天児屋山

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『西河内』を参照していただくようお願いいたします。

2005. 3.27.  日曜日  晴れ後曇り  気温まあまあ
先週の三ノ丸〜戸倉峠でスノーハイクの楽しみ方がさらに 深まったように思えます。てなことで、今週も雪山歩きに出かけます。単独は寂しいですが天気は上々!! 以前から行こうと思っていた千種町の天児屋山(てんごやさん)に登ってみましょう。 天児屋山は分水嶺上のピークですから今回も分水嶺調査を兼ねてのハイクです。

登るなら千種スキー場の奥にある峰越峠からが最適です。千種町に入り車窓から山々を眺めますが、 後山も三室山もそれほど雪があるようには見えません。南斜面だからでしょうか? ちょっと不安になりながらもスキー場までやってくると、さすがに標高が高いためか雪の量もばっちりです。 有料の駐車場を覚悟していましたが、『ラドンの泉』という有料の水汲み場の駐車場が使えそう。 水は有料ですが駐車場は無料で使える??8時10分スタート。

峰越峠を経て岡山県に抜けるこの舗装路は積雪のためにこの時期車両の通行が禁止されています。 しかし歩きですから関係なく進めますし『ラドンの泉』から見える範囲では除雪されています。 しかし、その路面が食わせ者です。雪はありませんが数ミリの厚さでコチコチに凍結していて 歩くことができません。しかたなく除雪されていないガードレール外の雪の上を歩きます。
舗装路はすっかり雪の下峠の東屋も・・・

峠の百m手前からは除雪もされてなくさっそくの雪原歩きとなる。 それではってことで、スノーシューを履いて歩き始めるとやっぱり快適です。 この下が舗装路なんてとても思えません。右を見ると目的地の天児屋山、よっしゃー!心ウキウキです。 県境の峰越峠にやってきました。右に回り込むとおなじみの東屋がありますがいまにも雪に押しつぶされそうだ。 登り口は古く朽ちかけた看板があるのでそこから登ります。8時40分。

夏道は階段があってそれほどの傾斜とは感じなかったのですが、雪が積もった今は けっこうな急斜面と感じます。でもこの斜面を登り切ると後は登りらしい登りもなく 楽勝のはず。登りきるとさっそくブナが現れます。普通は雑木が刈り取られた跡に杉が植林されますが、 この尾根は杉とブナが混在していています。それは 季節風によって杉が倒れたりしないようにブナを風よけにするために残されているのだそうです。
笹が隠れてどこでも歩けますで、でた〜。巨大ブナ

細かった尾根がいきなり広くなりました。ここの無雪期の尾根道の踏み跡はず〜っと細いままで、 周囲には背丈以上の笹藪が広がっているのを知っているだけにこの開放感には驚きます。 道沿いのブナには触れることもできますが、笹の奥にあるブナはただただ眺めるだけでした。 しかし、今日はどのブナも見放題、さわり放題です。あっちに行ったりこっちに行ったり。 お気に入りの大きなブナにも再訪できました。

岡山・鳥取・兵庫の三県の境界にやってきました。ここからいよいよ中央分水嶺です。 今まで北に向かっていましたがここから方向を転じて東に向かいます。考えてみると この地点は兵庫県の最西端、兵庫分水嶺の始まる(終わる?)地点でもあるってことです。 では、最初のポイントである江波峠を訪れてみます。 ここも夏場なら笹藪をかき分けながらでしか来れないところですが今日はわずか5分ほどで着。 わかりやすい切り通しの峠ではないし、完璧は廃道なので初めての人はここが峠だとはわからないでしょう。
峠付近から北を眺めます

夏なら足元にある石仏で峠だと確認は出来ますが、今日は雪の下に隠れてしまってどこにあるのか わかりません。うっそうとした所だったのに今日はまるで別の場所に来ているように明るくて開けています。 周囲はブナの林、北方向の山もよく見えていますのでもうちょっと先に行ってみればさらに良いかも・・・。 ここからちょっと東に登ると思った通り北に向かって大展望が開けています。 東山も良いよな〜。扇の山もまだ真っ白だ。あら、青が丸と仏の尾は陣鉢山に隠れて見えませんねえ。
カラ松のある雪原を登っていく

去年の台風の影響なのか、ここまでの道のりで倒れているブナが多かった。 杉のように根こそぎ倒れているのではなく、傷んだと思われる幹の所からまっぷたつに折れているものが多い。 山の宝物が失われるようで悲しいなあ。 去りがたいブナ林でしたがそこを抜けると広い雪原が現れ今度は南に展望がある。
ドーンと後山連峰が飛び込んできます
もっと高度を上げればさらによく見えるのかもしれないが、こうも見事な後山連峰をだまって 見逃すことは出来ません。夢中でシャッターを押してしまいます。 たとえば、この時期の後山に登ろうと思うと時間もかかるし、けっこうな体力もいる。 ところが、ここは登り口からすぐで雪原のブナ林だし、1時間ちょっとでこの大展望だ。 しかも登りも少ない楽勝コース!! なんでここが一般に知られていないのか不思議でもあり、独り占め出来るので得している気分もある。
風紋の雪原天児屋山頂に人影が

雪の時期に初めて来る人なら江浪峠付近だけがわかりにくいだろう。それ以降は まったく簡単で快適なルートです。いくつかある雪庇箇所を迂回して、いよいよ山頂が 近づいてきました。見ると、山頂に人がいます。これにはびっくり!!

標高1244.7m、三等三角点(雪に埋まっているので未確認)の天児屋山には10時15分着。 ゆっくり来ても登り口から1時間半、これは予定外に早かった。先行者の単独男性も少し前に来たようです。 お互いにまさかこんな山でハイカーに出会うとは思ってなかったようで正直びっくりしました。 彼は北にある吉川集落から林道を伝って登ってきたようだ。 途中で地図を落としたらしいが、この後すぐ北にある高倉とくらますに登ると言って 斜面を下っていった。
天児屋山頂からの大展望!!
あらためて一人になったのでゆっくりと展望を楽しむ。思った通り立ち位置を変えるだけで 360度の大展望です。双眼鏡で見ると氷ノ山、三の丸の避難小屋もバッチリ。 そこから続く中央分水嶺のピーク(赤谷・波佐利・三室)も指呼のうち。 後山連峰もさらに大きなシルエットになっていて、駒の尾の避難小屋、 さらにはおごしき山と空山両方の大馬鹿門も見えます。どうです?この展望を体験したいと思いませんか? ただ、残念なことに大山だけは沖の山に隠れて見ることは出来ませんでした。

この天児屋山の山名は多田繁次氏の著書で知りました。 ところがここを三国山と言う人もいるようです。その山名は、かの加藤文太郎の著書にあるということですが、 これはどう考えても無理があるでしょう!!今まで三国山というありふれた山名の山のいくつかを登ったり、 地図で見たりしていますが、そのいずれもが三つの行政区にまたがっているか、三つの稜線があるとか・・・・ それ故の三国山の山名だと思います。いくら文太郎が偉大とはいえ、この山名は変だと思います。 多田繁次氏が三国山の山名を採用しなかったのは同じ事を考えていたのではないかな??

5月13日追記
私の企画した『若杉原生林オフ』に参加していただいた白夜の貴公子さんのレポートにこの一文がある。 『・・・江浪峠は因播、播磨、美作の境で”三国峠”とも呼べる峠。・・・』
ここで思わず小膝を叩く。(^_^;)
なるほど天児屋山の西にある江浪峠を三国峠とするとすぐ近くにある天児屋を三国山と呼んでも違和感はないなぁ。 たぶんこれが真相でしょう。やまあそ納得!!


山頂でお昼にするにはあまりに時間がありすぎます。う〜ん、思い切って大通峠まで行ってみましょうか!! 目の前にある1199m、その向こうの1081mの二つのピークを越えれば大通峠です。時計を見ると10時45分。 昼までに着くことを条件に、では前進!!

急下りです。スキーとかスノボーなら楽しめる傾斜でしょう。降りたったところはカナゴ乢という峠です。 無雪期に林道を利用して来たことがありますが、チシマ笹の激ヤブで覗き込むことすら 出来ませんでした。したがってここに石仏とか石碑があるかどうかも不明です。 天児屋山の麓はたたら製鉄の発祥の地とも言われている所です。 そのためこのカナゴ乢を通って鳥取側から砂鉄が運ばれていたという。 (カナゴとは砂鉄のこと。出雲では粉鉄と言っていたらしい。)

1199mピークへの登り返しをクリアーしてまたまた下ればそこも名前のある峠です。 中江乢と呼ばれていてここも廃道状態で峠とわかるものはありません。空腹で力無く 1081mをようやく登り越えて大通峠着。時間も予定通り11時40分。
大通峠に着きました

峠にはスノーシューの跡があります。見ると三室山方向から下ってきていました。 足跡の主はそのまま林道で兵庫側へ下っていってます。私もそのまま林道で下ってしまおうかと 思いましたが、そうすると千種スキー場へ戻るのがたいへん!!となると、ピストンで戻るしか ありません。あ〜!!考えただけでしんどいぞ!!

ま、とりあえずお腹に何か入れなくてはいけません。今日はコンビニで冷凍うどんを購入しました。 リュックの中で溶けてしまえば汁が流れ出してたいへんなことになってしまいますが凍ったままで一安心。 それをコンロで温めてお腹に収めます。コーヒーも飲んでエネルギー満タン。 12時15分再スタート。

お腹はいっぱい、でも疲れもいっぱいです。 足がなかなか思うように上がりませんがとりあえず動かしていれば前に進みます。 1081mピーク、1199mピークもクリアー。 帰路に見る風景はまた違った感じがしますね。天児屋山の斜面はスキー場のようです。
帰路に見る天児屋山。これまた雪原でええかんじ

13時20分再度天児屋山着。麓の千種町側にはたたら製鉄の跡地が保存されていますが、 明治の中頃まで操業されていたそうです。たたらの神様は金屋子(かなやご)と言います。 天児屋(てんごや)と音がよく似ているので金屋子が変化したものかと思っていましたらさにあらず。 天児屋とは天児屋命(あめのこやねのみこと)といって、『古事記』『日本書紀』に出てくる 神話の神様です。とりわけ鉄に関しての神様でもなく、どうしてここの地名に使われているのか 調べたい。

ネットでこの山の事を検索すると天児屋命のことをたたらの神と書かれたものがありますが それはまったくの間違いです。

お気に入りのブナ前で演奏除雪作業が進んでいました

江浪峠まで戻りました。14時05分。ブナ林には私だけの足跡しか残っていません。 まさに独り占め状態です。ここでちょっと声を出してみる。すると周囲のブナに反響して すごく具合が良い。一人ニヤッとしてリュックを下ろす。中からオカリナを取りだして吹き始めます。 単独の時だけの密かな楽しみ・・・。しかも今日は反響すばらしいブナの林の中です。 檜舞台ならぬブナ舞台です!!

峰越峠が近づくとなにやら重機の作動音が大きく聞こえてきます。雪の積もった舗装路に出ると、 そこには千種町の除雪車が作業中でした。私が歩いた雪原がみるみる道路に変身していきます。 たぶん4月1日には岡山県まで通行可能にしなくてはいけないからでしょう。 スノーシューを外して道路を歩きますが、普通の道がこれほど楽ちんとは!! 15時10分に駐車場に戻って来れました。

顔がザラザラするので鏡で見てみると白く塩を噴いています。知らず知らずにたくさんの汗をかいていたみたい。 千種町に『エーガイヤ』という温泉があるのでそこでさっぱり。ブナを愛でて、景色を眺め、オカリナを吹いて、 温泉に浸かる・・・今日は久しぶりにゆとりのある山行きとなりました。 天児屋山はお手軽スノーハイクの定番コースになりそうです。

今回の天児屋山の地図は こちら(約150k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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