような砂鉄の露天掘りの地形だが、大きく曲がりくねった水路があるではないか。
それは水路跡ではなく現役の水路だった。現在は農業用の水路として利用されているのだろうが、
どうみてもそれは鉄穴(かんな)流しの水路だ。流れている水はきれいで底には砂鉄も見えている。
大柿さんはその水がどこから流れているのか探り当てたいようだ。
小憩をしていよいよ帰路につく。トリガタワから 1kmほど千種側に国道429を下るとゴルフ場への分岐となる。 ここから県道429が始まるのだ。同じ429つながりなのは何かの因縁すら感ずにはいられない。 さらに100mほどで左に折れるのだが、そこにはちゃんと『県道429』の標識がある。 民家が数軒あってそれを過ぎると鍵の掛かっていないゲートがある。そこからは谷沿いの林道となるので 先ほどまでの暑い舗装路歩きとはおさらばだ。林道は谷沿いから離れ始めるのでちょっと不安になるが、その先に 分岐があってそれを右に曲がれば林道は終点となり山道となる。大柿さんが「鉄滓が落ちてる」と言う。 見るとたくさんの鉄滓があった。
そんな峠に石仏は無いものかと 周囲を眺めると、一体の大師像が倒木が被さるようにしてあった。その倒木を取り去ってよくよく見ると 頭部は消失しており台座に銘などは確認できなかった。
古道はやがて鹿避けネットのむこうに消えてしまうが、そのネットに沿って 下っていくと再度復活する。古い地形図の点線とは違うルートになってしまうが 踏み跡に従って下っていくと奇跡的に駐車ポイントに降りいた。14時45分。
単純に深山だけ登るのではなく、途中にある砂鉄採取場所、鉄穴(かんな)流し、
謎の県道、石仏のあるタワ・・・・。
見どころ、話題、興味満載のまさに大人の登山と言える今回の山行きでした。
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