とんがりさん

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『但馬新井』、『神子畑』を参照していただくようお願いいたします。

2003.11. 8.  土曜日  晴れ  気温暑い
やまごさんとこの山に登ろうと計画していた矢先に『たじまハイキング』というガイド本が発刊されて、 なんとそれに紹介されてしまいました。まさかこんな山が本に載るとは驚いたが、先を越されてちょっと残念な 気持ちもある。だが読んでみるとやはり面白そうだったので、それを参考に登らせてもらいましょう。

点名は『辻ヶ淵』というなかなか良い名前だが、本には『とんがり山』と紹介されている。 生野の菖蒲沢集落ではこのピークが見えないため呼び名は無い。反対側の田路では 昔からその姿通りに『とんがりさん』と呼ばれているので、ここではその名前を使うことにします。 そもそも、とんがりさんってどこにあるの?と思われるでしょうが、段が峰、フトウガ峰の すぐ近く、中央分水嶺のピークです。

生野の312号沿いにできた新しいローソンでやまごさんと待ち合わせる予定だったが、ご本人が 風邪を引いてしまい見送りだけに来てくれる。単独だと大きい周回コースが出来ないので下山コースは 山頂でゆっくり考えることにします。やまごさんと別れて栃原トンネルを抜け、栃原川に沿って 菖蒲沢集落へ向かう。

集落を抜け、本にある駐車ポイント、採石場(作業していました)もパスしてさらに奥に行く。 地形図では栃原川の左岸に道があるようになっていますが、それはほとんど廃道の ように見え、採石場奥にある橋を渡って右岸の林道を走ることになります。 路面はガレているが普通車でもなんとか通過できるかもしれません。 道が少しふくらんでいるところがあったのでそこへ駐車する。10時25分。 やまごさんからもらった絞りたての牛乳を一口飲んで出発。「濃いぃっ〜」
中田路から見たとんがりさん段が峰登山口にある楓

歩き始めて5分もしないうちに段が峰の登山口に着く。本を読んで知ってはいたが、ここに 登山口があること知っている人は希でしょう。尼崎山の会が設置したおなじみの白い杭が ここにもあった。それには『段が峰110分』とある。駐車スペースがあって5台ほど止めている。 山仕事なのか、段が峰に登っているのか、あるいはとんがりさんかな??

ここからはちょっと注意しながら歩く。それはどこかわからないが この近辺に不動滝とそこにお祀りされた不動明王の石仏があると聞いていたからだ。 耳を澄ませながら林道を歩いていると水音がだんだん大きくなってくる。 右下を覗き込んでみるとまさしく滝らしきものが見えた。
見つけました!不動滝と不動明王の石仏

菖蒲沢の下にある集落で教えてもらい、もっと上流のほうにあるかと思っていたが、 案外近くで見つかった。(だいたいの位置を地図にマーキングしましたから、みなさんも 探してみてください)小さな祠でもあって、そこに石仏があるかと想像していたが、 なんと!滝壺の横手にある岩肌をくりぬいてそこに安置されていた。 もちろん川の中に下半身を浸けなければそこへは行けません。

ガイド本にも載っていない見所ポイントを発見出来て満足です。さすがに石仏の 臭いをかぎ分けると自称しているだけありますわい。がははは・・・・・。と、 悦に入りながら斜面をよじ登って林道に復帰すると、上からハイカーが一人降りて 来るではありませんか!話しかけると『たじまハイキング』を見て登ったそうです。 やはり活字の力は偉大です。この下にある滝と石仏のことを話しましたがうわの空。 本に書かれていること以外は興味の対象外ってことかな?
しばらくは植林帯を歩く

すぐに林道終点となり(10時53分)、ここから植林内のシングルトラックになる。 道の状態はすこぶるよい。 本のコピーを取り出して読みながら歩く。ほどなく記述にあった営林小屋跡に着く。 現在は雑木が茂っているが昔はなにもなかった平坦地のように思える。 雑木の向こうは鹿よけネットに守られた植林帯だった。 不動滝に続くこの川の流れはずいぶんと細くなっていて顔を洗って一息つく。
朽ち果てた営林小屋跡小さくなった流れを遡る

その鹿よけネットにゲートがあるが、それをくぐり抜けるのではなく、あくまでも 川の流れに沿って登っていくのが正解ルートらしい。本を見るとその 途中から右の支尾根に取り付くようだ。はたしてすぐその支尾根を発見する。 汚いボロ布が目印にぶら下がっている。これを登れば本の通りに山頂へ行けるが パスだ。 この流れに沿って谷を上り詰めると田路越えの峠になるはずなので、それを確かめるためにも ボロ布を横目にさらに進みます。
ここを抜けると田路越え

ルートを外れることになるので、さすがに踏み跡も希薄になる。 紅葉に彩られた雑木の茂る平坦地にたどり着く。色づいた木々の向こうに中央分水嶺の 稜線が見えた。ここまでほとんど登っているという意識なく着いてしまいました。 谷は地形図通り左に大きく曲がりながらも続いているが田路越えの鞍部は目の前にあった。

鞍部に立つ。11時40分。稜線上には歩ける空間(つまり道)がある。左に登れば フトウガ峰・段が峰に行けるはず。右に登ればわずかの距離でとんがりさん頂上。 そして正面には田路へ下る道はあるのか?倒木が邪魔をしているのでそれを乗り越える。 生野側と違って田路側は急斜面になっている。「あ、あった〜」思わず声が出る。 道があるではありませんか。

昔からある道なのか、あるいは植林のための道だったのか、とにかく道があります。 左にゆるやかに下っているということは奥田路の南にある谷に降りていくのかも。 右方向はゆるやかに頂上に向かって登っている。じゃあ、これで頂上へ行ってみましょう。 稜線もすぐ右上に平行して登っています。
頂上手前から北西方向を見る

頂上のほぼ真下ぐらいに来ましたが道はさらに続いているようで、いったいどこへ行くのか 探索してみたいが、ひょっとしたらこちらの降り着く先は中田路の方かもしれません。 以前、菖蒲沢の下の集落でおばあさんと話をしましたが、彼女のお母さんがその昔、 栗拾いにこの山に登り(昭和初め頃の出来事だと思う。この付近は栗の木が多かったそうです) 道に迷って田路方面に降りてしまったそうです。 途中に大きな滝があったと言いますから、田路の奥滝、口滝を経て降りたのでしょう。

謎のソマ道に涙をのんで別れ、斜面をよじ登りとんがりさんの頂上に立つ。11時55分。 標高981.4m、三等三角点。さすがに尖っているだけあって頂上は広くない。
頂上風景

アセビの陰で風を避けてコンロに火をつける。噂通り展望の良いピークだ。西方向はフトウガ峰が邪魔をして いるが、南から東にかけては気持ちよく広がっている。ただ、今日はモヤがひどいので 写真を撮してもなにがなにやらである。肉眼で見えるはずの笠形山もまったく見えない。 かすかなシルエットでいくつかの山が確認できた。銀山湖の北にある法道寺山は ここに負けないぐらい尖っていた。
頂上から東・南にかけての展望

食事、無線、オカリナ・・・と、気がつけば1時間山頂にいたことになります。そろそろ下山コースを考えましょう。 目の前には南東に向かって下っている中央分水嶺の尾根(生野町と朝来町の境界)があります。 これを利用して892mのピークから駐車ポイントにダイレクトに下るのも面白そう。 あるいは逆方向に行ってフトウガ峰経由で下山することもできそうです。 どちらにしようか迷っていましたが、フトウガの頂上を見るとなにやら無線に使うポールのようなもの が建っています。アマチュア無線の移動運用でしょうか?それを確かめついでにあっちに行ってみましょう。 13時ジャスト。

とんがりさんから一旦田路越えの鞍部まで下り、そこからゆるやかに登っていく。手入れされていない 植林の尾根だった。杉の多くが幹の真ん中付近から裂けたり、折れたりして見るも無惨な姿をしている。 そのあいだから奥段が峰の東山腹を双眼鏡で眺める。そこには奥田路で語り継がれている『オオカミ岩』(注1)が あると聞いていたからです。植林が進んでしまい、そこへの道がわからなくなってしまったが、 なんとか再発見しようとしていると聞きました。

しばらく立ち止まって探してみましたが見える範囲が狭くてそれらしきものはありませんでした。 さあ、歩き再開。植林帯からやがて背の低い笹と雑木の林になり傾斜も急になってくる。 それをクリアーすると一気に空が広がって、笹とアセビのだだっ広い尾根になる。 地形図にある1064mの付近です。アセビが視界を遮り、笹が足に絡み、マーキングもありませんが、 鹿の通路が縦横にあるのでそいつを利用してひたすら西に向かう。すると段が峰とフトウガ峰を結ぶ 登山道にひょいっと出る。 13時35分。
フトウガから見たとんがりさん鞍部から赤いソマ道で下る

ここまで来たらあとはお散歩のようなもんです。段が峰方向を眺めるとその頂上、縦走路途中に 数名のハイカーがいるのが見て取れる。やはり人気の高い山域ですね。しかしこの後は 下山まで誰とも会いませんでした。フトウガ峰の頂上に建っていたポールは10m以上あろうかと 思われるもので、倒れないように支線が何本も張ってある。風速、風向計が取り付けられていて そのデーターを送るようになっているようだ。

このフトウガの近くを大規模な林道(千町峠で工事中のものが延びてくる)が通過する予定ですから、 ひょっとしてここに風力発電の巨大施設でも出来るのかも!あくまでも想像ですが(^_^;)・・・・。 フトウガからとんがりさんがどういうふうに見えるかと思ったがずいぶん低くちょこっと 見えるだけだった。空気が澄んでいればとんがりさんの向こうに重なるように竹田城趾も見えます。

フトウガ峰から達磨が峰へ向かう。ガレた激下りをクリアーするとそこは東斜面が伐採された 鞍部になっている。ここにも尼崎山の会が設置した白い杭がある。『菖蒲沢を経て生野駅110分』と 書かれているのを見てほくそ笑む。ここから下るとあの菖蒲沢の登山口に出るはずだからだ。

伐採された後の谷底を歩くのは大変なので、写真にあるように山腹につけられたソマ道を 利用する。鹿避けネットにあるゲートを抜けるとしっかりした道だった。これのおかげで 楽々下山できる。再度鹿避けネットをくぐり抜けるとすぐにあの登山口にたどり着く。 14時20分。頂上で悩んだ下山コースだが、このコースお手軽でお勧めです。

注1:オオカミ岩   奥田路に伝わる伝説の大岩。大岩の上部がテラス状になっていて、 いろんな植物が生えていて空中庭園のようになっている。そこにオオカミが生息していたという言い伝えから オオカミ岩という名前になったという。

今回のとんがりさんの地図は こちら(約120k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~

ホームにもどる