久斗山〜蓮台山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『余部』を参照していただくようお願いいたします。

2008. 6.15.  日曜日  曇り  気温涼しい
もう10年以上前から登ってみたい山のリストに挙げていたし、地元の人からも 地図とか情報を郵便で送ってもらっていたりしていたのになかなか実行出来ずにいました。 (一度、桃観峠から登ろうとしたことがあったのですが、雨で撤退・・・) 今回M氏から「山頂から余部の鉄橋が見えるかなあ」というおもしろい提案もあったし、 ヤマケイの分県ガイドの兵庫県版にも記載されていたので それらを参考に登ってみることにしました。

久斗の山塊には三つのピークがあり、北から蓮台山(標高628m、三角点無し)、カサハ久斗山 (地形図ではここが久斗山とある。標高650m、三角点無し)、久斗山(標高670.9m、二等三角点、点名『久斗山』) とある。どう登るか思案する前にまずは余部の鉄橋を観るべし。 明治45年に造られた鉄橋が平成23年には コンクリート製に架け替えられるという。すでにその工事も始まっているようでした。 帰省の時に何度も通過しているので知っているが、下から見るのと違い、実際はすごい 高度感がある。8時40分。
余部の鉄橋を仰ぎ見る

国道からアセビ谷へ入る。地形図を見ると谷の入り口に温泉マークがあるが、 現在は空き地で建物はない。古い地図には「余部温泉」と書かれているので 温泉宿でもあったのだろうか?

林道は未舗装で途中にいくつかある小さな橋は流れ橋のようになって段差があるため、 普通車では底を打ってしまい通行は困難だ。さいわいM氏のは車高の高い四駆なので 事なきを得る。アセビ谷甌穴公園の広場には9時05分。
林道が分岐するアセビ谷甌穴公園前広場

三山をぐるーっと大回りに周回するルートもあるのだが、帰路に国道とこの林道とを歩かなければならない。 それがめんどくさいのでこの公園から始まるカサハ中央尾根で登ってみよう。準備をしていると薙刀のような 長い柄の鎌を持った単独男性が林道奥へ向かっていく。そこには蓮台山への登り口があって、我々はそこを下山の ルートに設定しています。途中でその男性と出会うかも・・・。
『い』から登り口発見できず『ろ』からも無いようだ

ここから『い』の方向、目と鼻の先にベンチと滝が見えている。その周辺に登り口があるはずなのだが 見つかりません。ならば『ろ』に道があるので、そちらへ行ってみると 二段になった滝の中程にある大きな甌穴で終点になっていた。なんとか向こうの尾根に取り付きたいのだが 行けそうにない。かといって滝の横を登るのも滑りそうでいやだ。

しかたなく堰堤へ向かっている林道で滝の上部へ行ってみる。こいつが正解だった。 林道は堰堤下で終点になっているので、川に下りて(水は少ない)滝に向かって 10mほど下る要領で対岸に渡るとあっさりと尾根に乗れた。
シャクナゲだらけささゆりもあった

尾根にはちゃんと踏み跡があり、上にはもちろんだが、ちゃんと下にも続いていた。 いったいどこに登り口があったのだろう?まあ、無事に乗れたのだから良しとするか!

地形図の等高線でわかったいたが、とにかく急登りの連続で息つく暇もない。 一気に全身汗まみれでポタポタと滴が垂れる。 と、気が付くと周囲はシャクナゲだらけではないか。「咲いている時に 登りたかったなあ」とM氏。イワウチワの 葉っぱも多い。そのうちささゆりも現れた。なかなか良い尾根ではないか。
途中にはロープもしゃくなげジャングル

さらに傾斜の急な所にはトラロープもあった。登りには不必要だが、下りには ありがたい。あいかわらずシャクナゲは多く、結局頂上近くまでずーっと シャクナゲが続いていた。ひょっとして兵庫でも随一と言っていいほどの群生では ないだろうか。いよいよ春に登りたくなる。

分県ガイドには頂上直下には道もなく岩場にロープがあると書かれていたが、 岩場と言えるような箇所もなかったし、ロープは先ほどの急斜面にあっただけ、 踏み跡もちゃんと頂上まである。つまりこの中央尾根に関してはガイド本の記述は まったく間違っていると言っていい。たぶんガイド本の著者はこの尾根は (あるいはこの山)歩いてなくて誰かからの情報で書いたのだろう。
カサハ久斗山ハイカーに出会う

カサハ久斗山には10時40分。周囲は雑木で展望はない。それまでは無かったが 笹が地面を隠している。ここから西に向かえば蓮台山だが、まずは三角点久斗山へ向かう。 途中でビューポイントと書かれた標識がある。この山に似合わないビールを入れる真っ赤なコンテナが 踏み台代わりに置いてある。ここからは三川山〜扇の山が見えるのだが、 霞のために墨絵のようなシルエットだけだった。

鞍部近くで正面の三角点久斗山からやってきたハイカーに出会う。親子3人で登ってこられたそうだ。結構年配のご両親だが しっかりした足取りで、しかも我々が利用しなかったロングの周回コースを歩いているという。 余部の鉄橋がよく見えるのはそのコースだと聞いて落胆するM氏と私。
ブナが出てきたよねじれ過ぎてる!

鞍部を過ぎて三角点久斗山への登りが続く。踏み跡はしっかりしている。 やがてブナが目立つようになってきて気分はたいへんよろしい。 まっすぐに伸びたものもあれば、同行のM氏の性格のようにねじれにねじれているものもある。
頂上手前で見えました

鉄橋は見えないなあと思っていると、頂上の数十m手前のところで 木々の間から見えました。完璧なアングルとは言えませんが予定通りに 見えたということで二人とも満足。「プワーン」と警笛が聞こえた。見るとちょうど鉄橋を列車が通過していた。 ああ、もっと倍率のあるカメラで撮りたかったなあ。『写鉄』が趣味の人なら時刻表も携帯しているんだろうな。

三角点久斗山には11時20分着。ちょっと早いがここで食事とする。 ブナに出会って、鉄橋も見えて、満足のまま山頂に立ったものの、 ここにはいろんな人工物があって興ざめだった。 それは真っ赤な郵便受け、木に打ち込まれた山頂標、赤い布きれ、いす・・・。
三角点久斗山(矢印が三角点)さーて蓮台へ向かうぞい

実はカサハ中央尾根にも赤いテープやら、木にぶら下げられた道標やら、うるさいほどに あって、少々気分が悪かった。それらと(先ほどの赤いプラコンテナも)、この山頂にある人工物のすべてには 『KUYS』と書かれている。『KUYS』にとってはこの山は地元の山なのでこういった ゴミを運び上げているのだろう。

過去、このグループが兵庫の山々の山頂に山頂標を取り付けているのをよく見ることがあった。 そのすべては生木に釘やねじなどで直接打ち付けているものばかり。中には地元の人が信仰している 山頂の小さな社の柱にもねじ止めしていたりする。とんでもない奴です。 きっと山が好きなのではなく単に自己顕示が強いだけなのでしょう。

登りではあれだけ汗をかいたのに山頂は寒いぐらい。温かい食事を用意して 正解だった。だめもとで無線をつけると三久安山のOAPさんと繋がる。 ゆっくり話をしたかったが、M氏はさっさと食事を終え、コーヒーの準備をしている。
笹とブナは似合います風が涼しいです

12時10分山頂を離れる。カサハ久斗山へピストンで戻るのだが、その途中の 鞍部付近でまた単独男性とすれ違う。けっこうハイカーが出入りしているのにびっくり。 カサハには12時35分。ここからゆるやかな下りが続く。 周囲は笹原にブナ。単独で歩いたなら静かすぎて鈴の音だけが聞こえる世界だ。

前方に草刈りおじさんと再会。あの長い鎌で笹をバサバサと刈っていた。 たぶん『KUYS』の関係者だろう。 せっかく自然が多く野性味たっぷりの山が、整備と称して徐々に俗化して、 赤テープ、プラ標識のゴミまみれ。 播州でいうところの○○山のようにつまらない山になっていくのだろうか。
620m手前からも見えた

どっちの唇がセクシー?蓮台山

単に下山のためのルートと思っていたが、蓮台までのこの尾根もブナが多くて 目の保養をされてもらった。そして蓮台山には13時20分着。 予想はしていたものの、ここにもとんでもないものが設置されていた。 それは昔、駅などにあった伝言板のようなもの。油性ペンがぶらさがっていて コメントを書くように促している。

山頂は広くてなだらかだ。境界に沿って下ると桃観峠、北に下ると予定のルート。 その下山口近くに石碑があった。それには『八幡神社元屋敷』とある。 帰ってネットで調べてみると、昔はここに八幡神社(八幡神社のざんざか踊りで有名)があったらしい。 それが応永21年(1414)8月に麓の久谷に移されたという。とんでもなく歴史のある山だったようです。 広く平坦な山頂の意味もこれで納得できるが、どうしてこんな山奥に神社があったのだろうか? そしてその参道はどこからあったのだろう?興味は尽きない。
バカみたい!これすごい!

おちゃらけの掲示板を設置するぐらいなら、こういった歴史のある石碑の解説でも 書いている方が何倍も意義があると思うのだが・・・。 これまでのあまりに幼稚な『KUYS』の所行を見るとそれは無理というものか。
おおかみ岩おおかみの巣穴

13時25分下山開始。下り初めて5〜6分で正面にとんでもなくでかい岩が出現する。 おおかみ岩と言うらしい。 この方向から見るとおにぎり形で尾根のど真ん中を通せんぼするようにある。 左横を通過して裏に出て驚いた。洞窟(といっても、大岩が乗っかって穴を形成している)が あったのだ。おおかみも留守のようなのでちょっと入ってみる。
この先から激下りが始まる林道着

この先から主尾根を離れて右の支尾根を下ることになる。普通に下っていけば 迷わずにそのルートに乗るのだが、その分岐でメインの尾根を見ると 笹に覆われて踏み跡こそ見えないものの、なんとか下って行けそうな感じだ。 実はここを下ることが出来ると余部の駅にダイレクトに下りられるはず。

尾滝尾根コースも登りのときに使った中央尾根と同様にとんでもない激斜面だった。 ただここにはシャクナゲも少なく、足元に注意しながら黙々と下るのみ。所々で中央尾根が見えるのだが、 春だったらピンクに染まったすばらしい尾根だろう。

下りもかかわらず汗が出る。途中で小憩してリュックからシャーベットを取り出し食べる。 14時40分林道に着。車に戻り汗びっしょりの服を着替えて帰路につく。

今回の久斗山〜蓮台山の地図は こちら(約165k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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