氷ノ山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『氷ノ山』を参照していただくようお願いいたします。

2007. 5.27.  日曜日  ガス&黄砂  気温うすら寒い
氷ノ山にはいくつかのルートがあります。最短で登れる大段が平からのコース。 MTBには最高の坂の谷コース。馬蹄形に大きく周回出来るブン回しコース・・・等々。 そのなかで鳥取からある仙谷コースはまだ歩いたことがありません。 OAPさんが言うには花もブナもたくさんあるコースらしい。 春の花のシーズンも終わりかけていますのでなんとか間に合えば良いのですが・・・。

若桜スキー場の近くにある『響きの森』という施設の駐車場を集合場所にする。 たぬきさん達はすでに到着しているようで、我々(OAPさん、TQFさん、やまあその三人)が 最後の到着のようです。運転席から集まっている人たちを数えてみると・・・なんと8名もの 大所帯になってます。9時30分スタート。

スキー場へ戻るような感じで『峠茶屋』を過ぎるとそこが仙谷コースの旧入口。 ちなみに新入口はもうちょっと先にあるゲレンデから直接登るらしい。 私はこのコースはもちろん初めてだがOAPさんが熟知しているので 後ろをついていく。
仙谷コース入口ゲレンデに出ました

仙谷コースの大きな案内図が目印です。それによると頂上まで2.4kmとなっていました。 (たいした距離ではないなとタカをくくっていましたが実際は等高線が狭い分なかなかきついです) 暗い植林帯からすぐに明るいゲレンデに出る。ゲレンデにも道標としっかりとした 道があるので、どこへ向かえばよいか?などと迷うことはない。

すぐに植林帯に入る。入ったところにお花畑があるのだが、葉っぱばかりでまったく咲いていなかった。 しばらくすると目当てのサンカヨウがあったが花は落ちて実になっていた。やはり遅かったのかなあ。 他にもタチカメバソウ、ホウチャクソウなどは咲いていた。
コース沿いにある大木まっすぐに延びたブナ

じっとしていると涼しい道なのだが登るにつれて汗がほとばしり出てくる。 左手下は沢、右手は植林だが、その奥には早くもブナが現れる。 やがてワサビ谷コース(自然探索路)との分岐になる。ここは正面を行く。 この辺からブナ、ミズナラなどの大木が次々と出てきてそのすばらしさに圧倒される。

一輪草がまさしく一輪だけ咲いていた。それをきっかけに二輪草のお花畑が 現れる。その横手には咲き残っていたサンカヨウがあった。周囲にある葉っぱからして すべてが咲いていたらすごいだろうと想像する。こりゃ来年も来ないとあかんなあ。
谷を行く鎖場

沢のど真ん中を歩く。増水してたらどうなるんやろ。水量こそ少ないが左横には滝もある。 足を滑らさないように進む。鎖場があってそれをクリアーすると二箇所目のサンカヨウの お花畑が出現。11時にならんとしており小腹も減ったし喉も渇きました。 その先で小憩を提案。

たぬきさんからおやつを頂いて小腹を満たす。OAPさんは湧き水を汲んでいるが、 場所柄いかにもおいしそうだ。汗も引いていよいよ最後も激登りに備える。 2度目の鎖場もたいしたことはない。そこを過ぎると水音が涼しかった沢ともお別れだ。 よじ登るようにして到着した枝尾根の先端には 丸太椅子のある展望所があって、そこからはスキー場のゲレンデが見下ろせます。 そして足元には小さめのイワカガミ。
ここを登りきれば稜線だ周囲は笹とブナ

この斜面を登り切れば稜線だ。周囲は笹の海で、その水面からは新緑のブナ達が スクッと立ち上がっている。それらはまだ若くて勢いもあり、これからが 楽しみな林だった。新緑のまぶしい木漏れ日の中、まもなく稜線という時、 その稜線方向から元気の良い子供達の声が聞こえてきた。それに応えて 大声を張り上げるのは我々中年ハイカー達。

11時40分稜線着。ベンチでみんながやってくるのを待つ。先ほどの元気の良い声の主達は 鉢伏高原からやってきた野外活動の小学生達だ。次々と我々の前を通過していく。 その方向を見るとこれから登る甑(こしき)岩がそびえ立ち、今まさにそこを通過途中の ハイカーも見て取れた。 (仙谷ルートの入口にあった鳥取県の案内板には古敷岩と書かれていました)
小学生は左の巻き道、我々はこしき岩へ気いつけて登ってや

甑岩分岐から正面の斜面に取り付く。小学生達は左の巻き道を行くが、中には間違って 我々の後を着いてくる子供もいる。もちろん危険なのでお引き取りを願う。 OAPさんが言うには、巻き道が無かった頃はここを通過するのがコースだったらしい。 まさによじ登るという形容がぴったりの甑ルートだ。
絶景なり、甑(こしき)岩

岩の上は狭くて危なっかしい所ではないかと想像していたのだが、実際は 広くて高所に弱い人も安心して展望の楽しめるポイントだった。 惜しむらくは黄砂とガスで遠望が効かなかったことか。 氷ノ越からやってくるハイカーが小さく見えます。しかし、じっとしていると寒いなあ・・・。
木道完備の頂上直下

甑岩周辺にはまだ色鮮やかなイワカガミが咲いていました。激登りだった甑岩だが、 その先への巻き道へはあっけなく合流できました。どこから出てきたんやこのオヤジは? というような表情の小学生達。頂上の直下の道は土が流されて歩きにくかったのだが、 木道が整備されていた。自然のままの登山道であるのが一番だが、現状の荒れ方をみると この木道が正解なのかもしれません。

頂上には12時07分。一般のハイカーは少なく、さきほどの小学生達が占領状態だ。 じっとしていると寒いので避難小屋を覗いてみると空いていたので利用させていただく。 我々が入ったので一気ににぎやかになる。

食後、たぬきさんとBHNさんは無線をするのに外へ出て行く。 我々は中でうだうだ話。すると中学生の3人が「中に入っていいですかあ?」とやって来た。 物怖じしない子供達でおじさん達と会話してくれる。 たぶん嫌々登ってきたのだろうが、これをきっかけに将来山好きになってくれればいいが・・・。
頂上は小学生達、むこうは中学生

13時下山開始。もと来たルートを戻る。甑岩は巻き道ルートでパス。 仙谷分岐を過ぎて赤倉山を見ながらさらに下る。 しばらくは1〜2mほどの岩場をドロップオフするような箇所もいくつかあるが 、やがてブナとチシマ笹の生い茂る広い尾根となる。
氷の越手前もブナ多し氷ノ越に到着

「ええスズコがありそうやなあ」と笹藪を覗き込んでいると、その奥でガサゴソと音がする。 黒っぽい塊が動いているようにも見えた。それって熊?? 普通なら逃げそうなものだが、みんな一斉にカメラを藪に突っ込んでシャッターを押しています (もちろん何にも写ってませんが・・・)。氷ノ越には13時53分着。
石仏

氷ノ越は鳥取の若桜と兵庫の関宮を結ぶ峠です。 ここには石仏が安置されています。自然石の表面を舟形に彫りくぼめ、その中に地蔵菩薩立像が 肉彫りされています。キリッと切れ上がった眼が特徴的。両手で抱くように錫杖を抱えています。 石の下部に彫られている『皆原村』は鳥取八東町にある村の名前。中央には『先達半平』左には『ゐ一切』とある。

実はこの氷ノ越は伊勢参りの道として利用されていたという。皆原村の半平さんはその先達。 『ゐ一切』が先達に掛かる文字ならば私は一切を取り仕切るリーダーなのだ! という自負もうかがわれる。この半平さんはこの石仏以外にも数体の石仏を 県内(鳥取)の伊勢道上に寄進しているという。

そもそもなぜこの道を使って伊勢参りをするか疑問だったのだが、鳥取在住のブンタさんから 私の掲示板に書き込んでもらった文章を引用すると『因幡誌の作者安部恭庵は 俗にいう。天照太神宮征西の時、此山を通り玉う。・・・・・今に及んで諸国の人民、 此山を越ゆるを伊勢詣の本道とす。』とある。 その昔(神世の時代)天照大神は白兎の案内によりこの峠を越えたという。 (白兎を祀る因幡堂がここにあったという。さらにその当時は現在の赤倉山が氷ノ山、 現在の氷ノ山は須賀ノ山と呼ばれていた。その須賀ノ山は天照の弟であるスサノオが降臨して 須賀の宮権現がありました。これも何かの関連があるのかな?)

人々は 天照大神の足跡を自らも忠実にたどるためにこの峠を越えて伊勢へ参ったのだろう。 その伊勢も現在の三重県の伊勢と言う人もあれば、京都府にある元伊勢だったと言う人もいる。 実はその両方ともが正解だったらしく、先ほど文章の続きを紹介すると 『そう謂えば予の母親なども、若い時伊勢参りしたのに、 先ず用瀬から若桜に出て、氷の山を越えて、但馬、丹波に出て、もと伊勢に参拝し、 天の橋立を見て京に出て、伊勢参宮をすませて帰ってきたと謂っていた。』 そのほとんどは元伊勢だったと思うのだが、両方参拝した強者もいたようです。
氷ノ越ルート(伊勢道)展望台から駐車ポイントを見る(矢印)

中学生達が追いついてきて氷ノ越はにわかににぎやかになってきました。 我々は鳥取側に下山します。明確な道でここにもサンカヨウがたくさんありました。 所々、路面が石畳状になっており伊勢道としての風情が残されているようです。 さらに下ると砕石が敷き詰められた遊歩道になり風情は木っ端みじん?

峠から1km下ると分岐があった。どちらも麓のキャンプ場に下りるのだが、左は展望所経由になってるらしい。 OAPさんがそちらへ向かってドンドン行くので、みんなも引きずられるようにそちらへ。 せっかく下り一辺倒だったのに、そっちは登り道でつら〜い。しかも誰も利用していないのか道の 状態はよろしくありません。それでも展望台へ着くとその開放感に思わず歓声があがる。14時40分。

我々の車を駐車している『響きの森』もよく見える。 伐採地をジグザグに下りきるとキャンプ場。そこから少し舗装路を下ると 駐車場だ。15時10分。今回の仙谷コースから氷ノ越コースは ショートコースだと思っていたが、なかなかの歩き応えがあった。 残念ながらちょっと春の花は時期を終えていたが、夏の花も楽しめるらしい。

今回の氷ノ山の地図は こちら(約75k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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