藤無山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『戸倉峠』を参照していただくようお願いいたします。

2006. 5.14.  日曜日  晴れ  気温ふつう
前日は一日中雨だったので 単独なら近場の低山でお茶を濁すつもりでしたが、M氏のリクエストでこの山を再訪します。 この藤無山、思えばいろんなルートで登下山を繰り返しました。 初めて登ったときは大屋スキー場からのピストン。 二度目は藤無峠からのピストン。 三度目は志倉からの新しいルートを試そうと、無謀にもMTBで周回。 さらに四度目は若杉の犬小路林道からダイレクトに頂上へ登り、下山は分水嶺を東に寄り道と 回数を追う毎にアドベンチャー度がエスカレートしています。

今回はどんなコースで登りましょうか。M氏の運転する車中で多田繁次の『兵庫の山々 総集編』の 藤無山のページを読んでみるがさすがに面白い。昔は普通に登ること自体がアドベンチャーやったんや。 それにしても、う〜ん、迷うなあ・・・、 藤無の北斜面(大屋スキー場コース)にはブナは無いが、 南斜面にはブナが多くあるのは周知のこと。さらにそこには伐採の斜面がある。そこを登れば展望も楽しめて ブナも見ることが出来そうだ。下りは素直に志倉の林道コースで下るってのはどうです?

廃村になった志倉にある『ゆずりは』という山荘を過ぎたところに駐車出来るスペースがある。 準備をして9時35分スタート。この駐車ポイントから川を越えて730mの標高点のある 尾根を登る予定です。ところがなかなか川を越えられるようなポイントがない。 林道を歩きながら渡渉出来そうな箇所を探る。ようように川を渡って歩き始めるがM氏が 待ったを掛ける「ここを登ったら林道に出てしまうで」おっと!林道を歩きすぎて 予定を尾根を過ぎたようです。
着地の石で滑ってドボン!尾根には踏み跡がある

予定の尾根に行くには横手にある谷川を超えなければいけません。水量が少ないから 安心と思ったのが油断のもと。 ジャンプして着地した岩で滑ってしまい左下半身をちょいと濡らしてしまいました。 「あかんやろ。着地して滑る前に次のジャンプや。それができたら水面も走れる」とM氏。 そんな忍者みたいなこと出来ますかいな。

斜面を登り、それなりの尾根になるとちゃんと踏み跡がある。踏み跡の登ってきている方向を見ると 山荘から来ている。素直に山荘の裏手から登れば濡れることなくここまで楽勝やったんや。 (もちろん、敷地内を通過するのですから住人に許可をもらう必要はあります) すると無線機からOAPさんの声がする。どうやら私たちと同じ所に車を停めて林道コースで 藤無へ登るらしい。

古いナタ目があちこちにある。左の斜面にある雑木は昔は炭焼きに使われたに違いない。 今は切られることもなく伸び放題になっている。尾根はフラットになり一息つく。 730mの標高点を過ぎると再度フラットになって木々は無くなり伐採地となる。
急斜面の伐採箇所東にある林道を見ると・・・

目の前にはそびえるような伐採の激登りがある。前回林道から「あの伐採の尾根って歩き良さそうやね」なんて 話していたが、実際やって来て見上げると首が痛くなるほどだ。林道からここが見えたのだから、こちらか 林道が見えるはず。そう思って右手を見るとはたして林道が丸見えだった。 伐採の斜面はカヤトがこちら向けに倒れていて滑るし、イバラはあるしで、たまらず右の植林帯に逃げ込む。 ところがこちらも激斜面で鹿避けネットにしがみついてよじ登るしかない。

カヤトに滑りながらもそこそこ歩きよくなって来た。OAPさんたちは林道終点からもう登山道に 入っているだろうか?試しに大声を上げると林道方向からも奇声が帰ってくる。あわてて 無線で再度呼びかけると「まだ林道を歩いてる」との返事。目を凝らすと肉眼でもお二人が見えた。 お互いに手を振る。どちらが先に山頂に着くだろうか?
伐採箇所の最上部から見える展望

伐採地の最上部(標高950+m)には11時15分。ここまでですでに2時間強かかっています (ペースはゆっくりです)。足元に鹿の角が落ちていました。ラッキー!! 「こら昼までには頂上無理やで〜」とM氏。しかしこれ以降は傾斜のきつい所もないし、 案外早く着くような気がします。それはさておき、伐採地最上部からの展望は?と みてあれば・・・・。かすみがあるものの、う〜ん、なかなかのものですぞ。 しばし、M氏とあれやこれやと同定を楽しむ。
伐採最上部からブナ林になる新緑がまぶしい

伐採最上部からいきなりブナの林となる。これには驚き。それとここは我々の登ってきた 伐採の尾根以外に南西方向に下っている尾根(別途地図『い』)もある。道もしっかりしていてこれが見た感じとても良い。 地形図で確認すると真南に方向を転じて最終は志倉の山荘近くに降りられそうな 感じである。またまた気になるルートを発見したぞ。

ブナの新緑が美しい。ブナ自身も若くて幹もコブも傷もなくきれいである。 足元に笹は鹿が食べるのか?全くない。傾斜もゆるやかである。 三拍子そろってなんともすばらしいトレールの出現であった。 このまま山頂まで行けるのならまさに天国への回廊と言っていいだろう。
笹が徐々に・・・M氏が見えなくなる〜

1044m標高点付近にも西に分岐する枝尾根がある。車中で読んだ 『兵庫の山々 総集編』では多田氏はここを?下ったように書かれていたが そらいかんやろ〜って感じ。でも当時は笹がすごくて致し方なく方向を 転じたのかもしれません。

徐々に笹が現れ始める。少しずつ歩きにくくなる。それでもブナやら ミズナラで心も体も癒されていくのが実感できる。左右は植林だが この尾根の上だけ手を付けずにくれているようだった。

やがて背丈以上の笹になってしまう。まあ、これは想定内のこと。ただし 笹はこちら側に倒れているので漕ぎ分けるにはやっかいである。 と!いきなり登山道に出る。これはOAPさん達がやってくる林道からの 登山道である。ひょっとして近くまでやって来ているかと思い大声を出す。 返事なし・・・。
山頂は大にぎわいやがて4人だけに

合流点から2分ほどで藤無山の頂上。11時50分。やはり伐採地からは それほどの時間は掛かりませんでした。それよりも驚いたのは 山頂にいたハイカーの数です。およそ10人以上。

軽く会釈をして山頂の片隅で我々も食事をする。 「12時で下山しますから・・・」という彼らは『神戸中央山の会』のメンバーで スキー場からのピストンらしい。どうやら私のHPも見てくれているらしく、 顔を見て声を掛けてもらう。掲示板等ではおなじみだが初めてお会いする方もいた。 お礼代わりに集合写真のシャッターと切ってあげる。

彼らが下山して5分ほどした頃にOAP、JMMのご両人が山頂に現れる。 しばらく、お話しをするがM氏は下山の用意を始めるし、帰宅の時間も気になってきたので 残念ながら我々だけ早々に下山を開始する。13時15分。 ちなみに、OAPさん達は我々の登ってきたコースで下っていき、伐採斜面を下らずに 『い』コースをたどってみるという。ナイスなコース選択やね。
虎ロープのある激下り

登ってきたブナの南尾根を横目に見ながら左に左にとコースは下っていく。 とにかく激下りです。ようまあ、こんなコースをMTB担いで下ったものです。 いわゆる若気の至りってやつですか。下りもしんどいですが、登りに使うのも しんどいコースです。まったく良い所の無いようなコースですが 一つだけええとこが・・・。それは秘密ですけど。

林道の終点(登山道の入口)には14時10分。ここから長い林道歩きです。 途中に落石とか倒木があったりするので終点まで車で来ることは出来ません。 しかし、ここにMTBをデポしていたら5分もかからずに駐車ポイントまで 帰ることが出来たでしょう。

テクテクと歩いていくと林道の分岐になる。立派な木柱が建っていて左方向に矢印で 『揖保川支流 志倉川源流』とある。それを詰めると若杉の集落へ抜ける峠へ至る (エアリアマップにも記載あり)。ここもいつか歩いてみたいなあ。
まさに自然の湧き水

駐車ポイントのちょっと上、つまり最初に川を渡ったポイント近くに 一宮7名水の一つである『藤無山の水』がある。 毎回来るたびに感心するのだが冷たくて美味しそうな水が杉の根本から滾々と湧き出ている。 見た目だけで言うと、これぞ名水中の名水と言っても良いだろう。 実は2リットルのペットボトルをたくさんもってきているので ここで汲んで帰ろうかと思っていたがさらに下流にある『千年水』(同じく一宮7名水)に しようという。

駐車ポイントには14時50分。OAPさんの車もあるがもちろん下山はまだのようです。 無線で呼んでみたが応答なし。では、お先に失礼して『千年水』に向かいましょう。 有名な水汲み場ですから2台ほど先客の車がありました。 ところがこの先客が問題です。20リットルのポリ缶を20個以上並べているんですから 何をか言わんやです。3分以上待てないM氏のこめかみには怒りのマークが・・・。
秘水!いぼ水

怒りを抑えて別の水汲み場へ向かいます。志倉方向へ逆戻りすると小原の 道沿いに『いぼ水』というのがあります。石碑があるので読んでみましょう。 『以ぼ水』と真ん中に大きな文字。横手に小さく『明治元年 イノナルとめ 誕生ス』とある。

「なんや、飲んだらイボが出来そうでいややなあ」とM氏。これはまったく正反対の間違いです。 全国にはイボ地蔵を代表とするイボ取りの神様が存在します。これもそれと同様で、 飲んだら(あるいは塗ると)イボが取れるというたぐいのものでしょう(石碑から勝手に想像してます)。 それって迷信とか気休めとか思われる人もいるでしょうが、日本全国の いぼ取りの石仏 を研究されている皮膚科の先生もおられます。

石碑からして100年以上まえから存在していた水場だと思います。 明治元年に娘(とめ)が誕生したのを記念にこの石碑を設置したのでしょう。 山には面白い所がいっぱいあり、毎回新しい発見がありますね。

今回の藤無山の地図は こちら(約140k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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