阿舎利山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『音水湖』を参照していただくようお願いいたします。

2006.10. 9.  月曜日  晴れ  気温ふつう
1ヶ月ほど前に登ったばかりの阿舎利山ですが、その時に思いついたルートが気になってしかたありません。 それは引原ダムの音水湖の横手にある『姫路野外活動センター』から登って、阿舎利から 南西に延びる尾根で日ノ原の集落へ下山しようというルートです。 単独で行ってもいいのですが、ハチとかクマの餌食になるのはごめんです。 ちょうど盾になりそうな人物がいましたのでその人をだましていっしょに登ってみることにしましょう。

29号線を北上して引原ダムを過ぎて、野外活動センターの大きな看板が見えたら右折する。 昔はこのダムの入り江をも忠実に沿うように国道はあったのですが、 現在はいくつかの橋で入り江をショートカットしています。右折することはその旧国道に入ることになります。 200mほど入った入り江の最奥部が林道三久安線と野外活動センターの入口です。 数台止められる駐車場があるのでそこに駐車して9時15分スタート。
野外活動センターの入口付近舗装の終点

野外活動センターの入口はチェーンがかかっており部外者の進入は出来ません。 駐車場の横手にある『せせらぎ公園』と書かれているのが林道です。ダム湖に注ぎ込む 谷川の流れを挟んで左側にあるのが活動センター。なんでも昔は小学校だったらしい。その円形の建物(校舎?)は以外にきれいで M氏も利用したことがあるらしい。 そうそう、言い忘れましたが前述のクマ除けの生け贄とはおなじみのM氏のことです。

施設の最奥はキャンプ場になっていて、そこには場違いな『三久安山 不動明王』と額のかかった お堂がある。ガラスドアから内部をのぞき見ると不動明王の石仏が安置されていた。 こんな所にも棚田跡の古い石垣が幾段かあり、そこがテン場になっている。 周囲は杉林で薄暗く、地面は苔むしています。「こんなじめじめの所でテント張るんか?」とM氏 は顔をしかめる。

舗装の林道が続く。山の神を祀る石の祠を見て、山腹からコンコンと湧き出る水で 喉を潤し、花を写真に撮し、やがて舗装林道の終点に着く。9時40分。 ここから左に行くと三久安山(のはず)、阿舎利へは右に続くガレた林道を行かなければなりません。

久しく利用されていないのか、橋が落ちたままになっている。路面も荒れているところもあれば、 作られたばかりのようにきれいな所もある。終点付近の植林越しに見えるのは三室山だろうか? 10時10分。

ここから枝尾根に乗って登り始める。植林なので下草もなく楽に登れる。現在は植林斜面だが、 上に行くと前回見たような雑木の林が広がっているはずだ。予想通りに植林から松になり、 そして雑木の広がる林になっていった。
分岐より奥、こんな良い路面もある自然林だが急斜面だゆるやかになると稜線間近
こんな所にも大柿さんの赤布がぶらさがっていた。周囲は若いブナも多い自然林。 太古からの阿舎利の姿を保っている貴重なエリアだ。傾斜が急なのでなかなか足が上がらない。 目線はついつい下向きになる。すると栗の実の詰まったイガがたくさん転がっています。 こんな美味しそうな栗をクマも見逃したのかな。 上に視線を向けると妙に元気なM氏は先行している。クマと出会えば思惑通りに餌になってくれそうです。

やがて傾斜はゆるやかになり稜線と合流する。頂上からわずかの地点です。 今回は登りに使ったこの雑木斜面ですが、下りに使うのは難しそう。というのも周囲が すべて同じような景色で目印になるようなものがありません。足元を探ってみると標石が埋まっていました。 苔をはぎ取ってみると、頭は赤い十文字、横手の数字を見てみると消えかかっていますが『四九』とあり、 これが良い目印になります。

山頂には11時15分着。 M氏がここに来るのは数年ぶりのことになる。その時は展望は皆無であったが、新たに 一箇所だけある展望ポイントでM氏に氷ノ山を見せてあげる。そして、ちょっと早いが 三角点の横手で昼食にする。

無線もやって、コーヒーもいただいて、後は下山あるのみ。おっと、その前に 最近入手した『新はりまハイキング』という本に載っていた、阿舎利山にある 揖保川支流の阿舎利川源流碑なるものを見つけに行くことにする。
阿舎利川の源流碑西尾根を下る

山頂から南に下った最初の鞍部、その東側にある谷の源頭部を覗き込むと ステンレス製の立派なものが建っていました。12時25分。この碑の奥を覗き込んでみると みごとに湧き出た水がチョロチョロと流れ出ています。 瀬戸内海までの63kmの旅がここから始まるのです。

我々も下山の旅を始めましょう。山頂から南西に下っていく尾根に乗っかります。 地形図でもわかるように程良い傾斜で下っていきます。 実際に歩いてみると道とは言えませんが、下草の無い踏み跡で問題なく下っていけます。 周囲は予想通りに全域が植林帯。

「これってMTBでも下れるんとちゃいますか?」と言うと「どうやってMTB持ってくるねん!!」とそっけなくM氏 に言われる。夢のないお人ですなあ、クマに食われまっせ。快調なペースで順調に下っていく。 大きくてまっすぐに延びたモミ?の大木が尾根の真ん中にあって、次にある小ピークがチェックポイントになる。

このまま尾根の下る方向にまっすぐ行くか、あるいは右手に下って谷にある点線ルートに乗っかるか。 谷に道があるものと想定して、右に下っていく。何とも言えずきれいで冷たい水の流れる谷に降り立つ。 13時15分。踏み跡はあるにはあったが、不明瞭なものだった。 川をなんども渡るはめになり、その都度カメラに気を遣いながらジャンプする。 てなわけで、F地点から谷に降りずにG地点まで行くのが良さそうです。
何度も川を渡る黄色の線で林道に降り立つ
左右どっちに行く?

林道に出会いました。13時45分。ちょうどコーナーの所で、川が道を寸断して左右に別れているような地形になっている。 地形図とちょっと道の付き方が違っているので、一瞬面食らうがM氏がオリエンテーリングで鍛えた 野生の勘とやらで左を選択する。

歩き始めるとすぐに I 地点(別途地図参照)に着く。まったく予定通りここまでやってこれました。 赤錆びた鉄板を敷いた橋を渡るといきなり道は無くなりヤブとなる。「地形図には道が書かれているのに、国土地理院は なにしとる!!」とM氏はぼやく。この谷は万ヶ谷と呼ばれていて、これより下流には落差50mの大滝を含む いくつもの滝があります。さすがにそこまでは下りませんが、 いよいよ問題のJ地点が近づいてきました。
あるはずのトンネルが無く、尾根を越えることに

それはこの万ヶ谷から日ノ原集落へ抜けるトンネルがこの近くに存在するのです。 確実な地点はわかっていなかったのですが、 地形から考えてここのはず。ところが川向こうにはそれらしきものが見えません。 とりあえずこの川を越えて向こう岸へ行かなくてはいけません。またまた、ジャーンプ!!

向こう岸にたどりついてトンネルとおぼしき所へ行ってみると、土砂が崩れていて 穴があったのか、なかったのかも判らない状況です。「これって、絶対トンネルやけど、通行は 出来そうにないねえ・・・」しかたなく頭の上10数m上の尾根を越えることにした。 こちら側は日が照って暑かったが、越えた向こうは植林で薄暗くてまったく雰囲気が違っていた。

「ここからどうするねん」とM氏。そこで 暗い斜面を見る。目が暗さに慣れてくるとすぐ下に細い金属のポールと道が見えた。そこまでズリ降りて、ちょいと 左へ行くと・・・。「あったああああ!!!トンネルや」
向こうはふさがっている様子不思議な建造物

リュックにライトがあったが、面倒なのでそのまま入る。入口は波形円形の大きな金属の パイプ(直径2m弱)で形成されていたが、奥は岩盤むき出しで、まるで坑道のよう。 距離的には数10mほどだから明かりが見えていいはずだが、向こうは崩れてふさがっているので すから真っ暗です。スコップで掘り出してみたいなあ。

このトンネルの存在意義はいずこに?実は 赤西渓谷周辺に網の目のように伸びていた林業用鉄道の支線がここにもあったらしい。 その途中にあった隧道がこれだという。つまりこの細い隧道を林鉄が通行していたってこと?? さて、ここからどう下りましょう。トンネル前の道を東に行くのが正解だと思うのに、M氏は得意の野生の勘で 西に向かってます。すると大きな石垣とコンクリートの固まりが!!

「これってなんや!?」何かの工事に使われたアンカー?地面には割れた鋳物の滑車が転がっています。 これでワイヤーを引っ張っていたのでしょう。 先ほどの林鉄隧道からここまで木材を運んできて、下まで運び降ろすための 施設がこれらしい。なんともすごい施設です。 下を見るとかなりの傾斜ですが、日ノ原にある神社付近が見えています。 「めんどくさいからここから下るぞい」と野生のM氏。
大森神社へ降りました

つまずいてひっくり返らないように植林の斜面を下りきる。そこは大森神社でした。15時。 日ノ原集落は10数軒ほどあるような感じ。ここから29号線へ降りると、あらためてこんな所に 集落があるか!と驚くのでした。

舗装路の歩きは退屈です。引原ダムを過ぎるとまもなくゴール。 その前に小さなトンネルがあるのをご存じでしょうか。左手に民家の廃屋があって その横に長さ100mほどの『引原トンネル』があります。自動車で通過すると 気が付かないかもしれませんが、実はその横手に古いトンネルも存在しています。
引原隧道を探検

それは『引原隧道』で、引原トンネルが出来る前(昭和41年)はこれが29号線と繋がっていたようです。 車止めがあるので歩いてなら通過できるはず。ところが隧道の向こう側は民家があって その庭先を通るような感じだったので「これ、あかんで」の一言で引き返すことに・・・。 実際は廃屋だったので問題はなかったと思う。 日ノ原のトンネルといい、引原の隧道といい、今回はトンネルに嫌われたようです。

野外活動センター前の駐車場には15時50分着。思ったより時間がかかりました。 29号線を姫路に向かうとき、日ノ原の集落南にある発電所を過ぎたところに『そうめん滝』が 道路に面してあります。
車中よりそうめん滝を撮す

下山に使用した渓谷を下りきるとこの滝に降り立つのです。沢の技術があったなら、 逆にこの滝から阿舎利を目指せるのでしょうが、途中に大滝があると聞いただけで その案はボツです。腕に覚えのある方はどうぞ試してみてください。

今回の阿舎利山の地図は こちら(約170k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


ホームにもどる