三の丸〜戸倉峠

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『若桜』、『氷ノ山』、『岩屋堂』、『戸倉峠』を参照していただくようお願いいたします。

2005. 3.20.  日曜日  曇り後小雨  気温寒い
2002年の3月に 氷ノ山のスノーハイクを楽しみましたが、今回は中央分水嶺のシリーズとして この『三の丸〜戸倉峠』ルートを探索してみたいと思います。 行こう行こうと思いながらなかなか行けなかったのですが理由はいろいろあります。 雪山体験の少ない私のようなハイカーがこの手の雪山をお手軽に歩くには、 二つの重要な条件が満たされていないとだめなんです。

その1:天気が良くないとだめ。
雪だろうが吹雪だろうが平気で登る猛者もいますがそんなのは論外。もしホワイトアウトにでもなれば 我々は間違いなく遭難する人種です。ですから晴れていて周囲の状況が見えていないととても歩けません。 第一晴れていれば展望も楽しめるしねえ。雪が降ってたらなにも見えないでしょ!!
その2:雪が締まっていないとだめ。
ラッセルなんてとんでもない。ツボ足でもなんら問題なく歩けるぐらいにカチカチの状態がベスト!! (ちょっと距離もあるからペースが保てないとつらいしね)

鳥取県にある若桜スキー場のリフトを利用すると標高1100mまで一気に稼ぐことが出来ます。 ところが最上部まで行くリフトは三月までしか稼働していないので時期を逃すと雪の激斜面を よじ登るはめになってしまいます。なかなか上記の条件に合う週末になりませんでしたが 今日はなんとか行けそうです。「行くんだったら連れて行ってよ〜」と、このコースに興味のある人も いたので単独の山行きは回避されそうです。

新戸倉トンネル手前にあるチェーン着脱場に8時に集合。OAP、JMMご夫妻とMXFさん (ちなみにこのアルファベット三文字は無線のコールサインです)。 山登りを楽しもう!のkokoさん。 趣味色々のわーさん。 丹波やまだよりのたぬきさん。それといつものM氏も。でもM氏はこのコースにはまったく 興味がなく、三の丸からは単独で氷ノ山頂上に向かう予定です。
川の水を道路に流す登山計画書を提出

新戸倉トンネルを抜けて鳥取県に入る。若桜スキー場へ向かって舗装路を駆け上がるが ここの舗装路はまるで川のように水が流れています。っていうか、川から水を引いてきて それを融雪のために舗装路に流しているのでした。これは名案です。自動車の下部に付いている 融雪剤もこれで洗い流しましょう。

駐車場に車を止めて準備をします。スキーヤーやらボーダーの姿があるのは当たり前ですが ハイカーらしき人もけっこう多くいるようです。リフト券を買う前にまずは登山計画書を 提出しましょう。こんなものを書くのも出すのも生まれて初めてですが、なんだか本格的な山登りを しているようでうれしいじゃありませんか。リフトは途中で乗り換えしますので二枚のリフト券(500円)が 必要になります。「500円であの高さまで行けるんだから価値あるで〜」と、わーさん。9時05分リフト乗車。

落っこちないようにしっかりとパイプを掴んで乗りましょう。背中のリュックの出っ張りでちょっと座りにくいです。 中腹で一度降りて最上部リフトに乗り換えます。このリフトの椅子はさらに小さいのでたぬきさんは座りにくそう。 (別にたぬきさんの尻がでかいというわけではありません・・・) 横を見ると激斜面のゲレンデが見えます。このリフトが止まっていたらあそこをよじ登らないといけません。 やはり500円は安い!!一滴の汗もかかないままリフト最上部着。でもちょっと冷や汗はかいたかも・・・。 9時25分。
痩せ尾根から北を見る雪庇部分から山頂を見る
天気が良ければここからでも大山が見えるのだが曇っているので無理だった。ただし高曇りなので ある程度の展望はあるし三の丸付近でガスに巻かれる恐れもなさそうだ。雪面は アイゼンを付けるほどのこともなさそうなのでそのまま登り始める。けっこう急な斜面だが 昨日からの踏み跡がステップを付けてくれているのでそれを頼りに登っていけます。 やがて展望のきく痩せ尾根に着くがここは雪庇もあるので踏み抜かないように右寄りに通過する。 当然だが季節風の関係で雪庇は左に向かって成長している。
痩せ尾根を登りきると魅惑的な西尾根が現れる

やがて白い花を咲かせたような樹氷のブナ林になる。ここからは一気に傾斜が緩やかになる。 いつもは簡単に素通りしてしまう所だが、今日は地形図を片手にじっくりと周囲を眺めてみる。 西に向かってゆるやかな広尾根が一番に目に入る。 初めてここに来たときに県境(つまり戸倉峠は向かう分水嶺)と勘違いしていた尾根です。 したがってこの西尾根には入り込みませんが見える限り素晴らしい尾根です。 そのためか誰かの踏み跡が1376ピークへ向かってありました。どこへ下っていくのでしょうか?? ひょっとして迷い込んだんか?!

ブナ林を抜けるとそこからは三の丸まで遮るものとてない大雪原が広がっています。 風が冷たくて耳当てをします。ふと振り返ると今まで見えなかった大山がうっすらと見えています。 みんなにそれを言うと一斉に振り返って歓声を上げていました。せっかくだからここでスノーシューを付けます。 遅々とした我々につき合っていられないのか前を歩いていたM氏はもう見えません。 「もう三の丸に着いたかなあ・・・」とたぬきさんと話ていると、前でうずくまったM氏がいます。 ほんとは遙か前を歩いていたらしいのですが、アイゼンが靴から脱げたのを気づかずに歩いていたらしい。 なんともおまぬけですがギャグとしたらなかなかのものです。
なにげに振り返るとうっすらと大山がエビの尻尾ならぬ
カレイの縁側

うだうだと歩いていると単独の女性が追いついてくる。聞くと鳥取の方で私のHPも知っているという。 やまあその実物があまりに男前なので驚いた風だ。(^_^;)
スノーシューは持っていないようだが、アイゼンは付けている。 この時期の氷ノ山には初めて登ると言うので驚く。なかなか勇気のある人ですが大丈夫だろうか? 女性にはやさしいやまあそです。

東屋は内側の壁とか天井にもうっすらと氷が張り付きなんとも寒そう。その横ではテントをたたんでいる 一組の男女が・・・。え〜っ!!この雪原で一晩明かしたんでしょうか? とても信じられません。赤い三角屋根の避難小屋なら風も避けられたでしょうに。 その避難小屋も入口付近の雪は溶けていますがその高さは2m近くありました。

三の丸には10時25分着。予定より30分早く来られました。M氏はいつもあのリフトに 乗り損なっているのでこんな早い時間に来たことは無いらしい。これなら山頂に行っても充分に 遊ぶ時間があるとえらい喜んでいます。
三の丸から西〜東南方向を見る
頂上方向を見るとこちらにも大雪原が広がっています。 千本杉の向こうには林道もはっきり見える蘇武岳から但馬妙見山。 空気さえ澄んでいればその向こうに加賀白山も見えるのですがさすがに今日は無理のようです。 南に視線を転じるとおなじみの山々があります。当然の事ながら全てここより低く見えてます。

全員がそろったところでM氏は単独で山頂へと向かって行きました。 うるさい人がいなくなったのでちょっと分水嶺のお勉強もしましょう。 この三の丸は兵庫県の分水嶺の中では一番高いピークになります。 「えっ?氷ノ山が一番高い分水嶺とちゃうの?」という質問もありましたが、 氷ノ山は分水嶺から外れたところにあるんです。
中央が三の丸ピークです

では、この三の丸周辺に降った雨はどうなるでしょうか?図のようにA付近に降った雨は 最終揖保川から瀬戸内海に流れます。同様にBは円山川で日本海に。Cは千代川で日本海。 つまり、中央分水嶺は若杉峠からこの三の丸で急激に曲がって戸倉峠へ向かっていることがわかります。 したがってAの狭いエリアだけ太平洋、BCは日本海側ということで氷ノ山が分水ピークでないことも わかります。
いよいよ県境尾根へ出だしは広大なブナ林

三の丸から西方向に斜面を下り始めるとその雪原の広さと美しさにただただ驚く。 正面に樹氷のブナがあるのでみんなはそちらへ駆け寄って行きます。 左方向に見えるのは坂の谷コースの尾根、正面の大きな林は行き止まりの尾根。ってことで、 コースを右寄りに修正しながら下っていきます。 するとスキーのシュプールを発見。それはこれから行こうとする県境尾根とおぼしき所から 三の丸へと続いています。
古い標識を発見なかなか前へ進めません

シュプールの両側にあるストック跡などがあることから下から上に登っているものだとわかる。 とりあえずこれをたどっていけば大丈夫ってことか・・・。ちょっと安堵しますが、ルート探しの 楽しみは無くなります。

ブナ林は想像以上にすばらしくみんなの足は止まったままです。ツタの絡まった古木が多くて どれも太い幹のものばかりです。その幹に食い込むようにスキーのツアーコースを示す ガイド板がありました。いつ頃のものかわかりませんが、同様のものが坂の谷コースにも 残っています。すばらしいブナ林には違いないがたぬきさんはブナの幼木が無いのが気になるという。 というのもこれらの古木が枯れてしまったらブナのない尾根になってしまうからだ。

MXFさんがお昼にしようと言います。時計を見るとまだ11時20分ですが、あまり標高を下げると 無線を楽しめないのとアルコール燃料(お酒)が切れかかっているためらしい。ブナに囲まれながら 雪原に座ってご飯を食べるのも素敵やね。
またまた大雪原に出ました

尾根はとにかく広い。食事ポイントから右に枝尾根があるので迷い込まないよう注意が必要です。 ちょっと左よりに歩くのがいい。ブナも少なくなってきて樺?の幼木が多くなってくる。 それらを縫うように進んでいくとまたもや大雪原になる。 前方の低いピークは地形図にある1182mのピークだ(波賀町側ではここが三の丸と呼ばれている)。

あまりに絶景が続くのでしばし放心状態だ。「やまあそさんのおかげでええとこ歩けたわ」 うれしい言葉ではあるが、全員が無事に下山できるまでは喜んでいられません。 県境尾根(分水嶺)は左に曲がるが、地形図で確認すると広い尾根はこの先から急激に細く、しかも アップダウンもあるようになっています。 そして道しるべに使っていたスキーのシュプールはそれとは反対の右に下っていっている。

右に下れば林道と出合います。その林道はゆるやかな下りで戸倉峠まで続いていることから、 ツアーコースもひょっとしたらこの右下に下っていくのかもしれません。 我々は分水嶺を行かねばなりませんから、もちろん左へ向かいます。
カラ松の林を行く1073mピークから三の丸を振り返る

尾根は細くなり周囲はカラ松の林となる。OAPさんとJMMさんは突然歌を歌い始める。 どうやら歌詞の中にカラ松の文句があるようだがあまりに古くてさすがの私も なんの歌だかわからりません。(^_^;)

左側は谷に大きく切れ落ちています。谷向こうを見るとやまめ茶屋からある林道が見えました。 尾根が細くなったお陰で迷う心配はありません。 この辺りから三の丸が見えないかと何度も振り返りますが、1073mピークが その展望台でした。双眼鏡で見ると三角屋根の避難小屋やら展望櫓、さらには スキーで滑るハイカーも見えます。これには驚き!!

標高が950mの鞍部に着きました。この先の小ピークを二つほど越えれば戸倉峠ですが、 ここで右にある林道へエスケープします。というのも戸倉峠は深い切り通しの峠で そこへたどり着いても降りるのがたいへんなのです。分水嶺のトレースよりも安全第一!!
峠手前が大崩落やったー!!戸倉峠で〜す

林道に降り立つとそこには三の丸から延々とあったシュプールがありました。やっぱりここを 通っていたのですね。林道から峠まですぐのように思っていましたが案外と距離があります。 三の丸付近は高曇りでときおり晴れ間もあったのですが、この辺りから小雪あるいは小雨に なりはじめます。そして、峠の手前で林道が崩落していました。なんとか 歩けるだけ幸いでした。大きな崩落なら通過出来なかったでしょう。去年の台風のせいでしょうか。

戸倉峠には14時10分着。ほぼ予定通り。両側は高い岩壁の切り通しになっているので、 途中から林道に降りたのは正解です。ここで大きな疑問が湧く。 はたして昔はこの峠を通って播磨から若桜に通行がされていたのでしょうか? 兵庫側に下る道は明確ですが、鳥取側に下る道がありません。 無雪期にやって来たこともありますが石仏などの峠に関する遺物もありませんでした。 とりあえず地形図には点線のルートも書かれていますからいずれは調査をするでしょう。 なんせ峠大好き人間ですから。
旧戸倉トンネル新戸倉トンネル

兵庫側に下っていきます。20分ほど雪の積もった林道を下っていくと 出ました!!旧戸倉トンネルです。入口の上部には『戸倉隧道 宮田書』と扁額も残っています。 とりあえずこの宮田某氏が誰かはわかりません。入口は厳重に封をされていますが、覗いてみると中は 路面も傷んでなくきれいなままです。新トンネルが出来るまではずっとお世話になっていたのですが こうやってみるとずいぶんと狭い道幅で驚きます。こんな所を大型バスがすれ違えたのでしょうか??

とにかくこの旧トンネルが出来た昭和30年までは上の峠が使われていたのは間違いなさそう。 (道が消失するには50年は充分な年月です) そして我々には馴染みの深かったこの旧トンネルも平成7年に出来た新トンネルに その座を譲ることになりました。その新トンネルの入口付近には14時55分着。 ずいぶんと長い林道歩きでした。

予想以上に素晴らしい稜線でした。雪が無くなると背丈以上のチシマ笹に覆われてしまうので とても歩くことは出来ないルートです。この時期だけ楽しみなさいっていうことなのでしょうか? 私は欲張りなので思うんですけど、ここも夏道を造ってもらえるとMTBには最高のルートになるんだけどなあ・・・。

今回の三の丸〜戸倉峠の地図は こちら(約150k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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