シザ坂峠〜入道岩

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1『比延』を
参照していただくようお願いいたします。

2002. 5.19.  日曜日  曇り時々晴れ  気温ふつう
このレポートは'99年2月17日に歩いたのとまったく同じルートです。その時とは 状況に若干の違いがありますので、これはそのレポートの追記、補記とご承知ください。

このシザ坂峠〜入道岩付近は、多田繁次氏の一連の著書の中の『低山遍歴 神戸近郊の山やま』 にも記述があります。そのころとは状況もすっかり変わってしまい、西脇側には二つのゴルフ場が、 社町側には『やしろ鴨川の郷』というレクレーション施設が出来ている。さらに、西脇・社を結ぶ 『しら坂トンネル』までも出来てしまっていて、多田氏の記述を読んで当時の様子を 思い浮かべるのは難しくなっている。(ゴルフ場敷地奥には当時のハイキング道標識の残骸が あったりする)

シザ坂峠(地元の人はそう呼んでいる)は何度か訪れた。一番最近は 数曽寺山塊縦走を 行ったときそのゴール地点に設定。峠のお地蔵様の裏手からこの峠に降りたったのです。 今回はここから北に尾根を辿って行く。その途中には多田氏の著書にも載っている 奇岩、入道岩があります。さらに北へ行くと最終的に西光寺山まで行くことも可能です。

上鴨川の集落にある公会堂横に車を止める。ちょうど民家の縁側に老人が座っていたので ことわりを入れる。入道岩のことも聞いてみる。実はこの岩には二つの呼び名がある。 ここ社側では『入道岩』、西脇側では『婆婆岩』となっている。境界尾根上に あるのでどちらからでも見ることは出来る。「そうなんや。わしらは子供の頃から 入道岩って呼んどる」と、おじいさん。

旧街道の角にある民家からちょっと入ったところに石の道標が見える。ここがシザ坂峠への 入り口である。道標には『左やしろ○○ 右おかの こう○○』、横には『明治三十年(1897)  丁酉十一月』と彫られています。ここではおじさんが草刈り機を操っている。 挨拶をすると「峠に行くんか?道はひどいで」と教えてくれる。
峠への取り付き道は明確。シダも出てきた

でも道はしっかりとして遮るものもほとんどない。ただ、路面が岩盤なのとうっすらと苔があり、 今朝の雨で超スリッピーになっている。足を乗せると間違いなく滑る。 やがてシザ坂の名前の由来になっているシダも多くなってきた。

多田氏の著書には『シラ峠』とあるが、地元の人が言うには「いや、あそこはシザ坂峠というんや。 このあたりではシダのことをシザというて、あの峠あたりはシザが多いのでそういう名前に なったのやろ」と多田氏の記述とは違った名称であった。取り付きから15分で峠である。
峠の様子

峠には『嘉永三年(1850)戌三月二十四』、清岩恵明禅尼』と彫られた地蔵石仏がある。 この石仏は清岩恵明禅尼という尼さん(正確には仏門に入った在家の女性)が西国霊場の安全を祈願して各所に安置した石仏である。 (私はこの方の名前が彫られた別の石仏を別の峠で発見しています)

上鴨川歩いて西脇に抜けるとしたら、トンネルが出来るまではこの道しかないでしょうし、 西脇方面からの播州清水寺参道はこの峠道なのです。とうぜん、 近年まで現役として使われていたと想像するのだが・・・、おじさんに聞いてみたらよかった。

峠には道標の板が地面に突き刺されている。それには『しら坂峠頂上   右 上鴨川(往復約三十分)  左 婆婆岩(往復約五十分)』とある。記述の仕方からして西脇の人の手によるものか。

ハイキング道のよう坑口跡??

さて、久しぶりのこの尾根道だが、以前よりはだんぜん良くなっている。看板の主(西脇市?)が 整備したのだろうか?道ばたに多くあった空き缶、弁当殻のたぐい(ハンターかまつたけ狩りのゴミ?) もまったく無かった。春先ならミツバツツジも咲き誇っているでしょう。

15分で378mのピークに到着。このピーク直前右下に坑口らしきところがあります。 ちょっと覗いてみるが草木が生い茂り奥までは見えない。冬場なら下りていって 探索が出来ると思う・・・。 この378mピークからもほどほどの展望はありますが、そこはグッとがまんしてその先、ちょっと 下がっていくと5分ほどで展望大岩に到着します。この岩によじ登るとまさに360度の展望です。 パノラマ写真、横方向が長すぎるので分割しました。
北東から西方面にかけて
西から南方面にかけて
真っ正面の尾根には入道岩がピョコンと立っている。その向こうにはでかい西光寺山の山塊。 三角山、白山、妙見山、杉原山は黒田庄の山々。そのさらに向こうには篠が峰、千が峰、笠形山 の山脈。西から南にかけて数曽寺山塊、三草山が見える。

ためしに無線でたぬきさんを呼びかけてみたら、すぐにコールが返ってくる。 氷上の安全山からだった。場所を説明して入道岩まで行くと告げる。 長居したかったが、小蝿がうるさいので早く離れたかったのです。

大岩で写真を撮るのに時間がかかったが、それでも峠から40分ほどで入道岩に到着した。 ちょうどトンネルの真上ぐらい。それにしてもどうして倒れもせずに、こんな形で立っているの だろうか?登ろうと思えば出来るかもしれないが、もし倒れたらそのままトンネル出口まで 真っ逆さまなのでがまんする。そのトンネルの西脇側には駐車場のある公園がある。 そこで遊んでいる家族連れの嬌声が聞こえてくる。高度差は100mほどなので すぐ近くに聞こえてくる。こちらも負けずにオカリナを吹いてみる。
入道岩(婆婆岩)

トンネルの西脇出口にはこの入道岩にダイレクトで登ってこられる道がある。そこには 案内板もあってこのように書かれている。『婆婆岩由来   しら坂トンネルの山上に 高さ5.5m、岩の周り6mの 巨岩が約20度鴨川寄りに傾いて立っている。・・・・この近郊では昔から5月8日の花の日には 山に入っては行けないと言われている。ある時若者がその日に谷にはいると、一天俄にかき曇り、 山上を見ると大きなおばばが髪を振り乱し、袖の翻して「こっちへ来い、こっちへ来い」と 手招きしながら踊り狂っている。・・・若者は村に逃げ帰り三日三晩うなされたという・・・』 それがこの婆婆岩だったということだが、なんだか西脇の由来の方が面白いぞ。

入道岩周辺も木の刈り込みがされていてちょっと広くなっている。ツツジとナツハゼの 花が咲いていた。一般の方が来られるのならここから下に下るのがよろしいでしょう。 私は前回のコースをトレースしてみようとさらに北上をする。
入道岩を入れた周囲のパノラマ

これは間違いでした。これ以降は踏み跡はあるもののシダの茂りがひどくて、 足下はびしょびしょ。スパッツもあわてて付けましたが腰ぐらいまで濡れてしまいます。 腰から上は蜘蛛の巣と尺取り虫のダブル攻撃。入道岩から20分で334.1mの四等三角点 (点名、西山の北)に着。こんなピークにも『千峰漫歩』と書かれた登頂のプレートがあった。

全身どろどろになったまま、ここからさらに北に向かう。このルートも前回より ひどくなっている。見覚えのある鞍部に着き、そこから小藪谷という、『やしろ鴨川の郷』 の北にある谷へ下りるのだが、はっきりとしたソマ道があるのでそれを利用する。
捨てられていた道標『やしろ鴨川の郷』

炭焼き窯跡も過ぎ、植林内の平地に降り立つ。ギンリョウソウの群落がある。 林道に合流して少し歩けば『やしろ鴨川の郷』だが、ふと林道の脇に目をやると 石柱の残骸が捨ててあった。『右 きよみず・・』と彫られている道標だ。 どこにあったものか知らないが、こんなのを捨てていいんやろか? 大事な文化財だと思うのだが・・・・・。

三角点から35分で『やしろ鴨川の郷』。おとぎの国に出てくるようなきれいな施設。 夕方になってきたので来園者の姿はもうない。私のようなきたない人間には近づきがたいね。 駐車ポイントまでものんびりと写真を撮りながら歩きました。スタートが遅かったので17時 過ぎてしまいました。

最後に、推薦コースはしら坂トンネル西脇側にある公園か、『やしろ鴨川の郷』に車を止めて、 上鴨川集落からシザ坂峠、入道岩、そしてそこから西脇側トンネル出口へ下りる。というコースです。 地形図にある西脇からシザ坂峠への道はたいへん荒れているので通行困難です。 短時間のハイクなら充分楽しめる展望コースだと思います。

今回のシザ坂峠〜入道岩の地図はこちら(約90k) でごらんください。


それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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