赤谷の頭

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『戸倉峠』を参照していただくようお願いいたします。

2006. 3.11.  土曜日  晴れ  気温あったかい
兵庫県の中央分水嶺をすべて歩いてみようと思い立ったものの、個人でやることですからなかなか思うように は進みません。別に期限があるわけではないのですから(人生の終焉までが期限かな?)気ままに思うがままに 歩いていきたいところです。この山も中央分水嶺のピークなのですが 2000年の10月の 無雪期に登っています。たいへんなヤブでしたが雪の季節ではどんな姿を見せてくれるでしょう??

その6年前は戸倉峠からのピストンでしたが、この時期チシマ笹のヤブも雪の下ですから、なんとか 周回を試みたいものです。戸倉峠から登るとして、山頂からどこへ下りましょう? 1162・1044・995.7(宮中山)を経て『ドライブイン平』へ下るか。 あるいは素直に東に延びる尾根で戸倉スキー場へ下るか、そのどちらかでしょう。

どちらも舗装路を歩くのがたいへんなので登り口と下山口の両方へ車をデポしたいところです。 そうなると単独では無理。そう思っているとkoko さんからこの山の問い合わせがありました。私にとっては渡りに船なので、それでは一緒に登りましょうということになる。 せっかくですからkokoさんと私の共通のお友達であるOAP、JMMご夫妻、IRC、DQKご夫妻、三木市のMXF、EGJさん達も お誘いしました。

戸倉スキー場近くに空車をデポして新戸倉トンネル手前にあるチェーン脱着場に集合する。9時30分スタート。 すぐ目の前が新戸倉トンネルで、旧道(国道29号線)は右へ折れる。 道の両脇にはうずたかく除雪された雪があるが、 だいぶん暖かくなっているので山に雪が残っているか心配である。
正面に新戸倉トンネル
旧道は矢印方向へ
旧トンネルを右に見ながら峠へ

袋小路の旧道であるはずなのに、なぜか重機が入っていてある程度の所まで除雪がされていた。 旧トンネルを右に見ながら未舗装の林道へ入る。 「このトンネルは良く利用したなあ・・・」とMXFさん。 今見ると大型車がすれ違えるのかと思えるほど小さなトンネルに驚く。 ここでようやくスノーシューを履くことになる。 これで峠まで快適かと思いきや途中で何度も雪が無い路面が現れる。いちいち脱ぐのは面倒なので、 しかたなく地道をガリガリとスノーシューを引きずる。

林道を歩くだけで身体が熱くなってくる。10時15分戸倉峠に着。ちょうど去年の今頃に 三の丸から この峠に下ってきた。今度は1年ぶりにここをスタートとして中央分水嶺の赤谷の頭へ向かうわけだ。 峠は岩盤の深い切り通しなので手前から雪面を登っていくのがよい。
戸倉峠の切り通し最初のピークで右に折れる

今日のコースで一番きつい登りはここかもしれない。雑木の細い幹を掴みながらよじ登っていくが、 そういえば6年前もこの付近からよじ登った記憶がある。誰が付けたのかマーキングもあったりする。 ある程度登れば傾斜も緩くなっていよいよ極楽スノーハイクの始まりだ!!

ところが、ところが!!やはり雪がそうとうに少なくなっている。 稜線より西側には雪が無いので東に残っている雪面を選んで登っていく。 いっそスノーシューを脱いだ方がええかも。

「もうすぐ桂に似た木のあるピークやな」OAPさんが言う。ここは私もJMMさんも記憶にある。 赤谷の頭からピストンで戸倉峠へ戻るとき、この木を目印に左に下らなければいけないのだが、 この木がないと直進してしまいそうになるピークなのです。 (09年現在は標識が設置してある)

ブナが現れ始める

待望のブナが現れ始める。っていうか、ここにはこんなにたくさんのブナがあったっけ? みんなも「すごい、すごい」を連発。立ち止まってカメラを構えるのでなかなか前に進みません。 ブナだけでなくミズナラも巨木が多い。
ブナに寄生するヤドリギ後ろを振り返ると三の丸

高度が上がってくると雪もそこそこ多くなってきましたが、 雪庇が発達しているので左に寄りすぎると危険。そう思って真ん中付近を歩いていましたが、 目の前に20cmぐらいの亀裂がある。雪庇の近くにある雪面の皺とか亀裂は 雪庇の崩れ落ちる危険度を現す目印になるので近寄らない方が賢明だ。 OAPさんは平気で飛び越えたりしている。
ブナの集まる1143ピーク

亀裂を覗いてみて驚いた。幅は2〜30cmほどしかないのに、中はでかい空洞で 高さは2m以上ある。これって氷河にあるようなクレバスと同じとちゃうの?? もし踏み抜いたら・・・・?もし単独で来ていたら・・・・!! 君子クレバスには近寄らず!!

1143ピークはちょっと広くてブナが寄り添うようにたくさんある。 みんながそろうまでブナを眺めながらピークまでどれくらいか地形図を見る。 ブナは多いし、徐々に展望が良くなってくるので、 ここからみんなの歩きはさらに牛歩となる。
「あれに見えるは藤無山やな」とブナ越しに眺める
登りもゆるやかカール越しに但馬妙見

「いや〜、ええカールやなあ」とJMMさん「こんなカールは信州付近でないと見られへんよ。 兵庫にもこんなええとこがあるんやね」兵庫の山しか知らない私は「ほー、そうなんや」と、ただただ感心するのみです。
頂上直前のピークまでやってきました

とうとう山頂が目の前にある前峰までやってきました。赤谷の頭はもちろんですが、 その遥か向こうの波左利山、三室山も見えています。このピークは真っ平らで広く、 北西方向に長い枝尾根が伸びています。その行き着く先は鳥取県の落折という集落。 ちなみに落折は平家の落人部落として有名で、赤谷の頭も別名は落折山と言われる そうですが、落折からはこの山は見えません。
やった〜!!頂上でい!!

前峰から見る赤谷の頭は雑木のまばらなうすら禿げ状態ですが、頂上に立つとそこは ゆるやかな雪原で360度の大展望が待っています。12時ジャスト。標高1216.4m、 二等三角点。あの夏の笹藪が嘘のような空間の広がりです。残念な事が一つ、 頂上にはシンボル的なブナがあったのですが、地籍調査のために切り倒されていました。
南西方向に伸びる中央分水嶺の山々
南から東方向に見える宍粟の山々(赤矢印は下山路)
東から北方向に見える山々
さて、山頂からの展望はいかがでしたでしょうか?晴れているのはうれしいけれど、カスミがあって 遠望が効きません。父たぬきさんから「そら、贅沢やで」とたしなめられる。 先週登ったくらますはスキー場のような大きな雪原が山頂付近にあるのですぐにわかる。 東山もいつか登りたい山だ。沖ノ山はくらますに隠れて見えない。 三室まではずいぶんと距離がありそうだ。

山に登り始めた頃、こんな山にはぜったい登れないだろうなあと思った、東、一、阿舎利、三久安、藤無の 一宮五山も確認。そして、なんと言っても氷ノ山と三の丸がでかい。双眼鏡で覗くと どちらの避難小屋も見えるし、なんとハイカーも見えるではあ〜りませんか!!
さあさあ、お昼ご飯だよ名残惜しいが山頂を下る

昼ご飯を食べようとするが、山頂は風が吹いているのでちょっと下に移動して(たいした違いはないけど) そこで食べる。風よけを作ってコンロでお湯を沸かす。各自食事が終わると コーヒーを飲む者、お酒を飲む者、無線をする者。一貫性が無くっていいねえ。

下山開始は13時05分。スキー場へ下る尾根を探すのだが、これは比較的簡単です。 周囲にヤブもないし、ゲレンデこそ見えないが、戸倉の集落と若杉(わかす)峠へ向かう道谷の集落も 見えている。「あそこに降りるにはこの尾根しかないね」ってことで、下降ポイントで みんながやってくるのを待機。ちなみに山頂から230mの所がそのポイントです。
下山尾根は超快適阿闍梨ブナ

「なんか、三室まで簡単に行けそうやなあ・・・・」確かにこの季節なら時間さえあれば 案外簡単に行けるかもしれません。しかし、今回はグッと我慢で下降開始。 緩くもなく、急でもなく、スノーシューで下るにはちょうど良い。

ここにもブナが多いが目の前に奇妙なブナがあった。それは幹が縦に裂けていて 表皮がくるっと内側に巻き込むようになっている。どういう訳でこういうことに なったのか?とても不思議です。千日回峰という行があって、それを行う行者が 頭にかぶっている笠があります。アンデスの葦船のような形をしていて、 そう、ちょうどこのブナにそっくり!!その笠は阿闍梨笠(蓮華笠、不動笠とも言う)と言われているので このブナを阿闍梨ブナと命名しましょう。
雪が無くても歩けそうだね戸倉スキー場のゲレンデを下る

この尾根にも地籍調査のマーキングがあるので、今回歩いた 戸倉峠から戸倉スキー場まで夏でも登れる切り開きがありそうだ。 下山尾根の右側は植林、左側はブナを含む自然林だった。 雪も徐々に少なくなってきてスノーシューを脱いだり履いたりを繰り返すようになる。 最後のピークにはTVの共同受信施設が見えている。戸倉スキー場の最上部だ。

最終ピークには14時40分。すぐ下にはリフト降り場がありボーダーやら スキーヤーらが降りてくる。我々がそこへ下っていくと「こいつら、どこから降りて 来たんや!!」てな驚きの顔で見ている。 ゲレンデに人が多ければ歩いて下るのはひんしゅくかもしれないが お客は少なかった。リフトの監視員も何にも言わない。

ゲレンデの雪はザクザクの所や土の出ている所もあり、もうスキーシーズンも終わりを 告げようとしているようだ。シリセードで下りたいがほとんど滑らない。最後の急な斜面だけ一気に 滑り降りてゴール。15時05分。下山もゆっくりだったのでちょうど手頃な時間になりました。 デポした車でドライバーだけ乗せて登山口に置いた車を取りに行く。

残っていた母たぬきさんが住民に聞いたところ、山名は不明だったらしい。 さらに山の持ち主は集落の人ではなく東京の人で、ある有名な野球選手の親戚筋に あたる人でした。どうか山の開発、植林などと変な色気を出さずにずっとブナの山のままで 置いておいてくださいね。

今回の赤谷の頭の地図は こちら(約120k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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