東山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『岩屋堂』を参照していただくようお願いいたします。

2006. 3.26.  日曜日  曇り  気温ふつう
先週に引き続き、雪を求めてさらに北上をします。鳥取県の青ヶ丸を登るべく若桜町の 広留のだいこん畑を目指します。もしここまで除雪されていないようなら 八東町のふるさとの森へ方向を転じて扇ノ山へ登るという二本立ての計画で出発。 舗装の林道は車一台の幅だけ通れる幅に除雪されている。こりゃ、行けるなあと、広留への橋を渡ると なんと重機が通せんぼしていた。除雪はされているようだが別の道路工事の名目で塞がれているようだった。

しかたなくバックで橋へ戻りふるさとの森へ向かおうとすると、なんとここも雪の壁(つまり 除雪されていない)が通せんぼ。う〜ん、ふるさとの森から扇ノ山登山口までもけっこう遠い (2.2km)のに、ここから歩いて行くとどれぐらいかかるんやろ? なんか急に気力が失せてしまう。(家に帰って調べると、この橋から登山口までは5kmあった)

実は同時刻、たぬきさん夫婦も上山高原から扇ノ山を登ろうとしてドライブしていたが、 海上の集落で除雪が途切れていたのであきらめてUターンしていたようだ。 私もUターンするが、せっかくここまで来たのだから秘境東山(とうせん)へのルートを 探ってみることに計画変更!!

糸白見の集落からある糸白見林道を行く。林道の奥には雪が残っているので耕作地の外れで駐車をする。 8時50分スタート。路面の雪はザクザクでツボ足だと深く潜ってしまう。仕方なくスノーシューを 履くが、雪の無い所もあるので何度も脱いだり履いたりを繰り返す。 しばらくして見覚えのある小屋が見えてくる。それは鳥取大学ワンゲル部の『旅鳥小屋』だ。 見覚えがあると言うのは、10年以上前にMTBでこの林道を終点まで走ったことがあるからである。
鳥大ワンゲルの小屋橋を渡って枝尾根を登る

その時はもうちょっときれいな小屋だったと思うが今では廃小屋状態だった。 ドアへの階段も崩れているし、壁板は無いところもあるし、窓は無くなっているし・・・、 中を覗くのも気味悪いのでそのまま素通りする。

橋のある分岐に着く。9時30分。私の考えたルートはこのまま林道を詰めるのではなく、この橋を渡った 所から東山へダイレクトに繋がっている枝尾根を登っていくものです。 なにも考えなくても良い単純明快なルートです。さっそく尾根へ取り付きます。 気合いを入れて登り始めたとたん!!いきなり地形図に無い作業道へ出てしまいました。
少しだけ作業道を歩いてみるかわいそうなミズナラ

気勢を削がれた気分だが、 試しにこの作業道をしばらく歩いてみる。ほとんど上っていかないので枝尾根から どんどんと離れていくことになる。これはいかんと、左の植林斜面をよじ登って 枝尾根に乗っかる。斜面は植林帯だったが、ようようたどり着いた枝尾根はミズナラ主体の雑木林だった。 期待していなかっただけにこれはうれしかった。しかし、よく観察すると・・・・。

植林帯の縁にあるミズナラやブナは一様に幹に大きな傷が付けられている。 ミズナラが大きく枝を張ってしまうと日を遮られてしまい、植林の成長が妨げられてしまう。 そこで隣接しているこれら雑木が邪魔になることになる。切り倒してしまうのは手間が掛かる。 そこで幹の周囲だけをはぎ取って自然に枯れて倒れるように仕組んでいるのです。
雪の残った雑木の林が広がる

植林がされていない頃はたぶんこの辺り全域がブナなミズナラの林だったのでしょう。 生活の為とは言え自然林が少なくなるのは悲しいことです。近くで冬眠していた熊も 這い出してきて私と同意見だと申しております。 林の中の根明けはずいぶんと大きくなっていて、雪も緩くて登りにくい。地形図で 見るよりも傾斜も急でよじ登るような雪斜面の所もある。 汗にまみれながら左手を見ると、その斜面は人工的にも見える段々だったが、こちらも雑木が広がり気持ちよさそうだ。

この後、かなり急な斜面を登っていくことになる。ここをピストンで下るのは いやだなあという思いが強くなってくる。それとともに山頂までは到底無理ではないかと いう気持ちも湧き出てくる。まあ、ルート探索という名目ですからそれでもええんですけど・・・。 急登りをクリアーすると雪庇の細い尾根となり、 左方向に氷ノ山が見えてくる。そして向かう方向には山腹を巻く林道も見えてくる。
山腹を巻く林道が見えてきました

あの林道の分岐で橋を渡らずにまっすぐ進んでいくと、正面に見えている林道に繋がっているという寸法です。 それをショートカットで合流しようという訳ですが、そう易々とはいかないようです。 でも、このルートは笹もないので無雪時であってもミズナラ、ブナを愛でながら問題なく林道までは登れそうです。
梯子の向こうに氷ノ山カーブミラーが見えた

ここのブナは若くて勢いがある。これからどれだけ生きていくのだろうか? 植林の犠牲にならないように願うのみである。アゴをあげ、上に視線を向けるとオレンジの服を着た人が見えて 一瞬ドキッとする。あんな所にハイカーがいるのか?? よく見ると林道のカーブミラーだった。よし、もうひと登り。 両足はスノーシューだが、両手にもアイゼンが欲しい。それぐらい急な斜面だ。
ようやく林道に・・・・
林道から東を見る。(黄色のルートで登った)

滑落もなく11時05分林道に着。ここで考える。ここは橋と山頂とのちょうど中間点になる。 傾斜も距離も前半と同じぐらいあるが、橋から1時間半ほどかかったので、山頂までもそれぐらい( あるいは、スタミナ切れでもうちょっと)かかるはず。天気は徐々に悪くなりそう。 お昼ご飯も食べていなくて腹ぺこ。 それらを考慮してここで終わりにすることに決定。

ここから続きの枝尾根にはなんとか取り付けそうなので未練は残ります。 でも無理するとろくなことはないと自分に言い聞かせる。しかし、 せっかくここまで来たのですから展望だけは楽しみます。氷ノ山から扇ノ山までの県境尾根が一目で 見えます。さらに三の丸から派生する枝尾根の先端にある高山というピークの下には ガードレールのある立派な林道が見えてます。その北には水力発電に使われている導水管も見えてます。 冬は邪魔な物が雪に隠れるのでいろんな発見があります。
山頂は近くに見えるのだが・・・林道は

登ってきた枝尾根はあまり快適とは言えなかったので、帰路はこの林道で帰ろうかと思う。 雪のたっぷりある林道をテクテクと歩き始めるが、途中からとんでもない光景が目の前に広がる。 予感はしていたのだが、林道全体に雪が積もり、それが谷への逆落としの斜面となっていた。 冬の林道はえてしてこういう状態になるのだが、ここはスノーシューでクリアーする。

慎重に歩を進める。右下を見るとまったく遮るものがない。もし足を滑らすと数十mは 気持ちよく?滑落しそうだ。 そんな斜面を三箇所ほど通り過ぎる。これぐらいならなんとかOKなのだが、この先も ずっと続くのだろうか?ふと、遥か先の林道を見て驚いた。 遠くに見えるその林道にはもちろん路面はなく、いままでクリアーしたような雪の斜面でもなく、 な、なんと雪の崖状態になっています。

そんな所を歩ける訳もなく、あっさりとギブアップ。先ほどのカーブミラーポイントまで戻りましょう。 さらに慎重を期するためにスノーシューからアイゼンに履き替えます。 なんとか滑落もせずにカーブミラーまで帰ってくる。登ってきた枝尾根は緩くて微妙に少ない雪の為に登りにくかったので、 ピストンで下りたくなかったのですが、贅沢は言って居られません。ここから下ります。

その前に腹ごしらえ。風も出てきたので そそくさと食事を済ませてアイゼンのまま下っていきます。12時。 考えたら10年以上前にここをMTBで走ったんやなあ・・・。ほとんど記憶にありませんが、 暑くて喉が渇いて苦しかったことを思い出します。そういえば木材の積み出しをしていたおじさんが 「熊が頻繁に出るから危ないで〜」って言ってましたな。

思ったより下りは楽でした。雪の無い所は出来るだけそこを歩くようにして行きます。 途中で無線機からOAPさんの声が。応答するとまもなく沖ノ山の頂上らしい。 東山が電波をブロックしているはずだが氷ノ山からの反射波でかろうじて聞こえる。 先週私が登った沖ノ山のレポートを見て、さっそく後追いをしてくれてうれしい限りです。
林でコーヒーを飲む橋の近くに石垣発見

ミズナラの林で休憩。ちょっと雨が降っています。コーヒーを湧かして オカリナも吹いてみます。気温が低いのでピッチが低く、最高音も出なくて ボロボロ・・・・。さらに雪に余分なエコーが吸収されるので無響室で吹いているような 変な感じ。オカリナの音で冬眠の熊も目が覚めたかも。

作業道から林道に降りて橋へ向かう途中に立派な石垣があった。 周囲は棚田跡もあるが、この石垣は建物があったような雰囲気もある。 こんな山奥にも何かしら生活の場があったのかと驚く。 私のスノーシューの足跡の上に和カンジキの跡が重なっていた。 ハイカーではなさそうだが誰かがこの辺りを歩いているようだ。

足早に林道を下って行ったものの駐車ポイントには14時着。頂上まで登っていたら もっと遅くなっただろうし、これで正解だったかも。ここも誰か後追いで登ってくれないだろうか・・・。

今回の東山の地図は こちら(約250k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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