はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1『音水湖』、『安積』、 『西河内』、『千種』を参照していただくようお願いいたします。 2002. 5.25. 土曜日 晴れ 気温ふつう
今回のコースも長期に渡って温めていた企画です。単独でも行けないことはないでしょうが、
長い距離なのと、道があるかどうかもわからないので、歩きにもかかわらずM氏に
おとも願いました。彼は大甲も植松も初めてなのでぜひここの大展望を楽しんでもらいたい
ものです。
計画はこうです。まず植松山の登山口である林道終点まで車で上る。そこへ車を置いて MTBに乗り換え、こんどは舗装県道でとりがたわ峠を越えて波賀町へ行く。波賀町飯見集落に MTBをデポしてようやく山に登ることになる。まずは大甲山の主稜線へ登り行者山。 そして大甲山、荒尾山、ヒルガタワ、植松山と縦走をしようというものです。 はたして無事にたどり着くことが出来るかどうか。 この好天なのに植松山登山口には渓流つりの一台と我々の車しかない。MTBに乗り換えて さっそく今登ってきたばかりの林道を下る。9時55分。とりがたわ峠まではゆるゆると 上りっぱなしの舗装路である。このあたりからちょっと膝の調子(腰痛が原因)がおかしい。 峠から波賀町の29号線までは一気の下りだった。ここから見る大甲山は格別な姿である。 10時50分。 飯見の集落に入る。この最奥の民家から主稜線に取り付く道があるという。 その民家とは、播磨、丹波の山で木々にぶらさがっている赤布の主、MTB登山の大柿さんの 実家なのです。あいにくお留守でしたが、隣家の方がまた親切で、MTBのデポも 快諾いただき、その道の入り口付近まで案内頂きました。11時20分。
墓地の途中から仕事道に入る。すぐにあるトタン製の獣除けを越えるとまたネットがある。 そのネットはくぐらずに、左の植林斜面を登っていくのが正解のようだ。うっすらと 人の通った跡もある。大柿さんが言うには最近も行者堂へ行こうとした人がいたそうだが、 行けずに戻ってきたということである。 しかし今年のお正月にお参りしたおばあさんが墓地近くの畑にいたので、そのあばあさんの 言葉に従って上り詰めていくと案外簡単に行者堂にたどり着くことが出来た。 「両側から岩が倒れてきて、それを行者が手で支えたんや。その手形も岩に残っている」と そのあばあさん。その岩の下には行者の石仏を祀った祠がある。 安永九子年(1780)の銘がある手水鉢があった。残念ながら行者の手形は見つからなかった。(^_^;) ここまでも急斜面の植林帯だったが、ここからはさらに傾斜がきつくなる。昼食前だし、 MTBでのリエゾンが効いたのかもうバテバテだ。北東から登ってくる支尾根 (大柿さんの実家からだとこれを登ってくるようだ)と合流して、さらに急斜面を 登ってようやく主稜線にたどり着く。12時15分。露岩と雑木、それと共同受信の アンテナポールがあるポイントである。 慶佐次盛一氏のレポートでは、私のいる所よりちょっと先のピークをして『若い者がここが行者山では ないかと言う・・・』と曖昧な表現で示していた。私も初めて来たときは「ここが行者山か?でも なんにも無いな・・・」と思ったものです。今回のルートではっきりしたのは、中腹の行者堂を地元では 飯見行者山と呼んでいるようです。あえてこの主稜線上にそのピークを求めるなら、祠のほぼ真上にある このピークがそうと言えるでしょう。
ここでとりあえず昼食にする。ようやくスタートといえるのに、この状態では最後まで 行けるのだろうか?ちょっと不安である。一息ついたところでさっそく歩き始める。 のんびりしているヒマはない。 尾根の上にははっきりとした道がある。ちょっと傾斜の急な斜面を上るとあとは ゆるやかになって脈拍も落ち着いてくる。共同受信のTVアンテナを過ぎ、いよいよ 雑木の極楽ルートに突入する。途中に標石がある。ナンバーは四八六とあり、 標石の頭には矢印が北向けに彫られている。その方向は前回下山に使ったルートである。 尾根はだんだんと広くなり、やがて雑木の林となる。天からは緑の光が降り注いでくる、 至福の時が流れる。
「いいねえ・・・」とM氏。私もM氏もこういう雰囲気の場所が大好きだ。 「秋にも来ないとあかんな」同じ山にはあまり行かないM氏もめずらしくそう言う。 広い尾根になってしまったが、左植林、右雑木の植生境界を歩いていけば 迷うことはない。私はちょっと左足を引きずり加減で登っていく。 登り切った所を左に折れて十数mで大甲山(おおごうさん)頂上である。13時35分。 標高1035.3m、三等三角点。ここでコーヒーブレイク。疲れた身体にカフェインがありがたい。 その前に展望を楽しむ。南から西方向へ大きく開けている。一番特徴的なのはなんと言っても 黒尾山である。頂上の電波塔跡も見えている。西方向の日名倉山から船越山への 緩やかな傾斜も美しい。 |
大甲山からの展望 |
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紅どうだんの咲く大甲山を後にして次なるピークの荒尾山へ行く。ほとんど水平の尾根道で
しかも今まで通りのブナを含む雑木を楽しめる。尾根中程にある大岩を越え、結構急な斜面をよじ登って尾根
の分岐に出る。それを左に進む。もし、ピストンで大甲山に戻るならこの周囲をよく見て
目印になるようなものを確認していないと下りで必ず迷う。三角おにぎりのような岩が
あるのでそれがよい目印になる。
四五五の標石があるピークが荒尾山(標高1089m、三角点は無い)である。ここからは 最終ピークである植松山が真っ正面に大きくあり、とそれへの縦走路も一部確認できる。 大甲山からわずか20分ほどの距離なのでぜひよって欲しいピークだ。 地形図で見るとここから125mほど標高下の鞍部まで一気の下りとなる。 その途中に東から北にかけての展望ポイントがある。蝿が多く飛んでいるのがうるさいが 氷ノ山から奥宍粟、朝来の山々が楽しめるところだ。 |
荒尾山ピーク下にある展望ポイント |
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下りきった鞍部には南の荒尾集落へ向かって下る道があった。荒尾はたたら製鉄で
有名な所。たたらの神様である金屋子神降臨の地でもある。その鞍部からは下った
標高以上の登り返しがある。誰も歩く人がいないので多少ブッシュになっているが
迂回したり、そのままつっこんだりして通過する。木の幹に小さな穴が空いていて
中から雛の鳴く声が聞こえている。覗いてみたが穴が途中で曲がっているのか雛は見えなかった。
いつまでも覗いていると親鳥が怖がって戻れないので先を急ぐ。
荒尾山からは波賀町と千種町の境界尾根となっている。標石もあるので迷いはない。 15時20分、ヒルガタワ(標高1171m付近)に到着。タワというからには鞍部のはず なのだが、多田繁次氏の著書にはここがそうだという。展望はまずまず(三室山、竹呂山等も見える)だが この先がもっとすごい。
なるいピークを越えるとそこには笹原が広がっていた。一番奥には植松山とその手前に前峰がある。 ここから植松山までは広い笹原の草原状を歩くのだろうか。 近年笹枯れの山を多く見てきたがここもそのような感じがする。その分歩くにはずいぶんと楽である。 少し行くと池のようなものが見える。こんな所に池があるなんて・・・・。走り寄ってみると 水はほとんど涸れかけている。その少ない水にはおたまじゃくしがあふれんばかりにうごめいていた。 振り返ると笹原の向こうに荒尾山と荒尾の谷が見える。これもまた心に残る景色だ。 すぐ近くのどこからか獣のうめき声のようなものが聞こえた。熊か?!怖くなって二人で 大声を上げる。するとすごいこだまが返ってきた。谷と山腹に反響しているようだ。 面白くなって次々に声を発する。ここでオカリナ吹きたい!! 15時40分。あのむこうにある植松山にはどれぐらいかかるのだろう?ちょっと弱気になるが M氏はいつもの強気一辺倒。膝痛の私をほっといてどんどん先に行く。気が付けば いつのまにか波賀・千種の境界を外れていた。笹原は歩きづらいので植林に逃げると良い道があった。 その踏み跡は植松山の頂上付近にある登山道と合流している。山上池の看板があったので寄ってみる。 が、ただの水たまりでがっかり。ヒルガタワの山上湖のほうがよっぽどすごいぞ。 そのヒルガタワ山上湖からわずか20分で植松山に着いてしまった。 |
植松山からの大展望 |
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植松山にはジャスト16時。標高1191.1m、三等三角点。ここは兵庫50山。さすがに
いままでの集大成といえるような大展望だ。大甲山は荒尾山の横からちょこんと頭だけ
出している。もちろんそれ以降の縦走路もばっちりである。
後は下山のみ。多くの標識に導かれながら下山していく。谷に降り立ち川で顔を洗う。 ここからは延々谷道を辿ることになる。谷川の水は徐々に多くなり、それは滝になる。 小さな滝があったので写真を撮る。しかし下流にはもっと大きな滝があった。 『小河内の滝』と看板があり、少し谷に入り込んだところにある。 こいつもなかなか見応えのある滝だった。
痛い足を引きずりながら下山を続ける。こんなに距離があったか?と思うほど 長い下りだった。車に着いたのは17時20分だった。MTBをデポさせてもらった 民家に急ぐ。我々が遅いのでみなさん心配してくれていた。大柿さんのお兄さんもいらして 話をする。山も楽しいが、人とのふれあいもそれ以上にうれしい。 おすすめはなんと言っても大甲山手前から荒尾山にかけての雑木の尾根歩き。うってかわって 後半のヒルガタワから植松山への笹原は大展望が楽しめます。一旦主稜線に登ると 比較的迷いにくいルートですが、出来れば山慣れた方との同伴をおすすめします。 今回の大甲山〜植松山の地図はこちら(約150k) でごらんください。 前回の大甲山の記録は 大甲山(1999年9月18日)をごらんください。 |