大谷ヒナ山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『安積』を参照していただくようお願いいたします。

2006.12.16.  土曜日  曇り  気温寒い
以前から気になっていたこの山域。時期的にはちょうど登りやすいが、歩けるような空間があるのか、 倒木がひどくないのか、ハンターはいないのか・・・。未知の山域を行くときはいつもこれらが 気になります。そういう不安よりも登りたい欲求が上回った時がチャレンジ時。 今日がその日になりました。途中の撤退もありうるので今回は単独で行動しましょう。

登り口に設定したのは宍粟市一宮町の深河内にある池王神社です。地形図に鳥居マークがあり、 そこから林道がある程度の標高まで登っていて、それを利用すれば簡単かと想像する。 揖保川に沿って車を走らせ生栖の手前で左に川を渡ると深河内だ。 朝霧が深く、窓を開けるとドッと冷気が入り込む。ゆっくりと車を進めると 集落内の道に『大アカガシ 池王神社』と道標の案内があってそれに従って行く。

舗装路の終点が駐車場になっていて、正面が参道で右手にこれから登る林道があるのでした。 その駐車場には軽トラックが4台止まっている。ひょっとしてハンター?? ハンターならやっかいだが、まずは車を停めてカメラだけ持って神社に行ってみる。 石の鳥居の向こうには山門がある。神社に山門というのもちょっと変だが、その山門をくぐり抜けると 左右に一対の池(井戸かも)がある。この池は枯れたことがないらしく、 ひょっとして神社の名前の由来かもしれません。
池王神社本殿こんな顔のおっさんいてますよねアカガシの巨木

境内には数人のご老人達が掃除中であった。駐車場の車は彼らの物だったので一安心。 これから登る山のことを聞くと「この一帯は大谷ヒナ山というんや。あの林道を登るとNHKの アンテナがあるで」という情報をゲット。「本殿の裏に大アカガシがあるから写真に撮したら?」 当然撮すつもりだったが、それよりも気に入ったのは本殿前にある一対の狛犬達だ。 どうみても人面犬に見える。(^_^;)

アカガシもすごかった。高さ20m、根回り9.5m、幹の周り5.5m、枝張りは 東西に25m、南北に30mとある。見ると水平に延びた枝には下から棒で支えがあった。 アカガシはブナ科コナラ属ということだが常緑でしかも枝先に葉っぱが集中するらしい。 それで長い枝は重たくて垂れ下がってしまうのだ。

いつのまにかおじいさん達はいなくなっていた。私も駐車場に戻ってリュックやら足回りの準備をする。 そして駐車場から分岐している林道を登り始める。9時半。 極々普通の一車線林道。周囲は真っ白なので展望があるのか無いのかすらわからない。 5分ほどで分岐になるが、左を選択。
霧の林道を行く高度を上げ霧を抜けると雲海だった

霧が薄くなったなあと思った途端にいきなり展望が広がる。どうやら雲海の上に出たようだ。 正面には揖保川を挟んで対峙している生栖行者山が現れ、ここから見て初めてツインピークスだとわかる。 木々の邪魔がなければ雲海に浮かぶ周囲の山々も写真で撮せたのに残念だ。 林道の終点にあると思うアンテナ施設からはもっと見えるだろうか。

その林道もほぼ地形図通りの地点で終点となっていた。しかしアンテナなどは無かった。 自動車で来れる終点からさらに100mほど幅広の地道があり、その終点右手からは 人が通れるだけの小径があった。地面には『bP6』と書かれた黄色いプラ杭がある。 どうやらこれが『bP』になるところがアンテナらしい。
林道終点からは小径になるアンテナ分岐

黄色の杭を目標に簡単なオリエンテーリングのつもりで登っていきましょう。 ところが、管理道であるはずのこの小径はまったくと言って良いほど手入れが されていません。所々にある古い倒木がそのままで迂回を余儀なくされる。 『bP2』の所で鹿避けネットになりそれをくぐると暗い植林のゆるーい地形帯に入る。 地形図で当初予定したコースそのままなのでやまあその勘は的中ってところか。

植林帯のど真ん中に白く大きな標識がある。黄色の杭は左方向にあるが、標識は『深河谷アンテナ→』と右を 指している。地面を見ると『→』の形に切り取ったプラスチックをプラ杭の上に貼り付けてある。 これは名案だ。目立つから見落とすこともないし、木に打ち付けるのではないし、何より方向がしっかりと判る。 さすが天下のNHK!!

試しに『深河谷アンテナ→』方向に150mほど歩いてみたがひどい倒木で、その向こうに アンテナらしきものも見えないため分岐に戻り予定通りに黄色の杭コース(分岐の左方向)へ向かう。
くぬぎの林を行くアンテナポイント着

黄色の杭方向の斜面を登ると倒木はあったものの、目を見張るようなクヌギ林が右方向に 広がっていた。左方面は暗い植林なので目線は右だけ見るようにして登っていく。稜線はまもなくで、標識も『bR』 となっている。てことは、アンテナは稜線上(波賀町と一宮町の境界)に立っているんだろう。

10時35分、パラボラアンテナの立つ稜線に着く。横手には石組みの中に一本の石柱があった。 それには『境十号』と彫られている。意味は不明だが『九』とか『八』もどこかにあるのかな? さて、これからどうするか。予定はこの稜線を北に向かっておじいさん達から教えてもらった 『谷坂』という679mピークの下にある峠から下るつもりです。

このアンテナポイントから450mほど南に行くと点名『安積』の三角点ピークがある。 行ってみたいが峠までどれだけの時間がかかるのかまったくわからないが近いので後悔しないためにも 寄ってみることにする。南に下り始めて右下を見ると、なんと地図にはない林道があって驚く。 どこから、どこへ続いているのかこの時点ではわからなかったが 点名『安積』に登り始める所が林道の終点だった。
いや〜な倒木点名『安積』(大谷ヒナ山)

登り始めると目の前にとんでもない倒木帯が現れる。 どうしたものかと考えたが正面の倒木を越えて右に登ればそこが頂上なので 意を決して突入。またいだり、くぐったりしてなんとか通過。

三等三角点のある標高732.6mの山頂には10時55分着。点名は『安積』だが、 大谷ヒナ山と呼んでいいだろう。縦長で狭い山頂、しかも展望もないので くつろげないが、おやつを食べて5分ほどの小憩でアンテナポイントへ戻る。

ここからいよいよ北向けに縦走開始です。アンテナポイントから下ったすぐのところが 地形図にある点線ルートの交差している鞍部。深河谷から波賀町へ抜けているので 昔は峠道だったと思うのだが、現在は深い植林の中にある鞍部と言った感じ。 さらに先ほどの林道が隣接しており、峠の面影は無く、周囲を探してみたが石仏なども無し。
林道と隣接している峠矢印のところから稜線に復帰する

林道を歩こうかと思ったが稜線から離れると困るので 目の前の激登りを泣く泣く登っていく。登りきったところにはなんとアンテナがあった。 これは『C』地点から分岐していた『深河谷アンテナ』そのものでした。 というのも矢印に切り抜かれた白い板が張り付けられたプラ杭があったからです。 これらの2本のアンテナ管理道が荒れていたのは 稜線に沿ってあるこの林道が代役していてもう利用されてなかったからでしょう。

左手下に林道をうらめしく見ながら稜線を歩く。するととうとう林道と稜線が交わってしまった。 しかたなく林道を歩くが、たぶんここから下るだろうと思う直前から稜線復帰をする。
林道から稜線(白い矢印)に復帰するとそこには雑木斜面だった

するとそこは極楽斜面が広がっていました。すぐ横が林道とはとても思えません。 ここで食事にしようかと思ったがすぐ上のピークまで登ってみる。 展望は千種方向にあったがかすみがひどくてあまりよく見えなかった。 そこに座り込んで無線をワッチしながらうどんを温める。12時05分。

応答もないのでオカリナを鳴らしてみる。稜線とは言いながら踏み跡もないような 深い山だと想像していたのに林道と出会ってちょっとがっかりだったが オカリナで元気が出た。しかし東山方向を見ると下山予定ポイントは遥か向こうだ。 気が急くので12時20分再スタート。

切れ落ちた稜線部分もあったり、断崖に行く手を阻まれたり、なによりも標高790.8mの 点名『深河谷』の登りが強烈だ。 それまで左下に見えていた林道もどこかへ下っていったのか もう見えません。つまりエスケープルートは無くなったわけ。 12時50分、四等三角点、『深河谷』着。
下が見えない(大げさ)ほどの激下り正面に東山

地形図を見ると次のピークから真北に方向を転じるので注意が必要だ。 さらにそこは等高線が密なので激下りが予想されます。 その通りの激斜面で一瞬間違ったかと思ったが下るに連れて尾根は明確になっていき 安堵する。

同様に629m手前の分岐もわかりにくそうだ。 注意しながらそこも無事にクリアーする。 そしてそこを下ると不思議な地形に出会う。
砂鉄の採掘跡?(白線がルート)稜線の両側は人工的な傾斜地

植林帯なので暗くて不気味な雰囲気だったが、その中をうねるようにルートは続いている。 そのルートは空中に浮かんでいるような、まるで土塁の上を歩いている感じだった。 その両側に広がる空間は、植林がなければミニミニ砥峰高原と言って良いだろう。 つまりどうみても砂鉄を採掘した跡に見えるのです。

そんな地形が長く続きます。所々には水路の残骸のようなものもあります。 もっと探検したかったが時間が無いのでほとんど素通りで通過。 あとは下山予定の峠を目指しますが難しいポイントはなさそうなので 気持ちもゆったりしてきました。

峠手前の679ピークには13時50分着。ここまで来ればもう安心です。 ここで最後の小憩をしましょう。コーヒーとおやつを頂き、ついでにオカリナも 演奏。気持ちに余裕がないとオカリナをする気にもなりませんからね。 リュックのゴミを払ってさあ下りましょう。 そしてそこを下りきると谷坂と呼ばれる峠でした。14時15分。
ここも不思議な峠だった谷坂谷を下る

到着して驚いたがここも先ほどと同じような地形だった。 言葉では説明が難しいが、アイスクリームで出来た斜面をスプーンで すくい取った跡が連続しているといえばいいかな? ふつう峠というと狭い切り通しを連想するが、写真のように長〜い鞍部で どこからでも斜面を下れます。石仏がないかと鞍部を縦断してみるが それらしいものは無かった。

この峠からさらに北へ登っていけば頂上に展望台のある東山だ。 それはまた次の機会にゆずるとして今回は素直にここから下っていきます。 適当に下っていけばおのずと谷になり小さな流れに沿って歩けます。 ひょっとしてと思い、川砂を見てみるがさして砂鉄が多いようには見えなかった。
石仏がありました石仏アップ

細い谷道から広い道に出た。その先が林道の終点だった。ふと右手の植林を見ると 念願の石仏がありました。思わず駆け寄ります。14時半。 見ると道標の石仏です。幡を持った地蔵菩薩で『右 やま  左 うゑの』とある。 上野というと波賀町の中心地です。山越えでそこまで行くのはけっこうたいへんそうだが 昔の人は元気やったんやね〜。

谷に広がる棚田跡などを眺めながらやがて集落の中を歩く。軒下には 揖保の糸のそうめんを梱包する木箱が高く積まれている。 振り返ると点名『深河谷』が目を引く。きっと地元では名前があるはず・・・。 道を歩いていてもだーれも屋外に出ていないので寂しい感じがします。 下りだからしんどくはありませんがけっこう長く歩いて 池王神社の駐車場には15時25分着。

今回の大谷ヒナ山の地図は こちら(約190k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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