大杉山〜須留が峰

はじめに:このレポートは国土地理院発行、2万5千分の1
『大屋市場』を参照いただくようお願いいたします。

'99. 9.25.  土曜日  晴れ  気温頂上は涼しい
『ふるさと兵庫の50山』にも選定されたこの山にはルートが3つあります。東側の餅耕地コース、 西側の田淵コースと宮本コース。今回はMTBでの登山なので登りはともかく下りで確実に乗れる であろう宮本からのコースを選択する。お連れはいつものM氏。ところがさっそくのアクシデントに 見舞われる。宮本の集落奥からの林道を進んでいると目の前の道が崖崩れでふさがれている。 そりゃそうや。昨日はえらい台風やったもん。手前に車をデポしてMTB担いで乗り越えようと試みる。 ちょうどそのとき二人の男女が車で現れ、準備中の私たちの前を通り過ぎ、男の人はそのまま崖崩れを 乗り越え女の人はその場に立ちすくんでいた。

話を聞いてみると、この林道の奥には大屋町と養父町との境界に当たるカカナベ峠がある。 その峠のちょっと手前に岩井という集落があったそうな。過去形なのは今はすでに廃村になっていて 地形図にもその集落の名前が削除されているからである。そこの出身の人たち数名が以前の集落跡に新たに 別荘を建てかけている最中でおとといからそこに泊まっている。車はそこまで行くことが出来ないので ちょうどこの崖崩れの先に止めているはずだと言うのです。この人達もこの崖崩れは今知ったばかりなので あわてて知らせに行っているという次第です。

MTBを担いで崩れやすい石に注意しながら乗り越えると乗用車はありました。この土砂の撤去が終わらない 限りここからは抜け出されないが、ちょっとのずれで土砂に飲み込まれなかったのは不幸中の幸いと言うべき でしょうか。この時点で時計は10時20分でした。ちょっと遅くなってしまったが気を取り直してスタートです。 すぐに橋があり【ふどう橋】となっている。左には地形図にない新しい林道の工事中。右は正規ルートだが路肩が 崩れているのでそれの拡幅工事中。そのため前述の乗用車はこれ以上登れなかったようだ。

工事現場をすり抜けて地形図上の分岐に着く。左が岩井の廃村を経てカカナベ峠。右が須留が峰への林道だ。 この谷は正式には倉谷と呼ばれているので立てかけてある標識にも【倉谷口 大杉山4.7k 須留が峰5.7k】と なっている。ダートではあるがも広く路面も比較的良いので車も充分登れそう。路面がよかったのはこの倉谷の 上流に向けて5〜6基の砂防ダムが付けられているためその作業道であったためらしい。したがって最上部のダム (標高400mぐらい?)まではこの路面が続くのだがいかんせん左の山の斜面が今にも崩れそうになっているので お奨めはできない。
林道の崖崩れ ダムの終点からは沢道
まさか崖崩れがあろうとは・・・
果敢に乗り越えていく
最終の砂防ダムからはこんな道
昨日の台風で増水してるもんね
最上部のダムからはもう道とは言えない。沢になっていて右に左に飛び越えていかないと前に進めないのだが、昨日からの 増水でMTB担いで行くにはちょっとつらい。流れの中に足場になるような岩を見つけて滑らないように越えていく。 お互いのMTBを投げ渡しながら4、5回ほど沢を越える。一人でやって来てたらお手上げだったと思う。 谷のどん突きは【クソブ谷】と呼ばれ正面には滝もある。ここまで1時間近くかかってしまった。ここから道は谷を離れ 右の斜面をジグザグに登っていくようになる。途中にすさまじ崩壊場所が一個所あって杉の倒木が幾本も遮っているが、 登るに連れて道らしくなってくるので歩きよくなる。

ふとM氏が立ち止まって足に手をやるので見てみるとヒルがびっしりと(ちょっと大げさか?)張り付いている。 あわてて自分の足も見てみると負けないぐらいの数。二人とも悲鳴を上げながら後先考えず引き離す。引き離された 後はみるみる血の玉が浮いてくる。ヒルに襲われるのははじめての経験だが、話に聞くとおり吸われているときは 何の痛みもなく引き離した後はなかなか血が止まらない。気になって靴も脱いでみたがやはり両方の足に数匹ずつ 潜り込んでいた。そもそもこんないかにも出そうな所を両足丸出しでMTBを押していたらヒルにとってはいいごちそうだ。

道は出来た当初は車もぎりぎり走れたかもしれないような幅だったろうが、今ではちょうどいいようなシングルトラックほどの 幅まで狭まっている。木に覆われているため日差しに照らされることもないかわり展望もよくない。それでもすぐ北にある 御祓山の頂上が木の間から望めそれも進むにつれて徐々に低くなっていくのがわかる。林道終点までは【クソブ谷】から さらに1時間ほどかかった。ここからは稜線沿いに一気に大杉山に担ぎ上げる。とはいうもののすさまじい傾斜に二人とも ダウン寸前になる。地形図ではそれほどの距離とも傾斜とも感じないのだが一歩一歩がとてつもなく苦しい。 30分あえいで大杉山の頂上に着いた。(標高1048m 三角点無し)餅耕地からのルートも頂上で合流している。

着いてみて驚いた。眺望がすこぶる良い。最近伐採したのであろうか?見た感じそうとも思えないので古くからこの状態で 在ったのか?ガイド本にはこれほどの眺望とはどこにも書いていない。雑木が数本立っていて地面は苔が広く敷き詰められてある。 全方向に開けているが特に北方面は秀逸である。目の前の但馬妙見山、(その奥はちょっとガスっている)そこから西に鉢伏山から 氷ノ山の大きな山塊。(これも頂上はガスっていた)さらに西には手前から藤無山、三久安山、その奥に三室山。後山らしき山も見える。 一番手前には水芭蕉で有名な加保坂から杉が沢高原に続く低い山稜がある。杉が沢高原と言えば天滝がその下に在ったなあと視線を 落として驚いた。なんと天滝の瀑布が肉眼で確認できた。あわてて双眼鏡で覗く。水量が多いのも好条件だったろうがまさか見える とは思わなかった。でもあの高原のどこにこれだけの水量が潜んでいるのかと思ってしまう。
大杉山頂上 須留が峰頂上
眺望バツグンの大杉山木に覆われた須留が峰
南から東にかけては暁晴山、段が峰からフトウガ峰、千が峰、篠が峰、三国岳、朝来山と粟鹿山。三尾山も見えるか? 北東方面は勉強不足でよくわからず。さらに絞り込めばもっと同定できるだろうが時間が足りない。食事をしてコーヒーを飲んで 荷物をまとめて稜線沿いに1kほど南西にある須留が峰に向かう。この稜線コースはすばらしく気持ちよく乗れる。小さなピークを 3つほど越えて須留が峰に。ガイド本では40分となっていたがさすがMTBでは20分であった。(標高1053.5m 二等三角点) 頂上から振り返るといつの間にか大杉山にはガスに覆われている。あまりに大杉山が良かったのでここは見劣りする。どうして ここが50山に選ばれたのか不思議なくらい。登頂を記帳するノートがあるがめくってみるといきなり3年前の自分の記帳部分が 現れた。そこから現在のところまでめくってみたがそれほどの記帳はないようだ。

ここから一気に大杉山までとって返す。登り返しで気が付いたが頂上直下に山の名前の由来であろう巨大な杉があった。 転げ落ちるように林道終点まで降り立った時点で14時55分。ここからは待望のダウンヒルだ。途中で写真の写しあいをしたりしたが 1時間かかった登りをわずか18分で【クソブ谷】まで戻ってくる。これがあるからMTBは手放せない。担いだ苦労が報われる一瞬だ。 しかし気を抜くと危ない。途中でM氏は転倒してMTBが途中で引っかかったものの危うく崖下に転落するところであった。 谷道では川に転げないように慎重に沢を下り、ダムの最上部着で15時35分。ここで顔、足、腕を洗う。さらに下の分岐まで下って 時間があるのでカカナベ峠に行ってみることに。
稜線を行く スイッチバックの林道
大杉山から須留が峰の
稜線はいい道ですよ
スイッチバックの林道を下る
ヒル避けにウインドブレーカーを着る
登りはじめてすぐに右下の沢から煙が立ち上っているのが見える。話に聞いた岩井の廃村跡のようだ。本当はこの道路である地点も 村の家屋があったようなのだが7mほどの盛り土をして村の半分以上を埋めてしまっている。沢沿いにはわずかの石段とお社の跡が 残っていて、建ちかけのログハウスとバラック小屋がある。出発前に話をしたおばちゃんもすでにここにいてコーヒーとバナナを 頂きながらいろんな話を伺う。この集落の歴史は古く、武田信玄のゆかりの落ち武者が開拓したという。確かに伺った名字も変わった 名字でかっての土蔵には刀とか槍とかの武器も在ったいう。しかも極めつけは埋蔵金の言い伝えもあって今は埋まっているこの道路の 下のさらに下には黄金千枚があるそうです。自分らの子どもの頃は学校までを自転車で登り下っていたのでマラソンでは常に首位 だったとか。うなづける話です。崖崩れの件は警察に連絡済みのようでした。

礼を言って別れカカナベ峠を目指す。旧道は一つ南の谷を登っていたのですが墓場を崩さないといけなかったため現在のコースに なったようです。新道は峠直前で行き止まり、付近を探して旧道の取り付きらしきところも確認。行き止まりから鞍部によじ登る。 話には聞いていたのに峠には在るはずの地蔵様は無かった。ただ、養父町側からも林道工事が進んでいるようで重機の音がここまで 届いている。やがてこの道と繋がると、他の峠道もそうであったように姿を消してゆくのでしょう。スタート地点の崖崩れ場所には すでに業者に人が調査に来ていました。今日も話題盛りだくさんの山遊びでしたね。

それじゃあみなさんも「山であそぼっ」(^o^)/~~~


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