法華山〜王神峯

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1『笠原』を
参照していただくようお願いいたします。

2003. 3. 9.  日曜日  曇り時々小雪  気温すこし寒い
加西市にある法華山一乗寺は西国三十三箇所の二十六番札所として有名です。この近くにある 札所としては二十五番の播州清水寺、そして二十七番の書写山円教寺です。これらを山の観点で 眺めてみると、清水寺も円教寺も、やれハイキングをしたとか、三角点まで登ったとかというレポートを インターネットでも目にすることがあります。ところがこの一乗寺の裏手にある法華山に関しては 見つけることが出来ません。それならば自分で確認してみようと思い立ちました。

駐車場で200円、境内に入るゲートでおばちゃんとちょっとおしゃべりをしつつ、ここでも300円 を払い石段を上る。9時40分。まだ時間も早いので さほどの人出はなく静なもんだ。国宝の三重の塔から本堂へ抜けようと思ったが、本堂は 工事中の白幕に覆われていて入ることは出来ないようだ。本堂から三重の塔を見下ろす恰好で 写真を撮りたかったが当分は無理っぽい。

『奥の院(開山堂・賽の河原)』という標識の矢印を見て進む。谷に付けられた広い参道を 歩く。やがて石段になり、一乗寺を創立した法道仙人を祀っている奥の院(開山堂)に出る。 この右手にうっすらとした踏み跡がり、これをたどっても山頂に行けると思うが開山堂奥にある 賽の河原の方へ行ってみる。
国宝、三重の塔地面に無数に刺さっている

最奥に大岩があり左には小さな滝がある。『南無阿弥陀仏』と書かれた無数の小旗が地面に 刺さっている。小石が積まれ、花束、お人形、お菓子等々・・・。もうどこに足を置いたらいいのか わかりません。冷たくよどんだ空気の中、気持ちまで重くなってきますから早めに切り上げます。 左上の石造九重塔の奥に山道がありますからそれに乗っかります。 ウラジロの生い茂る細い登りを詰めると二手に分かれる。左手はコンクリート製の給水施設で 行き止まり。正面の一見袋小路に見えるシダヤブに踏み跡がある。

ここでロングスパッツを付け入り込むがヤブは短くて、下草のない雑木の広い谷を歩くことになる。 赤いテープのマーキングが木の枝に付けられていて、それの粘着面を指で触ってみるとまだ粘着力が残っている。 ということは最近ここを通った人がいるという証拠だ。踏み跡は薄かったがシダヤブを避けながら尾根に 向かっていた。
賽の河原もうすぐ頂上

尾根に出ると案外周囲が見渡せるので自分位置がわかりやすい。通ってきた谷を見下ろすと 緑の海のようにも見える。ここからはあの下にお寺があるとは想像すら出来ない。 赤テープも正確に踏み跡をたどっている。 10時25分法華山頂上着、標高243.3m、まったく無傷の三等三角点があった。

頂上の地面はシダに覆われ、その周りは雑木がブロックしているので展望はない。 自分が登ってきたのとは別に東方向へも踏み跡があった。たぶん開山堂へ下っていく 道ではないだろうか?そちらへちょっと行くと展望が開けている。そこで木に登って写真を撮ってみた。 加古川の市街地の向こうに明石海峡大橋と淡路島が見える。
法華山頂上から南方向を見る

この法華山だけで下山するのは面白くないので、ここから加古川・加西の境界尾根を辿って 西に見えるパラボラアンテナ塔の建つとんがりピーク(下山後、大神峯と山名がわかる)まで縦走をしてみる。 地形図では距離は さほど無いが、目の当たりにすると延々と尾根が続いている。あんなところまで行けるのだろうかと 不安になる。せめてヤブで無いことを祈る。

その方向へ下りはじめる。もう赤テープなどは一切ない。赤テープどころか踏み跡も怪しい。 やはりというか、当たり前というかやっぱりヤブでした。しゃがんだり踏み越えたりしながら 正確なトレースを心がける。徐々に猛烈なシダヤブに行く手を遮られ、胞子が もうもうと舞い上がる。良いとこなしと思われそうだが、細い攣り尾根で所々に岩場があるので 展望が楽しめるのが救いだ。そこからは北にある古法華の山々、目的地の王神峯もきれいに 尖っていてパラボラがちょっと覗いている。
攣り尾根から古法華方面を見る
そして目的地を見るとまだまだ遠い

加古川・加西の境界尾根を歩いている、やがて姫路を含む三市境界ピークに着く。 大神峯へは姫路・加古川の境界尾根にレーンチェンジをしないといけない。でも どこから下ったらよいのか見えないので、ここは行き過ぎた方が目的の尾根が確認しやすい。

ザレた斜面を下りきると、そこからは胸まであるようなシダヤブとなる。登りで 胸まであるシダのヤブを歩いたことあります??わずかな踏み跡の空間でもあれば そこをかき分けていけばいいのですがそれすらないのです。まず足が上がりません。 したがって膝でシダを踏んでいくといった感じで登るようになります。 後ろを振り返ると自分の通過したところに道が出来ていました。(^^;)

所々休める空間もありますが、延々とこれが続きます。206mピークから左に折れると 舗装の管理道が右下に見えはじめる。これに降りれば良いのだがコンクリート製の法面が 高くてそれもままならない。飛び降りることができそうな所までこの状況が続く。
舗装路終点にある電波塔その左上のピークに祠が!!

ようやく舗装路に飛び降りて一息つく。距離が短いと侮ったらえらい目に遭いました。 体中とリュックはゴミだらけ!この尾根歩きは絶対勧められません。 普通の人ならたぶん10mも進んだらあきらめてUターンするでしょう。それに比べたら舗装路の 楽なこと楽なこと!ただし国道372から登りはじめるこの舗装路はゲートがあって入ることは出来ません。

最初のコーナーに関西電力の中継所があって、終点にはNTTドコモの中継所がある。加古川の志方辺りから この山を見るとばずパラボラが目に入って、次にその後ろにそびえるとんがりピークに目が行く。 中継所の石垣が全開に展望が開けているので、金網沿いに歩いてそこで昼食にしようかと思った。 が、裏手の頂上に向かう踏み跡を発見したので、とりあえず頂上に登ってみよう。 三角点もないし、どうせ雑木ヤブの頂上に違いない。

疲れて上がらない足を引きずるように頂上に来てみると・・・・、なんとそこには祠があるではありませんか! 瓦屋根の前殿の奥にはブリキ屋根の本殿がある。その中には神鏡と『牛頭天皇(牛頭天王というのが普通)』と 書かれた木札があった。12時30分。標高Ca.255m。三角点なし。 大神峯(おおじんみね)という山名だそうで、地元では『おんじんさん』と呼ばれている。 前殿には腰掛けあるのでそこでお昼にする。 コンビニに丹波黒豆パンが売っていたのでそれとコーヒーで軽く済ませる。本場の黒豆パンとはずいぶんと 味が落ちるのでちょっと残してしまった。

本殿の横とか裏には展望の利く岩場がある。ちょっと木が邪魔をしているが広範囲に渡って 周囲を見ることが出来る。前殿の前には手水鉢がありそれには『安政六未年(1859)』『施主 畑邑上所』 (現在の志方町畑)と彫られている。他にも宝塔の上部分、石灯籠の胴の部分。これには 『享保四己亥歳(1719)』とあった。
下山路から法華山を振り返る気持ちの良い下山路

この頂上にまさかこんなものがあるとは思わなかったのでちょっと興奮気味に下山する。 しっかりとした参道があるので下山路はこれを利用する。ずいぶんと手入れが行き届いていて 気持ちよく歩ける。どの辺に降りるのか興味のあるところだ・・・。 途中に石碑?のような石造物があった。表面にも裏にもなにも彫られていない(あるいは摩耗した?)。 この石碑には逸話があって、一乗寺の修行僧がこの山で行をおこなっていたそうです。ところが この場所で亡くなってしまったのでここに石を置いて弔ったということらしいです。

もしMTBなら90%の乗車ができたでしょう。それほど快適で路面もきれいです。降りたった参道の入口 には大日如来の石仏が安置されている祠があった。13時ジャスト。道路からはガードレールがここだけ 無くって入れるようになっている。一乗寺に戻ってこの山の事を聞いてみましょう。朝方話をした切符切りの おばさんから教えてもらい一乗寺の住職を訪ねたがお留守。志方町畑で数軒の民家におじゃまして山名等を確認。

牛頭天王は天竺にいた疫病を流行らす荒神とされています(蘇民将来との逸話が有名)。それが日本で祀られるように なって神道の素戔嗚尊(スサノオの命)と同一とされました。神戸市平野の祇園神社とか京都の八坂神社が 牛頭天王をお祀りしていることで有名です。この周辺では姫路の広峰神社の祭神がこの牛頭天王です。 さらに京都八坂神社はこの広峰から勧進して出来た末社だといわれています。 ここもそういう流れで出来たお社かと思いましたが・・・・・。

【元亨釋書】(げんこうしゃくしょ 虎關師錬の著。元亨二年(1322)撰述。峰相記の元とされている資料)の一説にこうある。
法道仙人は天竺の人なり、・・・・・されはある時、紫雲に乗り仙苑を出て支那を経わたり百済を過ぎて吾日域に入り 播州印南郡法華山に下りけり其の山を法華と号することは、八つの朶わかれたるがゆへに八軸に表して名けたり。 その時渓谷の中より五色の光を出しければ法道これを見て此こそ霊区なれとて居住をしめ常に法華を誦じかつ密観を修せり、 護持する道具とては千手大悲の銅像仏舎利宝鉢のみにて余の長物はなかりける。一日多聞天王雲に駕し来たり法道に語りて 曰く大仙久しく此に棲り我まさに正法を擁護し邦国を鎮撫すべし又牛頭天~形を西の峰に現じて曰く、我願わくば災いを 除く役に任ぜんと・・・・・

法道仙人の居る法華山の西の峰に牛頭天王が現れて「私に災いを除く役をお任せ下さい」・・・というところはまさにこの山の ことを指していると思うのです。 思いもよらぬ発見で今日は大収穫でした。ヤブの辛さも吹っ飛びです。


今回の法華山〜王神峯の地図は こちら(約130k) でごらんください。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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